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36:天族の楽園跡

 ホウライ王国を発って二日後、私達は壊れたビルのような大きな建物が、多く立ち並ぶ、廃墟のような場所を上空より確認した。



「嬢ちゃん。おそらくあの遺跡だ」



 クマさんの指し示すあの遺跡とは、おそらくだが、かつて栄華を誇り、滅び去った、天族の楽園の跡なのだろう。


 さっそくジャイロさん1号を着陸させて、その遺跡の調査を試みる。

 そして調査の末に、神殿跡と思われる場所で、巨大な慰霊碑を発見した。



「これは漢字? もしかして中国語??」



 なぜこんな場所で、しかも異世界で、漢字で文字の書かれた慰霊碑があるのだろう?



「カンジ? チュウゴクゴ? この文字はそのどれとも違うぜ。これはカン語とよばれる古代の文字だ」



 クマさんによると、その慰霊碑に書き記された文字は、カン語とよばれる文字で、この辺りの天族が、好んで使ったとされる文字なのだそうだ。

 しかしそれは、どう見ても前世で見た、あの中国語のように思えた。



「クマさんもしかしてこの文字が読めるんですか!? クマさん慰霊碑の内容は!? 」


「あ~・・どれどれ・・・これは300年前・・・天族が例の楽園が滅んだ後に書き記したもののようだな?」



 それは天族の楽園がいかにして創られ、滅び去ったのか、書き記してあるものだった。

 その天族の国を創ったのは、一体のドラゴンだったという。


 その名も『神龍アトゥム』・・・それは私が天人サカモトから神気を吸い上げ、なり果てた、あの巨大な黄金のドラゴンの名前だったのだ。





 神龍アトゥムには、神気を魔物に分け与える能力があった。

 彼は次々と神気を魔物に分け与え、気の置けない仲間を増やしていったのだ。

 それは私達が天族とよぶ驚異的存在の、増産能力でもあった。


 しかし彼の生んだ天族は温厚で、人に対しても友好的であったという。

 それは彼がそのとき、慈愛に満ちた存在だったからであろう。


 そして数百年の栄華を誇った天族の楽園が、ついに滅びを迎えるときがやってきた。


 神龍アトゥムはとくに子供を好み、身の世話を天族の子供達にさせていたようだ。

 もちろん国の創造者である彼の世話役となれた子供の一族は、周囲からも優遇される立場となった。

 だがそれが仇となった。


 あくる日神龍アトゥムが神殿に戻ると、愛する子供達が何者かに殺害されていたのだ。


 

「いったい何者がこのような惨い行いを・・・!!」



 神龍アトゥムは泣いた。

 それこそ地が裂けんほどの咆哮で泣いた。


 神龍アトゥムが子供達の手を見ると、全員何らかの武器を握っているのが見えた。

 そして彼には分ってしまったのだ。


 彼らが何者かにそそのかされて、殺し合いをした結果、その惨劇が起きてしまったということが・・・。


 神龍アトゥムの慈愛の感情は、そのとき初めて、憎悪という感情に暗転したのだ。


 そして彼自身、己のもつ膨大な魔力に飲み込まれ、三日三晩暴れた後に、天族の楽園は見る影もなく滅び去ったのだ。

 こうして神龍アトゥムは英雄と聖獣によって、悪龍として、その地に葬り去られたのであった。



「後味の悪い話ですね・・・」


「聖獣・・・これはオイラにない、オイラの経験した記憶かもしれないな・・・」



 クマさんは同じ聖獣に、記憶をそれぞれ預けていて、未だ封印された記憶があるのだ。

 その中に、神龍アトゥムを討伐した、記憶があるのかもしれない。





「がはははは!! 久しいな巨剣を持つ童よ!!」



 そのとき聞き覚えのある声が、どこからか聞こえて来た。



「天人サカモト!!」



 そう・・・私達の目の前に、再びあの強敵だった、天人サカモトが姿を現したのだ。



「やはりいやがったか、天族が!! それにしても他の奴らはどこにいるんだ?」



 クマさんが他の天族の気配を探るために、魔力感知をさらに巡らせる。

 そこには天人サカモトがいるだけで、他の天族の姿はどこにも見えなかったのだ。



「ちっ! 遠くにいやがるのか!? 気配が掴めねえ!」


「がはははは!! 安心せよ! 他の奴らは周囲にはおらんぜよ!」



 なんとこの天人サカモトは、単独でこちらに出向いたらしい。

 そしてよく見るとどうやったか、あのとき私の光線を受けて失った腕は、再生してもとに戻っていたのだ。



「ご指名は私でしょうか?」



 私は収納魔法で、ミスリルの大太刀の、その巨大な柄だけを出して握り込んだ。そして奴の前に出る。


 だが天人サカモトは強敵だ。とくに私とは相性が悪すぎる。

 力任せの私の攻撃は、何をしても柳のようにいなされるのだ。

 今も勝てるか正直不安である。

 

 

「リンネ様。ここは儂に任せてはくれまいか?」



 そのとき私の前に出て来たのは、なんとショウヘイ爺ちゃんだった。



「よせショウヘイ! お前じゃあ相手にならねえ!」



 クマさんが声を荒らげてそのショウヘイ爺ちゃんを止めようとする。

 しかしショウヘイ爺ちゃんは引く気はないようだ。



「リンネ様・・・今一度あの闘魂紅葉を・・・あの闘魂紅葉を2倍でお願いいたす!!」



 そしてショウヘイ爺ちゃんは、闘魂紅葉2倍を要求してきた。


 他力本願かよ・・・。


 


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます!!

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