42:決勝戦(リンネvsリオノーラ後編)
今回はリオノーラ視点→リンネ視点でいきます。
リオノーラ視点~
「おおおっと!! これはオルブライト家に伝わる最強の魔法!! フレームトルネードだ!!」
このフレームトルネードの恐ろしいところは、何もその炎の脅威だけではない。
周囲の酸素を燃やし尽くし、対象の呼吸まで出来なくしていくのだ。
しかし僕の周囲には風魔法の結界で、新鮮な空気が維持されているし、炎が僕の周囲に影響しないように配慮もしてある。
なのにその強力な炎にも、酸欠状態にも、その幼女は屈しないというのか!?
いっこうに彼女の死亡判定が告げられない!!
リンネ視点~
「まったく間一髪だ・・・」
私はフレームトルネードの広範囲攻撃を、事前に魔力感知で感じ取り、身体強化でジャンプして、上空に逃げ延びていたのだ。
私はクマさんからもらった魔道具の一つを使い、透明なシャボンのような膜につつまれたままで、空中にふよふよと浮いていた。
ただこの魔道具、浮くための魔道具ではない。
周囲の空気を維持するための魔道具だ。
つまり炎による酸欠対策なのだ。
浮いているのはおそらく、傘を下に向けて広げて、武器強化で下からくる魔法の熱を防いで、反発しているせいではないかと推測する。
つまり浮いているのは、武器強化で強化された、この傘の力だ。
そして私は傘を徐々に閉じて、燃え盛る地面に傘で降り立つ。
すると傘を中心に、周囲の炎が鎮火して、私の周りだけがぽっかりとあいた。
これは武器強化を受けた傘の風圧を受けて、魔法の炎がかき消されたためである。
武器強化された武器には、魔法をかき消す効果があるのだ。
ただ傘は武器ではないがね。
この傘が、普通の傘とは言わないが・・・
「おおおっと!! リンネ選手、満身創痍のその体で、命からがら上空に逃げていたのか!!」
「さすがリンネ殿だ。広域魔法への対策も万全というわけだ」
「「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」」
「すごいぞ巨剣の幼女!!」「さすが巨剣の幼女!!」
私が地面に降り立つと、沈黙した状態から、いっきに歓声が上がる。
「上空に逃げ延びていたのか? しかも落下と同時に周囲の炎をかき消したのだな?」
私の落下を確認したリオノーラ選手は、睨むように私を見る。
「身体強化くらいは使えたということか・・・」
リオノーラ選手はまるで私の次の行動を予測しているかのように、レイピアを私のいる方に突き出して構えた。
まあ、彼女が予測する通り、私は次に突撃をかけるがね。身体強化を使って・・・。
ただ身体強化も体に負担はかかる。
長く維持すれば、再び私は地に倒れ伏すかもしれない。
それを踏まえた上で、私は広げた傘を前に突き出す。
タン! タン! ターン!
そしてスキップするように、リオノーラ選手に突撃する。
回転させた傘に当たった前方の炎が、まるで道を開けるように鎮火していく。
「もらった!!」
そして私の開いた傘目掛けて、リオノーラ選手が突きを繰り出す。
傘の布で作られた部分を、レイピアで私ごと貫こうという考えなのだろう。
確かに武器強化のかかったレイピアならば、たとえ私の強い武器強化がかかっていようと、布の部分は貫くかもしれない。
だが私にはもう一つの秘策があった。
仕込み刀・・・。
私の厨二心が生んだ、傘に仕込まれた遊びの部分である。
「なに!?」
ガキン!!
私は傘から仕込み刀を抜き放つと、リオノーラ選手のレイピアによる突きを跳ねのけた。
すると私の武器強化のかかった仕込み刀は大きな反発を生み、リオノーラ選手のレイピアを弾き飛ばす。
シュンシュンシュン! ストン!
そしてリオノーラ選手のレイピアは空中で回転して、燃え盛る地面に突き刺さった。
「私の勝ちですね?」
私の仕込み刀の切っ先は、リオノーラ選手の首筋直前で、止められていた。
「ここでは身代わりの魔道具で死んでも復活できるのだ。寸止めは意味がないと思うが?」
リオノーラ選手は私を見下ろし、呆れたように言った。
「だってこの方がかっこいいじゃないですか?」
そんなリオノーラ選手に、私は笑顔でそう答えた。
前世で見たどこかの薔薇の女騎士だって、勝ったら首筋にレイピアで寸止めだ。
ある意味テンプレな行為だと思う。
「僕もそれは否定しないよ。ここで往生際悪く反撃でもすれば、とてもかっこ悪いよね。だからここで降参する」
リオノーラ選手は観念したように両腕を上げて、降参を告げた。
「おおおっと!! リオノーラ選手が降参したぞ!! 勝者はなんとなんとなんと!! 満身創痍のリンネ選手だああああ!!!」
「「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」」
「やっぱ不死身か巨剣の幼女!!」
「巨剣の幼女最高だ!!!」
・・・・・
・・・
・・
ポテッ!
私は身体強化を解くと、意識がもうろうとして、前のめりに倒れ伏した。
「おっと! どうしたリンネ選手!?」
「おそらく限界がきたのだろう・・・」
ドヨドヨドヨ・・・・
そんな私に会場はどよめく。今日何回目のどよめきだろうか?
「おい! リンネ君! 大丈夫かい!?」
その私を心配そうに上から覗き込む、リオノーラ選手。
「すいませんが控室まで運んでいただけませんでしょうか? もう一人で歩くことができません」
私は地面に顔をうずめたまま、涙目でリオノーラ選手に頼み込む。
「はあ~。最後の最後にしまらないな君は?」
そんな私をお姫様だっこで抱きかかえると、リオノーラ選手は私のやって来た、南門へと向かう。
「リンネ選手!! 優勝おめでとうございます!!!」
「「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」」
歓声が会場中に響く中、私はそのままリオノーラ選手の胸の中で、眠るように意識を失った。
【★クマさん重大事件です!】↓
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