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22:幼女とパン作り

今回はパンを作ります。

「リンネちゃん、もっと温度を下げないとパンが焦げちゃう。もっと空気を絞って・・・」


「そうなの? あ! 本当だ黒くなってきちゃった!」



 現在私は、孤児たちを巻き込んで、朝から食パンの試作に取り組んでいる。

 ついに念願の酵母菌が完成したのだ。


 今朝ふわふわパンを作ろうと、孤児たちに声をかけたところ、3名が名乗りを上げたのだ。


 そしてパン作りは、難航していた。


 普段は魔法を使って温度も調整できるけど、魔法を使えない人にも作れる食パンを目指しているので、温度の調整も薪オーブンだよりだ。

 薪オーブンは空気の量を多くしたり、絞ったりすることで、温度の調整をするのだが、これがけっこう難しい。


 火を入れるのにも1時間近くかかった。


 ちなみにこの薪オーブン、私が土魔法で造っているので、薪オーブンの構造も知識のある孤児に指摘を受けながら微妙に修正している。

 そんな重要な時に相棒のクマさんは、別行動とか言ってどっかに消えているがね。


 薪オーブンに詳しいのは、11歳の女の子、シェリーちゃん。

 孤児になる前は、よく家で料理を手伝っていたそうで、あの黒パンも作ったことがある経験者だ。


 そしてシェリーちゃんにいつもべったりな女の子、10歳のコーリーちゃんも一緒にパンをこねたりしてくれている。


 そして将来商売をしたい、やる気満々の11歳の男の子ビリーくん。

 私と同様、ただいまパンを焦がし中だ。



「あ~、駄目だ。こっちも焦げてきた」


「とりあえずその二つのパンをオーブンから出して、中身を確認してみましょう」



 オーブンから焼いたパンを出して、ナイフで切って中の焼き上がりを確認してみる。



 サク!


「こっちは表面は真っ黒だけど、中まで火が通っているみたい」


 サク!


「あ~! こっちは表面が焦げている上に、中まで火が通っていない」


「とりあえずこの中身が上手く焼けているけど表面が焦げたやつ、黒い部分を切り取ってみましょう」



 私が包丁で焦げパンの黒い部分を切り取ると、パンは真っ白なふわふわパンに姿を変えた。



「わ~すごい! 真っ白なパンだ!!」


「食べた~い!!」



 コーリーちゃんがその白いパンの仕上がりに大興奮する。

 食べたいと叫んだのは、作業を傍観中の小さな子だ。



「ちぇ~! 俺のはまだまだだあ~!」



 再びパンをこね始めるビリーくん。

 パンは3人で作っているので誰のということはないが、彼は自分の決めたパンに拘りがあるらしい。


 とりあえず試作第3号である、その真っ白なパンを食べてみる。

 ちなみに1号と2号は黒炭と化した。

 白いパンに包丁を入れて、一枚切り取る。

 さらに4つ切にしてその中の一枚をいただく。



「美味しい・・・」



 卵は高級すぎて入れられない。

 バターはない。

 でもそのパンは、その時すごく美味しく感じた。



「あ! ずりー! 俺にもよこせよ!」


「ワタシも食べる!!」


「ウチも!!!」



 そして周囲の孤児たちも、次々とパンに手をつける。



「うめ~~!! 俺絶対これ作る!!」


「ワタシもだよ~!!」



 焦げた失敗作は作ろうとしなくていいよ。

 でも周囲は焦げたパンだけど、彼らにはこれでも成功なのかもしれないね。

 なぜなら彼らにとって初めてのふわふわパンは、ここに出来ているのだから。



「これはいったい何の騒ぎですか!? リンネさん!!」



 そしてそこに孤児院長が乱入してきた。


 騒ぎと聞いて周囲を見渡してみると、いつの間にか孤児院の子供全員が作業場に集まり、パン作りを傍観していたのだ。

 孤児院長は仁王立ちになり、私を怖い顔で睨んでいる。

 

 うん。騒ぎになっているね。でもなぜ私だけ怒られる?



「先生~!! これ食べてみて!!」


「リンネちゃんのふわふわパン! すごく美味しいんだよ!」



 孤児院長にふわふわパンを進める、シェリーちゃんとコーリーちゃん。



「は~・・・。貴女はなぜこんなところでパンを焼いているのですか? しかもこんなところにオーブンを勝手に2つも設置して。いったいこんなオーブンをどこから・・・?」



 孤児院長は疲れたような顔で、2つのオーブンを見比べた。



 そのオーブンを造ったのは私だ!

 なぜパンを焼いてるかって? 食べたいからだ!


 という本音は口には出さない。

 なぜなら話がややこしくなるから。 


 

「美味しい! なに!? この柔らかさ!」



 パンを口にしたのは孤児院長の助手ことシスターのお姉さんだった。

 いつの間にか、小さな子が進めるままに食べていたのだ。

 他にも勝手に食べてる子いるね。まあいいけど。



「先生このオーブンは捨てないで! きっと美味しいパンを焼くから!」


「先生お願いだ! 俺もこのオーブンでパンを焼きたい!」



 ビリーくんとシェリーちゃんの懇願に、孤児院長は困ったような顔をする。



「いちおう聞きますが、このオーブンはどこから持ってきたのですか?」



 確かに孤児院にオーブンはない。

 台所に(かまど)があるだけだ。

 こんなオーブンが勝手に増えたら困惑するだろう。

 


「このオーブンはリンネちゃんが造ったの。土がもこもこって出てね。オーブンになったんだよ」



 そして真実をリークするコーリーちゃん。子供は正直がいいね!



「はあ・・・。やっぱり貴女ですか・・・。

 それで、もしかして以前特産品を作るとか言っていたのがこのパンですか?」



 確か孤児院をクビになりかけた時に、そんな風なことを言った気がする。



「先生すごいんだよ~。このアップルを入れた水をね~・・・使うと~・・・パンの生地が膨らむの!」



 コーリーちゃんが孤児院長に、酵母菌の入った器を見せると、孤児院長は器の中をまじまじと見だした。



「確かにこれはアップルね。このアップルからこのパンのふわふわの素が出来るなら特産品になりうるかもしれないわね」



 そしていつの間にか切られていた、パンの一切れを口にした。



「美味しいわね・・・。確かにこんなパンは見たことも、食べたこともないわ。でもこれはどうやって売りに出すの? 孤児院から売るのなら難しいかもしれないわよ。この街は前にも言ったけど、このような高級なパンを買う余裕のある人はいないもの」


 

 このパンは確かに黒パンに比べれば、高級な部類に入るかもしれない。

 そしてこの街の住人が買うのは難しいかもしれない。


 しかしこの街にも金持ちはいるはずだし、他領に売るなら可能性もあるはず。

 そこをこれから商業ギルドで相談するつもりだ。

 またこのパンなら商業ギルドも一枚噛んで来るはずだ。


 一枚噛んで来るよね?



「商業ギルド。そこでこのパンの売り方を相談するつもりです」



 私は自信満々にそう答えた。



「ワタシもしょ~ぎょ~ギルド行く!!」


「俺もいくぞ!!」



 そして次々と賛同の声が上がる。

 そして孤児院長のため息も出る。はぁぁぁぁ~・・・。



【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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