表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

134/721

37:聖獣とエルフの誓い

「失礼ですが、アポはお取りでしょうか?」



 現在私たちは、ギルド長のファロスリエさんを訪ねて、王都の冒険者ギルドまで来ている。

 ファロスリエさんを訪ねた理由は、エルフである彼女に、エルフの里への案内人を頼むためだ。

 エルフの里には案内人がいないと、入れないらしい。



「アポは取ってねえ。でも会いに来た」



 アポも取らずに、冒険者ギルドのギルド長に会おうとして、偉そうな態度をとっているのはクマさんだ。

 そして話している相手は、当然、受付担当であるギルド嬢だ。



「失礼ですが、聖獣様でいらっしゃいますよね?」


「そうだぜ」


「少々お待ちください」



 あれ? もしかしてこれ、アポも取らずに会えたりする?


 しばらく待っていると、ギルド嬢が戻って来た。



「ギルド長が会うそうです。訓練場までいらしてください」



 会えるらしい。聖獣設定最強だな。





 訓練場は、冒険者の初心者が戦い方を学んだり、冒険者同士の争いの決着をつけるために、決闘したりする場所だ。

 私たちはギルド嬢に、その訓練場に案内された。


 すると誰かが、特訓をしている様子だった。



「どうしたアルフォンス!! そんなことではあのリンネ殿に、傷一つ付けられないぞ!?」



 いたいけな幼女を傷つけるような、野蛮な特訓は止めていただきたい。


 どうやらアルフォンスくんが、ギルド長のファロスリエさんから、戦闘訓練を受けているようだ。

 すでに座り込んで肩で息をしているのは、ボビーくんだね。



「はあはあ! くそ~! まったくかすりもしない!」



 そして倒れ込むアルフォンスくん。



「今日はここまでだな」



 しかしあのファロスリエさんが、アルフォンスくんの訓練をしてあげるなんて意外だ。

 以前会ったときには、見向きもしなかったのに。



「で? クマジロウは私に何の用で来たんだ?」



 しばらくして、ファロスリエさんが、クマさんの方に向き直る。



「おめえに嬢ちゃんの案内役を頼みたい」



 クマさんが告げると、二人の間に沈黙が流れた。






「クマジロウ。それが何を意味するかは、わかっているのだろうな?」



 しばらくしてファロスリエさんが口を開く。


 何やら深刻な空気が流れているようだが、何だというのだろうか?



「ああ。おめえに頼みてえ」



 クマさんの返事を聞くと、ファロスリエさんはクマさんの目の前に歩み出て、かしずいた。

 そして祈るように目を閉じる。



「聖獣様との盟約により、エルフの代表として、命をかけてその役目を全ういたします」



 ファロスリエさんは静かに・・・そう呟いた。

 これがクマさんでなく、本当の聖獣だったら絵になったかもしれない。


 かしずき、静かに呟くファロスリエさんは、美しく神秘的に見えた。

 これがエルフの本当の姿なのかもしれない。



「其方の働きに期待する・・・」



 クマさんが聖獣らしい台詞で、ファロスリエさんに答えるかに見えたが・・・。



「ぷっ!!」



 噴き出しやがったよこいつ。

 台詞の最後で噴き出しやがったよ。神秘的なシーンが台無しだよクマさん。


 するとファロスリエさんの顔は、みるみるうちに赤くなり・・・。



「その口か! エルフの誓いを笑ったのはその口か!!」



 クマさんに飛び掛かった。



「ぷぷ~!! 似合わねえ! おめえには全く似合わねえ!」


「このクマジロウが!!」



 二人は絡み合い、じゃれ合いを始めてしまった。

 お互いの頬をひっぱり、逃げ回り、罵倒し合う。まるで子供だ。

 まあクマさんらしいと言えば、クマさんらしいな。



 むぐむぐ・・・



 そしてアリスちゃんと、アンパンを食べつつ二人を見守る。



「お! アンパンか! 僕にもくれ!」


「何だそれ? 美味いのか?」



 アルフォンスくんとボビーくんにも、アンパンをお裾分けする。



「美味っ! 何だこれ!?」



 ボビーくんは、アンパンは初めてだったね。

 まあお気に召したのなら良かった。



「なあ? あれ止めなくてもいいのか?」


 

 それは遠回しに、私に止めろと促しているのだろうか?

 面倒だから嫌なのだが。



「その栄誉はアルフォンス坊ちゃまに差し上げますわ」


「また坊ちゃま呼びかよ・・・てかお前、いつもそれふざけて言ってるだろ?」



 私のおふざけに気づくとは・・・子供の成長は早いものだ。



「オイラにもアンパンくれ」



 ようやく決着がつきましたか・・・。



「はあはあ! あれだけやって息も切らせぬとは! む!!」



 クマさんはアンパンを受け取ると、ファロスリエさんの口に突っ込む。

 そして自分のも受け取ると、食べ始めた。



「ん? 何だこれ? 天使のパン・・? いや、違うな・・・?」



 ファロスリエさんは、天使のパンを食べたことがあるんだね。



「もぐもぐ。甘い・・! 豆の風味・・・これはエルフの好みに、とても合う食べ物かもしれないな!」


 にこやかな表情で、アンパンを食べ始めるファロスリエさん。


 エルフは豆が好きなのかな?

 テンプレでよくエルフは肉を食べず、豆や野菜を好むとあるが、この世界のエルフもそうなのだろうか?


 それをファロスリエさんに確認を取ると・・・。



「何を言っているんだ? エルフも肉くらいは食うぞ。豆や野菜を好む者は多いがな」



 違った。



 ファロスリエさんの話によると、エルフは狩りをし、狩った獲物の肉を食べたりするそうだ。

 もちろん森の野草や、野菜を栽培して食べたりもするそうだが、豆や芋が特に人気が高いそうだ。


 まあよく考えたら、テンプレなエルフが肉を食べないのに、弓矢を持って狩りをしているのもおかしな話だ。






「ごくごくごく! 甘い!! ご馳走になった」



 豪快に、冷たい蜂蜜リンゴジュースを飲みほしたファロスリエさんが、空になったコップを私に返しながら言う。



「案内については10日ほど待ってくれ。ギルド長業務の引き継ぎや、こいつの特訓相手の後任を探さねばならないからな」



 と言いつつアルフォンスくんの頭を、ポンポン叩くファロスリエさん。


 意外に面倒見が、良いのかもしれない。

 その様子を見るに、ボビーくんはついでなのだろう。


 そして私たちの出発は、10日後に決まった。




【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


 ブックマークと

 画面下の広告下【☆☆☆☆☆】から評価をお願いします!!

 【★★★★★】評価だと嬉しいです!


 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ