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07:人攫いのアジトに潜入せよ!

 第三人称視点~


 未明のまだ空が白むころ衛兵たちは、通報のあった人攫(ひとさらい)いのアジトへ向かっていた。

 今回は寝ている奴らを一網打尽にする作戦のため、衛兵たちは皆、全員軽装であった。



「信頼できる筋の情報らしい。今回は大捕物になるぞ。お前ら気合を入れろ!!」



 この隊長は上手くやれば、今回は出世間違いなしであった。

 それだけに気合も十分であった。


 そんな中あの幼女は、闇の中からゆっくりと姿を現した。

 それは3メートルもの巨剣を肩にかついだ、浮遊して移動する異形の幼女であった。



「貴方たちがこれから、人攫いのアジトへ押し込む、衛兵の皆様でよろしかったでしょうか?」


 

 その幼女は、まるでこの世の者とは思えぬような声色で、衛兵たちに尋ねる。



「き、君はいったい誰かね? その容姿からただ者ではないと思うが?」



 その幼女の質問には、隊長が答えた。

 だがその圧倒的な気配に、恐怖で声が震えていた。



「わたくしエインズワース侯爵家から、依頼されて参りましたリンネ・イーテ・ドラゴンスレイヤーと申します」



 その幼女が言うには、彼女は侯爵家から派遣された超大物の魔術師、ドラゴンスレイヤーであるようだ。

 本来であれば幼い少女が、噂のドラゴンスレイヤーであるなど、信じられない話だろう。

 だが浮遊し、圧倒的な気配を放ち、信じられないような巨剣をかつぐその様子から、誰もが彼女がドラゴンスレイヤーであると、信じずにはいられなかったのである。



「その・・・ドラゴンスレイヤー様が、我々に協力していただけるということですか?」


「はい。あちらの戦力に、魔術師が2名いるようでして、わたくしが、その魔術師の相手をいたしましょう」


「それは心強いことです。エインズワース侯爵閣下にも、感謝いたします」





 リンネ視点~


 私はなんとか衛兵の押し込みに、加わる許可をもらうことができた。


 どうやら私の声は、幼くて威厳がないようなのだ。

 なのでクマさんに教えてもらった、声を変える風魔法で声を変え、威厳を出した甲斐はあったのかもしれない。


 ちなみにその風魔法、声が例の「我々は宇宙人だ」を扇風機に向けて言ったときのような声になる魔法だ。

 ぶっちゃけネタスキルである。

 帰ったらこの魔法でアリスちゃんと遊ぼう。



「あ、ドラゴンスレイヤー様。悪いですがその3メートルの剣はちょっと目立つので、しまっていただけるとありがたいです。今回はその・・・奴らに見つかるわけにはいきませんので・・・」



 つまり隠密任務ということか? なら土剣は目立つかもしれない。


 いきなり衛兵のおじさんから、駄目出しを受けた私は、威厳のアクセサリーである土剣を、しぶしぶ、しまわざるを得なかった。





 そして憎っくき人攫いどもの、アジトの前の茂みに潜む。



「通報どおり、人攫いのアジトのようだな?」


 

 衛兵の隊長らしきおじさんが、茂みの向こうを睨みつける。


 その先には洞窟があり、洞窟の入口の前には、辺りを照らす松明が灯されていた。

 松明の付近には見張りが二人おり、周囲に警戒しているようだ。



「ふむ。あの見張りに見つかれば、仲間をよばれて乱戦になるな。それは避けたい」



 衛兵の隊長らしきおじさんは、見張りの二人が何とかならないかと思案する。



「わたくしが対処しましょうか?」


「おお・・。それは助かります。見つからぬように、あの見張りをなんとかしていただきたい」


「承知しました」


 

 私は最近覚えた、周囲の光を遮断して姿を消す光魔法、光学迷彩を使い、自らの姿を見えなくする。



「どうでしょう? わたくしの姿は見えますか?」



 周囲が暗いので、成功したかいまいちわかりにくいので、念のために衛兵のおじさんに尋ねる。



「すごいですね。暗闇に溶け込むように、見えなくなりました」



 光学迷彩は無事成功したようである。


 私はそのまま土雲に乗って、音もなく見張りの賊2人に近づく。


 見張りの賊二人に十分に接近すると、二人が声を出さないように、土魔法でマスクを作って、取れないようにはめて差し上げた。



「ん、ん・・!?」「むっ・・・!?」



 見張りの賊二人にマスクをはめたのは、大声で仲間をよばれないようにするためである。


 次に賊二人の足元に、土魔法で落とし穴を掘る。


 

 ドド~ン!


「「んあ・・・・!」」



 すると賊二人は落とし穴に落下する。



 カパ!



 そのまま賊二人が落ちた落とし穴に、岩で蓋をして差し上げた。


 このまま無酸素状態となり、賊2人が死んでも目覚めが悪いので、落とし穴の蓋には、呼吸ができるように、竹を刺すのを忘れない。


 これぞ忍法土遁の術!


 もし本物の忍者がいたら、それは違うぞと、突っ込んでくれたに違いない。


 それと同時に衛兵のおじさんたちが、音もたてずに接近してきた。



「すごい魔法ですね。男たちを一瞬で跡形もなく消し炭にするなんて」



 人聞きの悪い。男たちは消し炭になっていない。穴に落ちただけだ。


 そしてその後、二人の魔術師がテンプレのごとく、ボスキャラめいて出てくるんだろうな・・・。

 などと期待に胸躍らせる私だったが、現実はそう上手くはいかないものだ。


 押し入った衛兵たちにより、寝ている人攫いたちは次々に、無抵抗なままに捕縛されていった。


 そして魔術師と思われる二人は、ロープでぐるぐるまきにされ、猿ぐつわをされて、今私の足元に転がっているよ。


 この二人は私のように、無詠唱での魔法は使えないようで、終始無力であった。

 私はただ、そんな二人の魔術師を、ジト目で見る他なかった・・・・。



「子供たちが見つかったぞ!!」



 そして数人の攫われていた子供たちが、無事保護されたらしい。



「どうもご苦労様ですドラゴンスレイヤー様! あとは我々だけで十分ですので、どうぞお帰りください!」


 

 けっきょく私が活躍したのは、最初の見張り二人を動けなくしただけという、微妙なものだった。


 まあそのおかげで今回の作戦が、成功したわけではあるが・・・。


 現実はこういうものだということを、噛みしめ、土雲に乗ってふわふわと浮きながら、眠たい目をこすりつつ、町長の屋敷に帰還する私であった。

 


【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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