06:予選4(第九戦~第十三戦)
ゴォ~ン! ゴォ~ン! ゴォ~ン・・・
そしてお昼も終わり、五の鐘が鳴ると、予選も後半戦に差し掛かり、第九戦が行われる。
「それでは第九戦目、開始です!!」
第九戦目で目についたのは、筋肉もりもりで太り気味な女の選手だ。
もうそれだけで目立っている。髪は短い茶髪をまとめて、小さなおさげがちょこんとのぞいている感じだ。
そして武器は素手と盾のみという、変な装備だ。
この人は、序盤は相手を挑発して逃げ回っているだけだったが、戦いが進み、残り6人になると豹変した。
突然水魔法を無詠唱で発動し、相手の両目目掛けて浴びせかけたのだ。
この目つぶしに堪らず仰け反る相手だったが、その隙を逃さず、怪力を生かして思いっきり盾で相手の選手を場外に押し飛ばしたのだ。
ある意味泥臭いというか、喧嘩なれしたような戦い方だ。
そして最後に残ったのは、少し強めの剣士の男だ。
その一対一に、彼女はまず地面に水をまいた。
この世界の靴には滑り止めなどついていないので、ぬかるみなどではよく滑るのだ。
濡れた地面もそれなりに滑るので、注意が必要だ。
うかつに飛び込めば、水たまりに足を取られ、その隙を付かれる可能性もある。
また目つぶしの水も、警戒が必要だ。
剣士の男がなかなか警戒して飛び込んでこないと見るや否や、彼女は水魔法を無詠唱で、まるで鞭のように振るった。
バチーン! バチーン!
しなる水の鞭は、剣のみでは防御が難しく、男の剣士の腕を中心に、どんどん赤くなりミミズ腫れしていく。
しかしそれも長くは続かない。
次の水の鞭を男が剣全体を使って防御しようとしたところ、女が突然突撃を敢行。
剣士の男は防御の上から盾で押され、舞台の外へ吹き飛んでいった。
「女は剣士の防御のタイミングを計っていたんだろうな」
クマさんはその行動の理由を見抜いたように呟いた。
頭が回り、狡猾で怪力の喧嘩屋ってとこだろうか。意外に強敵かもしれないね?
「勝ち残ったドーラさん! 今のお気持ちをどうぞ!」
「気持ちもなにも、あたいが欲しいのは金だけさ。賞品は必ずいただく。大金になるからね?」
そんなにお金稼いでどうする気だろ、ドーラさんは? ここまで出来る人なら、普通に冒険者でも稼ぎは良いだろうに?
「えっと・・・。そこまでお金を稼いでどうするつもりなんですか?」
「あたしが将来贅沢して一生過ごすためさ。悪いかい?」
ああ言い切れるのは、ある意味すがすがしいね。好感は持てるかわからないが・・・ま私には関係ないけどね。
「あたいは黒パンは嫌なんだ。一生あの天使のパンで過ごしたいのさ」
私の同士がここにもいた! 打倒黒パン! 早く天使のパンが安価になることを願うよ!
そのあとすぐに第十戦目が始まった。
「それでは第十戦目、開始です!!」
第十戦目が始まると、金髪の剣士が最初に動く、軽い突きを近くにいた選手に放ったのだ。
それでは突き飛ばすこともできないし、ダウンを奪うなんて当然不可能に思えた。
ドサ!
しかし軽い突きを受けた選手は倒れた。
「おおおっと! いったい何が起こったんでしょうか!? 軽い突きで屈強そうな男が倒れたぞ!!」
この奇怪な現象に、ペネロピさんが叫ぶ。
「彼は雷剣のディーンだな。お得意の雷剣で気絶させたんだろう」
それに答えるように、軽い突きを放った選手の詳細を語る、ジェロームおじさん。
「雷剣だと!!」
その言葉は私の厨二心を強く刺激した。
「あれ? 嬢ちゃん知っていたか?」
その言葉に、何を勘違いしたのかクマさんが反応する。
「いえ。知りません。まったく!」
「すがすがしいな~。さっきのドーラみたいだ」
そのクマさんの言葉が侮辱なのか、称賛なのかはわからないが、素直に頷いておく。
「雷剣はあの木剣に、針金を巻いて、手に持っている魔道具で可能にしているな」
それってまさかスタンガンみたいなやつなのかな?
「電魔法は伝説上の魔法でな。今のところ使用できる者がほとんどおれへんねん。あの一族はあの魔道具を代々受け継ぐことでそれを可能にしているんだろうな?」
私達が会話している間にも、木剣を軽く当てる行為を続け、次々と選手を倒していく。
動きだけならあのショウヘイ爺ちゃんにも、匹敵しているかもしれない。
そしてあっという間に他の選手を全て倒しきってしまった。
「まさに雷鳴のごとき動きでしたね! 雷剣のディーンさん。今のお気持ちをどうぞ!」
「雷剣こそが最強であると、今こそ証明してくれよう」
厨二病ともとれる台詞をはいて、雷剣のディーンさんは会場を後にした。やはりこじらせているのだろうな・・・。
そして第十一戦は、開始直後のエルフの人の風魔法で、周囲の選手が全て吹き飛ばされて、舞台から落ち、一瞬で終わったのだった。
「え~と。一瞬でしたね? エドラヒルさん」
「異種族に答える言葉はない!」
エルフ至上主義だったよこのエルフ!!
そして空気の読めないエルフは、その言葉を最後に、会場を後にしたのだった。
もちろんそこに歓声や拍手などなかった。
第十二戦で目立ったのは、氷結のクレアの二つ名を持つ、水属性魔法使いだった。
青く長い髪に、白いローブを着込んだその姿は、某アニメで見たような、厨二病さながらの姿であった。
ただ安全のためかこの選手、無詠唱の水弾のみを使い、二つ名のもととなった氷魔法を見ることは出来なかった。
しかしその水弾の威力がえぐいのだ。
当たるとバチーン! と強烈な音が鳴り、当たった選手を場外に跳ね飛ばすのだ。
結果は、十二戦目は氷結のクレアの圧勝で終わった。
「それではアリスちゃん、クマさん。行ってきますので」
「おう! 嬢ちゃん! 気合の入った試合期待してるぜ!」
「リンネおねえちゃんがんばれ!」
ていうかクマさん。私が気合を入れたら、会場ごと破壊しそうなんですけど・・・。
そんなわけで第十三戦目は、残念ながら見ることが出来ない。
私が第十四戦目に出場するために、控えに向かわなくてはならないからだ。
後でクマさんに聞いた話では、第十三戦目では、風剣のコーデリアの二つ名を持つ選手の圧勝だったらしい。
この選手は剣から無詠唱で風弾を放ち、次々と他の選手を場外に落としたようだ。
【★クマさん重大事件です!】↓
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「面白い!!」
「続きが読みたい!」
「クマさん!」
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