13:ジュラ大陸
「リンネお姉ちゃん! 陸が見えてきたよ!」
現在私たちは、カカオベルトがあると思われる、ジュラ大陸の海岸上空まで到達していた。
そしてジャイロさんは、リオノーラさんが操縦中だ。
なので私は後部座席から、陸地の様子を眺めている。
リオノーラさんの操縦も、正確で無駄がない。
ただ操縦席が小さいと文句は言っているが・・・。
まあ操縦席は私とクマさんに合わせてあるからね。
「よし。あの辺りの砂浜に着陸しよう」
「了解!」
クマさんの指示に従い、リオノーラさんが、海岸の開けた砂浜にジャイロさんを向ける。
クマさんによると、この辺りには小さな獣人の集落が点在しているという。
あの砂浜には人の気配はないので、集落は生活に欠かせない水のある、もっと川べりの方にあるのかもしれない。
南の大陸だけあって、ここは気候も温かい。
太陽の光がやけに熱く感じる。
「それでは着陸を開始する!」
リオノーラさんは緊張の面持ちで、ジャイロさんを徐々に着陸させていく。
練習では何度か着陸のときに、ガタッとさせていたが、着陸を補助する風の魔道具を調整したので、今回はそんなこともないだろう。
「ははは! どうだ! 見事な着陸だったろ?」
リオノーラさんは普段強がったり、自慢したりしないんだが、緊張したり、余裕がなくなったりすると、けっこうこういう態度になる。
「はい。お疲れ様でした」
私はそんなリオノーラさんの肩を叩き、ジャイロさんから風魔法を使って、フワリと飛び降りる。
「もう! アリスならもっと上手に着陸できるのに!! 何で操縦しちゃダメなの!?」
「はいはい。アリスちゃんはもう少し大きくなってからね?」
「もうお姉ちゃんより大きいもん!!」
この会話も何度繰り返しただろうか?
アリスちゃんは事あるごとに、ジャイロさんの操縦をやりたがるんだよね。
ドドド~ン!
私は今日の宿にと、いつものようにホテルクマちゃんを、整地した場所に設置した。
「魔除けの石もまいといたぜ」
魔除けの石は魔物を寄せ付けなくする石だ。
その効果は地面に置かないと発動しないらしいが。
「嬢ちゃん。今日のご飯は何だ?」
魔除けの石をまき終わったクマさんが、ホテルクマちゃんに入り際に尋ねてくる。
「昨日狩ったビッグクロコダイルを、唐揚げにしてみようと思います」
私は厨房で、ビッグクロコダイルをさばきつつ、クマさんに答える。
ビッグクロコダイルの肉は、鶏に近い触感で、臭みがない。
そして検証の結果、唐揚げが妥当と判断したのだ。
「唐揚げか。あれは美味かったな」
「アリスも唐揚げ大好きだよ!」
アリスちゃんと、リオノーラさんも、ホテルクマちゃんに入って来た。
二人はこの辺りの魔物の分布を調査するために、周囲を探索していたのだ。
まあクマさんの魔力感知でも探れるから、ほとんど二人の訓練みたいなものなんだけどね。
「で、外の様子はどうでしたか?」
「ちょこちょこゴブリンの群れと遭遇したよ。付近に小さな集落があるみたいだから、ちょっと心配だがね?」
リオノーラさんの言う心配とは、私の住んでいた、ウエストウッド村のように、ゴブリンの襲撃を受けないかという心配だ。
ゴブリンの群れは意味もなく徘徊するのではなく、食料探しもあるが、村や集落がある場合は、その襲撃先の下見等を、数体で組んで行っている場合もあるのだ。
「集落があるなら、そこでこの先のカカオベルトや、キリンに関する情報の収集にもいいかもしれないな?」
クマさんが、そう皆に提案する。
まあ行く先に出現する魔物や、危険な場所の情報は、知っていた方がいいだろう。
情報集めに一日くらい費やしてもいいかもしれない。
「ノエルさん。タレの方はどうですか?」
「けっこういけると思うっすけどね?」
ノエルさんは、けっこう前から料理をやりたがっていたので、今日は料理に参加させてあげている。
今日はビッグクロコダイルに、合うタレが浮かんだというので、任せている。
いったいどんなタレを考えているんだろうか?
「ふむ。美味いな。ごってりしている」
「何というか。ガツンとしているというか・・・」
「美味しいよ!」
ビッグクロコダイルの唐揚げを食べた3人の感想はこんな感じだった。
それはノエルさんの作ったソースが原因なのに他ならない。
なぜならビッグクロコダイルの唐揚げ自体は、鶏の唐揚げよりも、さっぱりしているのだから。
「サク!」
私もさっそく一口口に運ぶ。
サクッと衣の香ばしい風味が口を抜けると、次にガツンとタレの旨みが来る。
なかなかに癖になる味だ。
これは前世で食べたあれを彷彿とさせる味だ。
そう・・・ラーメンだ。
前世ではよくラーメン屋に行ったものだが、ラーメンに唐揚げを付けて出す店はあるにはあった。
だがこれは私的には少し違った。
これはいくつか食べると、脂っこさを感じてくるのだ。
「ノエルさん。このタレも試してみてください」
私がノエルさんに差し出したのは、金色のタレだった。
この正解が見えていた私は、前もってこのタレを作っておいたのだ。
「ん? どれどれ・・・サク!」
そしてそのタレに唐揚げを付けて食べるノエルさん。
「ん! こ、これは・・・!! う~ん!! うちとしたことが!!」
私が出したのは、単純なレモンに塩を入れただけの、レモンダレである。
ラーメンと唐揚げはあくまで別物なので、別々に食べたい人もいるだろう。
ノエルさんのタレでは、ラーメンと唐揚げを、一緒に食べているような感覚しかないのだ。
まあこれはこれでたまにはありだが、さすがに脂っこすぎる。
それが嫌な人がいるのも事実だ。
そしてそれに本能的に気づいたのか、クマさんはレモンダレに付けた唐揚げを先に食べ、その濃厚でガツンとくるタレは、後でちょびちょびなめ始めている。
でもこのタレ自体は悪くはない。
ノエルさんにはもしかして、ラーメンを作る才能でもあるのだろうか?
試しに今度作って食べさせてみるのも、いいかもしれない。
そんなことを考えている矢先・・・・
助けて!!
「嬢ちゃん聞こえたか!?」
「はい! 私の魔力感知にも反応がありました!」
それは誰かの助けを求める気配だった。
【★クマさん重大事件です!】↓
お読みいただきありがとうございます!
ほんの少しでも・・・・
「面白い!!」
「続きが読みたい!」
「クマさん!」
と思っていただけたなら・・・
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