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12:本選1(火弾アーリン vs 炎拳オーレリア)


「リンネおねえちゃん! こっちだよ!」



 現在私たちは、本選のAブロック一試合目、火弾のアーリン対炎拳のオーレリアの試合を見るために、観客席に来ている。


 私が遅れて到着したために、すでに席についていたアリスちゃんが、手を振りながら声をかけて来た。


 なお貴族である私たちの席は、全て予約制のために、だいたい決まった席だ。

 本選は予選と違い観客も多い。

 本選は仕事を休みにしてでも、見に来る人は多いようだ。


 ちなみに魔術学園も、本日は授業が昼までのようで、Bブロックの試合には、アルフォンスくんなどの仲良し3人組も、間に合うと言っていた。


 私たちの席のすぐ横の席に、すでにエインズワーズ家の名前で札が立てかけられてあるので、そこが彼らの席なのだろう。

 そして朝はAブロック一回戦の4試合をやる予定のようだ。



「リンネおねえちゃんおかし!」


「オイラも」


「はいはい。今出しますから・・・」



 席に座るとさっそくお菓子を強請られる。

 ちなみに今日のお菓子はじゃがいもチップスだ。


 薄切りにして、揚げて塩コショウをふっただけの単純なものだ。

 あまり時間が経過するとふやけてしまうが、今朝揚げたものなので、まだ大丈夫だろう。

 飲み物は蜂蜜リンゴソーダだ。



「バリバリ! おいしいね~」


「ボリボリ!」



 周囲の目は少し気になるが、屋台で買ったものを食べている人もちらほらいるので、あまり気にしないでおく。


 本選からは国王も特別席で観戦しているようだから、こちらを窺っている可能性はあるね。

 私は周囲をきょろきょろと見回しながら、どこに特別席があるのか、今一度確認しておく。

 ここからはずいぶん後ろの方にあるね。


 何やら国王がじとっとした目でこちらを見ているが、気にしないでおこう。



「それではAブロック第一試合! 火弾アーリン選手対、炎拳オーレリア選手を開始します!!」


 

 たたき上げの実戦重視のアーリンと、有名な魔拳流で鍛えて来たオーレリアさん。

 この殴り魔同士の戦いがどうなるのか、今から楽しみだ。


 舞台を見ると審判らしき人はいない。

 前世の世界の試合では、試合直前に審判が持ち物検査をすることがあったが、持ち物検査はまた控室で行うのかな?


 そのかわりに舞台の場外の少し離れた四隅に、監視役らしきギルド職員がいる。



「なお舞台の周りには、試合直前に魔法で結界を張りますので、流れ弾などの心配はありません」



 何気に結界ってハイテクだよね。

 やっぱり見えない何かで攻撃を阻む感じなのだろうか?

 あの監視役の職員の人が何かの魔道具を持っているので、あれが結界の魔道具なのだろう。



「それでは選手の入場です!! まずは北門から・・・冒険者で・・・たたき上げの実戦派拳闘魔術師・・・火弾のアーリン選手の入場です!!!」



 開け放たれた北の門から、殴り魔アーリンが入場してくるね。

 ペネロペさんの迫真のコメントが、会場中の興奮をさらに高める。


 

「そして南門からは・・・あの有名道場・・・魔拳流師範代!! 炎拳のオーレリア・イーテ・オーバン選手の入場です!!」



 そして南門からは、オーレリアさんが入場してきた。



「では両名とも所定の開始位置に着いてください」





 アーリン視点~


 俺は火弾のアーリンの二つ名をもつ、魔術師であり、冒険者だ。

 魔法闘技大会の予選に勝ち残り、現在本選の開始直前だ。


 今目の前に対峙しているのは、魔拳流道場で師範代の、あの有名な炎拳のオーレリアだ。

 前回はその試合を見ていないが、三回戦まで勝ち残ったと聞いたから、かなりの実力者であることは確かだ。


 噂では火弾などの飛ばす魔法は使わないようだ。

 なので短縮詠唱とはいえ拳から飛ぶ、火弾を放てる俺は、リーチ的には有利と言えよう。



「それでは両選手、それぞれ所定の位置についてください!」



 司会進行のペネロピに従い、お互いの立ち位置に立つと、お互い構え、相手を見据える。



「お互い試合の決着は今から小半刻後以内に付けてください。それ以上時間がかかるようですと、判定となります。また自分の魔力を用いない魔道具は、使用禁止です。なお武器などの持ち込みは可としますが、武器が魔道具と判定された場合は、例外とします。ただ自分の魔力で生み出したものは、魔法とみなします」



 この試合の前のルール説明は、毎年恒例だ。

 覚えているから省いてもいいような気もするのだがな。



「試合開始!!」


「「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」」



 試合開始の合図とともに、大きな歓声が上がる。



「くらえ!! 二連火弾、アクセ バ アクセ バ フレム!!」


 ボボウ!!


 

 試合開始の合図とともに、俺はワンツーパンチから、立て続け、二連発の火弾を放つ。

 こいつは敵の出方を見るための牽制でもある。

 これは最近編み出した短縮連続魔法で、今のところ最大二発までが限界だ。


 二つの火弾が、こちらに走り接近せんとするオーレリアに迫る。

 やはり接近戦が得意なのか、いきなり距離を詰めて来やがった。



 バシュ!



 突撃しながら、一発目を躱したオーレリアは、どうやったのか二発目をさばき、かき消しやがった。


 

「ちっ!」


 

 思わす舌打ちが出てしまう。


 そして炎拳のオーレリアは、気づくとずいぶんと近くまで接近していた。



「おおおっとアーリン選手いきなり激しい攻撃だ!! しかしさすがはオーレリア選手難なくしのいだぞ!!」


「「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」」


「アーリン選手はなかなか面白い短縮詠唱の使い方だったが、あの魔拳流には通用しなかったようだな・・・」



 あれを対処されたのは癪だが、俺たちの攻防に会場が沸く。

 ギディオン王国最高騎士団長の、俺の短縮連続魔法に対する評価は上々のようだ。


 しかしここまで接近されては、距離の有利が揺らいでしまう。

 次の攻撃で再び距離をかせぐ。



「アクセ バ フレム!」



 俺は短縮詠唱で、一発の火弾をストレートとともに放ち、炎拳のオーレリアの足止めを図る。

 ところが奴は怯まず俺の火弾に拳を合わせ、同じくストレートを繰り出してきた。


 そのオーレリアの拳は炎をまとい、とても危険に見えた・・・。



 バシュ!! バキ!!


「ぎゃっ!!」



 気づくと火弾を放った俺の拳は、潰され、はじき返されていた。

 奴は拳で俺の火弾をかき消し、その拳はさらに、俺の拳をも打ち据えたのだ。


 オーレリアは一発のストレートの踏み込みで、数歩先の俺の距離まで瞬時に詰めかけてくる。

 そして痛みが遅れてじわじわと俺の潰れた拳に襲い掛かる。



「ぐうぅぅぅ!!」



 俺は堪らす奴から、バックステップで距離を離す。



「アーリン選手の拳が負傷した!! これは痛そうだ!! アーリン選手たまらず下がる!!」



 だが奴はその場から動かない。

 そこから強引に追い込めば、仕留められる距離なのだが・・・



「お前では逆立ちしても私には勝てない! 降参しろ!」



 炎拳のオーレリアはなんとこの俺に、降参を呼び掛けてきやがったんだ。



「おおおっとオーレリア選手!! アーリン選手に降参を促したぞ!! どうするアーリン選手!?」


「降参しろ!!」


「降参しやがれアーリン!!」



 観客席からも、そんな不甲斐ない俺に野次が飛ぶ。

 確かに俺の火弾では、どう逆立ちしてもこの炎拳のオーレリアには通用しないだろう。


 ただし俺には奥の手がある。


 一年前に屈辱を味わった、ボルッツア子爵護衛任務で遭遇した、巨剣の幼女を倒すために編み出した秘策だ。

 あのときは負けてすぐに解雇され、報酬も未だに支払われていない。


 そんなことより、なめていた相手に負けたあの事実は、俺の心に大きな衝撃を与えた。


 俺は今年の魔法闘技大会に、あの巨剣の幼女が出場することは、ほぼ確信していた。

 あの年齢であの強さだ。俺なら確実に出場する。


 そしてその雪辱を果たすために、苦労して編み出したのが、魔道具との重ね使いになるが、強力な魔法だ。



「なめられたものだぜ。そう言うならこれを見てからにしてほしいものだぜ」


「ほう? 何か隠しだねでもあるのかな?」



 俺は地面に両手をつく・・・。



「アクセス フレイア アクセス エアルア ジェネレー・・・・・」



 やや長めの詠唱を早口で唱えると、俺の目の前に赤い魔法陣が出現する。



 ズゴオォォォォォオオ!



 そして発生したのが、炎の竜巻だ。

 その炎の竜巻が、炎拳のオーレリアに迫る。



「これは驚いた!! アーリン選手の隠しだねか!? 炎の竜巻がオーレリア選手に襲い掛かる!!」


「「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」」



 俺のそんな大魔術に、観客どもが沸き立つ。


 俺の魔力をほぼ全て消費してしまうが、炎の竜巻は強力な魔法だ。

 防ぐ術などまずないだろう。

 だが炎拳のオーレリアは冷静に立ち尽くし、両腕を前に出し、弧を描くように回転させる。



「魔拳流! 封魔の陣!」


 バシュゥゥゥ~・・・



 すると炎の竜巻は、何事もなかったかのように、その場からかき消えてしまったのだ。



「ば・・・馬鹿な・・・」



 俺はその様子を、呆然と見る他なかった。



「これは驚いたぞ!! あの炎の竜巻が、オーレリア選手の技により、一瞬でかき消されたぞ!!」


「魔拳流は、やはり奥が深いな。あれを一瞬でかき消すとは、素晴らしい魔法技術だ」


「「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」」


「どうする? まだやるか?」


 

 炎拳のオーレリアが、俺に向け、構えながら尋ねる。


 魔力もなくなり、火弾も放てない。

 拳も利き手は潰れて使えないだろう。

 圧倒的な戦闘力の差で、蹴りと利き手でない右拳しか使えない俺は、すでに敗北が決定しているようなものだ。


 奇跡が起こって精々一発攻撃が当たるくらいだろう。

 しかしその攻撃で、あの炎拳のオーレリアが倒れるとも思えない。



「降参だ・・・」



 俺は悔しさで込み上げる涙を堪えながら、そう・・炎拳のオーレリアに降伏した。



「おおおっと!! ここで火弾のアーリン選手が降参しました!! これにより炎拳のオーレリア選手の勝利です!!!」


「「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」」



 そして歓声とともに、炎拳のオーレリアは拳を高く掲げた。





「クマさん今の技・・・」


「封魔の陣とかいうやつのことか? ボリボリ」


 クマさんはじゃがいもチップスを頬張りながら私に聞き返す。


 あの技はアーリンの放った、炎の竜巻をかき消した。

 おそらくレジスト系の魔法技術だろうと、私は思う。

 アリスちゃんも相当たまげたようで、今は席を立って、戦いの終わった舞台を凝視している。



「ときたまああやって、腕や足の印のみで、魔法技術を発動する奴もいるんだぜ。でも相当な数の回数をこなして、タイミングやらを掴まないと難しい技術だな。見事なものだぜ・・・あれは」



 うん。さすがは異世界だ。

 あんな格闘技と魔法を組み合わせたような、魔法技術もあるんだね。

 ある意味彼女こそ本物の殴り魔だと私は思った。


 そしてそんな強敵を見たにもかかわらず、私はドキドキと期待に胸を躍らせていた。



【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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