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12:エテールの街

ようやく街に着きました。

 現在クマさんと私は、街の入口の門の前で、列に並んでいる。

 門の前には関所があり、二人の衛兵が街へ入る人間を取り締まっているのだ。

 関所には、商人や旅人、冒険者などが並んで、衛兵の調べの順番を待っている。


 そして私たちの順番がやってくる。


 クマさんと私は、面倒ごとを避けるために、事前に話し合ったことがある。

 それはクマさんは私の従魔で、一切喋らないということだ。


 そう、クマさんは喋らない従魔を演じるのだ。ただ立っているだけともいうが・・・。


 そして今クマさんは、赤いスカーフをつけている。

 このスカーフは誰かの従魔の証であるらしい。


 小さい幼女と、二足歩行のぬいぐるみのようなクマさんが、手をつないで立っているという様子に、衛兵のおじさんの頬も緩む。



「そこのクマさんはお嬢ちゃんの従魔かな? お父さんかお母さんはいないのかな?」


「ウエストウッド村から来ました。お父さんとお母さんは、もういません」



 私の返事を聞いていたもう一人の衛兵が、私と話していた衛兵のおじさんの肩に手を置いて「例の東のゴブリンの・・」とこっそり伝えた。


 衛兵のおじさんの言う、例の東というのは、おそらくウエストウッド村のことであろう。



「はー・・・。それは大変だったねえ。

 この街に身分を証明してくれる人か、身元引き受け人はいるかな。知ってるおじさんとか、おばさんとかはいない?」


「いません・・・」


「困ったねえ。子供がこの街に入るには、銅貨が5枚いるんだ。従魔が10枚だから、従魔の分と合わせても銅貨15枚になるよ」


「この魔石で払えませんか?」



 私はゴブリンを倒して手に入れた魔石を、収納ポーチからいくつか取り出して、衛兵のおじさんに見せた。



「その小さい魔石なら3個で銅貨15枚分だよ」



 私は衛兵のおじさんに、魔石3個を渡した。



「でもこの街は嬢ちゃんのように幼い女の子が住むには、少し治安が悪いんだ。だからそういう子は孤児院にいったん入ってもらうことになっている」



 なるほど。こんな無防備な幼女が、広い街をぶらぶら歩いていたら、人攫いに遭うかもしれないな。

 本当に無防備であればだが・・・。


 本当のことを言っても信じてくれそうもないし、魔法を見せれば面倒なことになるかもしれない。

 クマさんと私はいったん孤児院に入ることにした。






「エテールの街へようこそ」



 街へ入ると衛兵のおじさんの、そんなテンプレな挨拶があった。


 衛兵のおじさんに手を引かれ見た街は、まさに中世ヨーロッパのような感じの街だった。

 石で出来た堅牢な建物、活気のある市場。憧れのその風景に、私のテンションは上がる。



「お嬢ちゃん街は初めてかい?」


「はい! 初めてです!」


「これでもまだこの街は小さい方なんだよ。王都の街はここと比べ物にならないくらい大きいんだ」



 王都か、いつか行ってみたいな。

 衛兵のおじさんの、そんな話を聞きつつ私はそう思った。





 しばらく歩くと教会のような建物が見えてきた。どうやらここが孤児院のようだ。


 衛兵のおじさんに連れられて孤児院に入ると、修道服を着たやせ細った中年の女性が出迎えてくれた。

 中年の女性は髪を団子のようにまとめており、眼鏡をかけている。

 苦労がたえないのか、小じわや白髪が多い。


 女性の後ろには、数人の子供が物陰に隠れて、こちらを窺っているのが見える。



「すまんがこの子を頼む」


「まあ、その子は?」


「例のウエストウッド村の生き残りだ」



 ウエストウッド村と聞くと、女性は気の毒そうな顔で私を見た。

 ウエストウッド村の悲劇は衛兵のおじさんも知っていたし、伝令のウエストレイク村の村人から広まったのか、すでにゴブリン襲撃事件のことは、この街で広まっているようだ。



「それじゃあな、嬢ちゃん。あとは孤児院長が面倒を見てくれるはずだ」


「お世話になりました」



 私を孤児院に案内し、去っていく衛兵のおじさんを、お辞儀をして見送った。

 そして孤児院長の女性に向き直る。すると孤児院長もこちらを向いた。



「私はこの孤児院の院長をしているドクトリーナと申します」


「リンネです。この従魔はクマさんです」


「は~・・・。従魔ですか・・・」


 

 院長はクマさんを見ると、ため息をついた。そして再び私を見ると口を開く。



「今日はこれから夕食です。貴女も来なさい」



 私が院長について歩くと、追従するように数人の子供がついてきた。



「ねえ。それあなたの従魔?」


「ワタシ従魔って初めて見た」


「ねえ。従魔なんて名前?」



 子供たちは様々な質問を投げかけてくる。10~12歳くらいだろうか? 全員私より背が高い。

 でも痩せこけていて、あまり健康状態は良くなさそうだ。



「従魔はクマさんです」


「クマサンちゃん?」


「いいえ。クマジロウなので、クマさんです」


「わーい! クマジロウで・・・・クマちゃんだ!!」


「クマちゃんはよせ・・・」



 たまらずクマさんが、ボソッともらしてしまう。



「ねえ! 今この子喋った!?」



 小声だったが聞かれていたらしい。



「従魔が喋るはずありません。さあ皆さん食堂に急いでください。夕食ですよ」



 すかさず院長のフォローが入った。ナイス院長。





 食堂に入ると子供たちは食堂に並べられた椅子に座りはじめる。

 食堂には細長いテーブルが3脚設置してあり、椅子が多数設置してある。


 子供の人数は20人くらいだろうか?

 子供たちは見た目4~12歳くらいだ。赤ん坊はいない。

 全員私を見て注目している。クマさんを見ている子もいる。

 これだけの子供が集まるとずいぶん騒がしい。



 パンパン!


「はい皆さん注目!」



 院長のこの一言で、子供たちは魔法のように静かになる。さすが孤児院長。



「この子は今日からここで皆さんと一緒に暮らしていくリンネさんです。仲良くしてあげてください」


「皆さん初めまして、ご紹介にあずかりましたリンネ、6歳です。

 この子は従魔のクマさんです。こちらでの生活のことは何も存じませんので、色々と教えて頂けるとありがたいです。よろしくお願いします」



 私が真面目な挨拶を済ますと、院長がギョッとした顔でこちらを見ていた。



「リ、リンネさんはずいぶんと教養がおありのようですね。その年でそのような挨拶は、なかなかできませんよ」



 どうやら挨拶の仕方を間違えたらしい。6歳の子供のころ、挨拶ってどんな感じでしていただろうか?




【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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