表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

215/721

25:訪ねて来た侍前編


「たのもおぉぉぉぉ!!! 何方かおられませぬか!?」



 その日私が料理研究所で、たこ焼きの研究に勤しんでいるときに、その老いた侍は、唐突にエテールのお屋敷へとやって来た。

 貴族のお屋敷にそんな訪ね方をすれば、たちまち護衛が出てきて、大騒ぎになりかねない状況である。


 

「こちらはエテール伯爵家のお屋敷です。只今主は出払っておられますので、お帰り願いたい。あと貴族のお屋敷に来られるならば、先ぶれぐらいは出しては如何ですか?」



 その老いた侍に対応しているのは、声からしてダレルさんのようだ。

 ダレルさんはエテール家の護衛で、可もなく不可もない、標準的な騎士である。



「これは申し訳ない。田舎者ですゆえ、こちらの事情が分かりかねますゆえに」



 老いた侍は、ダレルさんに一礼すると、再び口を開く。



「実はこちらに聖獣様がおられると聞きまして、一目会っておこうと思った所存であります」



 老いた侍はクマさんに用事があるようだ。

 そのクマさんは、たった今そちらに飛んで行ったので、この老いた侍を、客としてもてなす気であろう。



「おう。ショウヘイじゃねえか」


「これはご無沙汰しております聖獣様・・・」



 老いた侍の正体は、魔法闘技大会で素晴らしい殺陣を見せてくれた、ショウヘイ爺ちゃんだったようだ。



「おいぃ! ダレル! こいつぁあオイラの客だ! 中に入れるがいいな!?」


「えぇ? 聖獣様のお客様でしたか? それでは通さないわけにはいきませんね」



 ダレルさんが道を開けると、ショウヘイ爺ちゃんは、クマさんに連れられて、ずかずかとエテール家の庭に入って来る。



「こちらは?」


「畳の方が落ち着くだろ? まあ入れよ」



 クマさんはショウヘイ爺ちゃんを、料理研究所に招き入れる。



「おう嬢ちゃん。邪魔するぜ」「お邪魔いたす」



 料理研究所に入って一番に、私に目を向けたショウヘイ爺ちゃんは、片目を開けてこちらを一瞥する。



「これはショウヘイ様。よくお出でくださいました」



 私はお辞儀をして、ショウヘイ爺ちゃんに、挨拶する。



「こちらではあのような幼子に、料理を作らせておるのですかな?」


「ああ。あれはあの嬢ちゃんの趣味だから、気にしないであげてくれ」



 ショウヘイ爺ちゃんは、顎をこすりつつ、私に目を向けながら、休憩所の方に向かった。



「ほう! これは驚きました! こんな場所で、本当に畳の部屋に出会えるとは、思いませんでした!」



 料理研究所の休憩室の畳を見て、感嘆の声を上げるショウヘイ爺ちゃん。

 そこにはミニゴーレムの動作確認に余念のない、アリスちゃんがいた。



「ほう? あのカラクリの玩具は、こちらの国のものですかな?」


「いや。さっきの嬢ちゃんが気まぐれで作った玩具だ」



 ミニゴーレムは、確かに私が気まぐれで作った玩具だ。

 しかしその動作にかかわるエーアイを作ったのは、クマさんだ。



「ほう? 先ほどの童がですかな? さすが、聖獣様のお近くに侍っているだけは、あるということですかな?」



 そういって。部屋にある座布団を勝手に敷いて座る、ショウヘイ爺ちゃん。



「粗茶ですが」



 私は一度行ってみたかった台詞を言いながら、お茶を出す。

 ちなみにイーテルニル王国では「粗茶ですが」は、貴族的には失礼にあたるので、注意が必要だ。

 日本人気質なショウヘイ爺ちゃんだからこその気遣いである。



「これはかたじけない。つつ~~・・・甘!!」



 お茶に口を付けたショウヘイ爺ちゃんは、そのあまりの甘さに驚愕する。

 出したお茶は、このイーテルニル王国特産の紅茶で、ビッグハニービーの蜂蜜が入れてあるのだ。


 私は悪戯が成功したように、ニンマリする。



「つつ~~。そうか? 普通に美味いお茶だがな?」



 甘党のクマさんは、普通にその甘~いお茶をすする。



「あ~!! クマちゃんだけずるい!! アリスにもおちゃちょうだい!!」


「はいはい。アリスちゃんにも今出しますよ」



 そんな不貞腐れるアリスちゃんにも、私は甘~いお茶を淹れて差し出す。



「ところでこちらにはリンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤー殿もご在宅と聞きましたが、今はどちらに?」



 唐突に私の居場所を聞き出すショウヘイ爺ちゃん。

 甘いお茶にも慣れたらしく、お茶をすすりつつクマさんに尋ねる。



「今そこでお盆を抱えて、ニマニマ笑っている嬢ちゃんがそうだが?」


「はあ・・・・はあ!? なんと!? この童がでございますか?」



 ショウヘイ爺ちゃんは、私がドラゴンスレイヤーだということに、衝撃を受けたらしく、信じられないものを見るような目で、私を見る。



「巨剣の幼女が大会に乱入して、雷剣のディーンを倒した噂は聞きましたが、まさかこのような幼子が、本当にドラゴンスレイヤーであったなどと、思いもよりませんでした」



 ショウヘイ爺ちゃんは、実際に私の試合は目の当たりにしていないのかもしれないね。

 だから私の容姿を、知らなかったのだろう。



「実は嬢ちゃんが、ショウヘイから剣を習いたがっていてな。一つ教えてやっちゃあくれねえか?」



 確かに以前私は、剣を習うのなら、ショウヘイ爺ちゃんだと言った覚えはある。



「はあ・・・しかし儂は、一回戦で敗退した、若輩者でございますよ? あの巨剣の幼女で名高い、リンネ殿に剣をお教えするなどとても・・・」



 確かにショウヘイ爺ちゃんは、あのセンテオトル選手に理不尽な負け方をした。

 でもその技が本物であることは、間違いない。



「私からもお願いします!! ぜひ剣の指南をお願いします!!」



 私も機会があればショウヘイ爺ちゃんの剣を、習いたいとは思っていたのだ。

 このチャンスを逃す手はない。



「ふ~・・・。仕方ありませんな。ではそちらの剣の腕を、見てからということで、如何でしょうか?」


「はい! ありがとうございます」


「すまねえな。ショウヘイ」



 こうして私は、ショウヘイ爺ちゃんから、剣を習うことになったのだ。


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


 ブックマークと

 画面下の広告下【☆☆☆☆☆】から評価をお願いします!!

 【★★★★★】評価だと嬉しいです!


 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ