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05:予選3(第五戦~第八戦)

「まもなく第五戦目に入ります!! 観客の方は観客席へ!!」



 風魔法での大音量とともに、ペネロピさんの第五戦目開始の合図が闘技場中に響く。

 観客の列が観客席へ帰って来ると、あっという間に観客席は埋まっていく。

 私たちは少し早めに戻っていたために、その様子を座りながら眺めていた。



「リンネおねえちゃんみて! かっこいいでしょ!」



 そんなアリスちゃんの腰には、木剣がささっていた。

 その様子はとても得意げだ。



「クマさんアリスちゃんに剣術を教えるつもりですか?」


「まあな。アリスもいつまでも、自分を弾丸にしてばかりも、いられんからな」



 自分を弾丸にとは、アリスちゃんが使っていた、例の身体強化と風魔法を使ったドロップキックのことであろう。

 あれはあれで強力な攻撃だとは思うのだが、剣も使えるに越したことはない。


 ちなみに私はクマさんに剣術を教わっていないのだが?

 そこのところも聞いてみる。



「嬢ちゃんに必要か? 必要があれば教えてもいいけんど、いらんやろ? 例のホウライのやつあるし」



 ホウライのやつとは我流剣道のことだろうか?

 まあクマさんはフェンシングだしな・・・私が教わるならショウヘイ爺ちゃんだよね。





「それでは第五戦! 開始です!!」



 どうやら話をしているうちに、第五戦が始まったようだ。

 今回は目を引く選手はいないが、選手の中に、受付のときに絡んできた、例の金髪キノコを見つけた。


 たしか名前はジャメシーだったか?

 護衛がいるところを見ると、どこかの貴族なのだろう。


 第二騎士団副団長と言っていた記憶があるが、あんなのでも入れる第二騎士団って、いったいどんなところだろ?


 ジャメシーキノコは、護衛二人に自分を守らせる感じに舞台中央に立ち、自分に近づく相手だけを、護衛の二人掛かりでボコらせて、舞台から落とす戦法のようだ。


 そして自分はその様子を見ているだけという・・・見ていてあまり気持ちのいい戦法ではないね。



「「ブー! ブー!」」



 観客席からもその様子に、ブーイングの嵐だ。

 この世界にもブーイングがあるようだ。



「え~と・・・。騎士団として、あの戦い方はないんじゃないでしょうか?」



 堪らずペネロピさんも口をはさむ。



「ああ。恥ずかしい限りだ・・・いったいなぜやつがあの場にいるのか?」



 ん? もしかしてジェロームおじさんも、与り知らないことなのか?

 ではジャメシーキノコはどうやって今回の大会にエントリーしたんだ?

 いや。エントリー自体は個人の自由なのか・・・。


 あ! 護衛がいない隙に一人、ジャメシーキノコに近づいたぞ! やっちまえ!

 だが守りに徹するジャメシーキノコ。


 その間に護衛が急いで帰って来て、再びジャメシーキノコの相手を、2人掛かりでボコって舞台の下に落とした。


 そんな作戦で辛勝したジャメシーキノコだったが、最後に護衛2人が自ら舞台から下に飛び降りて、第五戦は幕を閉じた。


 何とも後味の悪い試合だったな。



「え~と。いちおう聞きますがジャメシー様。今の気持ちをどうぞ」


「当然の勝利だよ。俺様には色々と力があるからな」



 相変わらずの下卑た笑みで答えるジャメシーキノコ。

 ちょっとイラッとくるね。



 パラパラパラ・・・


 

 言い終わるとジャメシーキノコは、観客席からの微妙な拍手とともに会場を後にした。

 あの微妙な拍手が使用人の拍手なのか、お金で雇った人の拍手なのかは知らないが・・・。



「アリスあのひときらい!」

 


 アリスちゃんも、そんな後味の悪い試合にご立腹だ。


 まあ、ああいった手合いは、勝利のためには何をするかわからないしね。

 注意は必要だね。警戒はしておこう。



「それでは第六戦も、開始します!!」



 そうこうするうちに、第六戦が始まったようだ。

 六戦で目立ったのは、引き締まった感じの、例えるならば鍛えた騎士の人といった感じの体型だろうか?


 そんな感じのラフな服を着た、茶髪の普人族の男性だ。

 魔力感知で見たところ、彼の魔力は膨大で、魔術師のようだがその戦い方は違った。


 彼はその膨大な魔力をまず身体強化の丈夫さの向上に使い、相手の攻撃を避けず、その身に受けながらも、身体強化の怪力で、強引に相手を掴み、軽く投げ飛ばして舞台の外に放り投げている。


 余裕でゆっくりな感じに歩き、次の相手に近づき、ついでとばかりにその隣で戦っていた選手も片手で掴み上げて投げ飛ばす。


 そして対象の相手ももう片方の手で掴み、投げ飛ばす。

 ちぎっては投げ、ちぎっては投げを現実にしたような戦い方だ。ちぎってはいないが。



「ははは! すごいよ! リンネおねえちゃんみたい!」



 え? 私ってあんな感じか?


 その様子にアリスちゃんは、すっかり機嫌がもどったようだ。



「これは豪快な選手が現れましたね。あの怪力と丈夫さは異常ですよ?」



 司会進行のペネロピさんも、その様子に驚きを隠せない様子だ。



「確かに彼は丈夫だが、本選では魔法による攻撃や、魔力の籠もった攻撃をする者もいる。身体強化を使っているようだが、それだけでは到底勝ち上がれないだろう」



 それに対してジェロームのおじさんは、厳しい意見のようだ。


 次々に投げ飛ばされて、舞台の下に落ちていく選手たち。

 その戦い方は豪快そのものだ。そして歩く理不尽といってもいい。


 こうして第六戦はあっという間に終わりを告げた。



 パン! パン!



 そして舞台の隅では、まるで作業終わりであるかのように両手の埃をはたく、センテオトルさんの姿があった。


 



「ずいぶんと豪快な戦い方でしたね!? センテオトルさん今のお気持ちをどうぞ?」


「そうだな・・・・今出ている屋台で一番美味い店はわかるか?」


「え~と・・・個人的には一番奥の串焼きのお店が好みですが・・・」


「そうか。礼を言う・・・・」



 そう言うとセンテオトルさんは、唖然とするペネロピさんをよそに、手を振りつつ、橋を渡って舞台を去って行った。



「あ・・・どうやらいってしまいましたね」


 パチパチパチ!!


「わあああぁぁぁぁぁあああ!!」



 そしてその彼の行為に、なぜか沸く観客の皆さん。


 だが私は彼が舞台を去り際に、こちらをチラッと見たような、そんな感じがした。


 一番奥の串焼きのお店・・・私も後で行ってみるか・・・。





 そして第七戦、第八戦は・・・再び泥臭い試合だったさ。

 現実はそんな面白い試合ばかりではないのだ。


 まあ第八戦で勝ち残ったチェスターさんって剣士は頑張っていたかな。

 でもショウヘイ爺ちゃんの後だとかなり見劣りしてしまうんだよね。

 ちなみに第七戦はトゥルソリーさんって冒険者風の人が運よく辛勝だったよ。



 ゴォ~ン! ゴォ~ン! ゴォ~ン・・・



 第八戦の後は、4の鐘が鳴り響き、楽しいお昼の時間だ。


 この世界では正確にはお昼ご飯の習慣などなく、単に間食といっているが、そのわりにお昼は2時間と休憩時間が長いのだ。次の試合は5の鐘からだ。


 そして先ほどの司会進行のペネロピさんの情報をもとに、お昼は一番奥の屋台の串焼きとやらを狙いに行く。


 するとそこには、長蛇の列が出来上がっていた。

 ですよねー。司会進行が宣伝しちゃったら、そりゃ並ぶよね・・・。



「アリスほかいく~」


「オイラもだ」



 さっそく二人脱落した。


 今ならどの屋台でも、好きなもの買い放題かもね。私は最後まで並ぶけど。

 そして気づくと私の後ろには、先ほど第六戦で勝ち残った、怪力のセンテオトルさんが列に並んでいた。


 聞いた本人が並ぶの遅えよ。


 

「貴様。ずいぶんと魔力が多いな?」


 

 センテオトルさんは私に向けて、そんな事を言ってきた。



「えっと・・・貴方に言われたくないんですが?」



 私もすかさず言い返す。



「貴様・・・シュロトルを知っているか?」



 シュロトル? なぜその名前をこの人が?

 シュロトルといえば私がエテールで倒したドラゴンの名前だ。

 まさかあの聖女の関係者か? ならあまり関わらない方がいいかもね。



「知りません。シュロトルさんなんて。幼女ですし」


 

 私はこの場を切り抜けるために、幼女ぶって誤魔化してみた。 

 するとセンテオトルさんは、私をじっと凝視しだす。


 なんなんだいったいこの人は?



「貴様の中に、わずかにその気配を感じたのだがな・・・・気のせいだったか?」



 するとセンテオトルさんは私に背を向けて、手を二度ほど振って去って行った。

 もう並ばないのかな?


 

「串焼き売り切れで~す!」



 空しく串焼き屋の店員の、販売終了のお知らせが聞こえる。

 違った。彼は串焼きがもうないのを悟って、この場を去ったんだ。

 そして私敗北の瞬間だった。


 くそおぉぉぉぉ! 悔しさのあまり、ジャック何とかさんのように、叫ぶ私だった。


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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