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06:幼女人攫いに遭う

 必要な物品の取引を終えた私たちは、行商人のカクタニさんに挨拶をして別れた後、エインズワース侯爵の待つ、町長の屋敷を目指していた。



「クマさん。先ほどの悪意・・・感じましたか?」


「ああ。どこかで仕掛けてくるかもしれないな」



 私が先ほど商いの最中に、魔力感知で感じた悪意をクマさんに伝えると、クマさんはまだ見ぬ敵の行動を予期した。


 相手はおそらく人攫いであろう。

 殺すつもりであれば、悪意ではなく、殺意を感じるはずである。


 魔法を使える子供は、さぞ高く売れることだろう。だが子供を攫って売るような行為をする輩を、私は許しはしない。


 なによりお米や醤油を使った、楽しい時間に思いをはせる気持ちに、水をさされたのだ。

 この怒り晴らさずおくべきか!! 激怒プンプン!!


 狙いは私だろう。アリスちゃんはこの町に入ってから、目立った魔法は使っていない。

 私は商いの途中で魔法を使いまくって、目立っていたからね。


 


 そして大通りに入り、細い路地を目前にした時、敵は動いた。

 ズタ袋を持った男が、私の後方に潜み、ゆっくりと接近してきたのだ。


 魔力感知で確認すると、男がズタ袋を私にかぶせ細い路地に入り込む未来が見えた。

 ならばと現行犯で捕まえるために、男が私にズタ袋をかぶせるのを待つ。



 ガバ!!


「リンネ殿!!」



 叫んだのはクリフォードくんだった。


 突然影が差したかと思うと、上からズタ袋が口を開けて迫って来た。

 男は魔力感知で確認した通り、私にズタ袋をかぶせてきたのだ。


 私は袋が覆いかぶさる直後に、土剣を発動しようとするが、魔力が乱されて上手く発動できない。

 ズタ袋の中を見ると、青白く光る魔法陣が浮かび上がっていた。

 おそらくこのズタ袋には、魔法を阻害する処置がほどこされているのだろう。


 そのまま私を抱えて、細い路地に逃げ込もうとする男。

 しかしこの手の魔封じは、聖女との戦いの時に経験済みだ。


 私はさらに魔力を強めて、土剣を発動しようとする。

 すると何かが割れる感覚がして、ズタ袋を突き破って土剣が発動した。



「ぎゃ!!」


 ドカ!!



 魔力感知を封じられていたために、男が土剣の重みで転んだのか、土剣に驚いて転んだのかわからないが、男はそのまま転げて壁に背中を打ち付けた。


 私は素早く男に接近すると、男の手足を、土魔法の操土で作った土枷で拘束した。

 圧縮された土は鉄のように固く、ちょっとやそっとの力では破壊出来ない。

 男は芋虫のように地面に転がった。



「リンネお嬢様! ご無事ですか!!」



 私に声をかけて来たのは、護衛の騎士だった。


 そしてその後を、クリフォードくんやアリスちゃんがついてくる。

 クマさんはすでに別の行動に移っているようだ。



「わたくしは大丈夫です。アリスちゃん。いっちゃんを召喚して護衛につかせなさい」


「わかった!!」



 アリスちゃんは護衛ゴーレムのいっちゃんを、収納ポーチから出すと自らの傍らに置いた。

 これは、一時私がアリスちゃんから護衛を離れる場合の、保険的手段だ。



「リンネ殿! どちらに!?」


「あちらに人攫いの仲間と見られる集団がいます。わたくしはあれらを拘束してまいります」



 私は風魔法の大跳躍を使うと、高く飛び上がり、魔力感知で感じた先ほどの集団の位置まで飛んでいった。


 上空から見ると、枝分かれした細い路地の一つに、4人の男が、何かを入れたズタ袋を抱えて走るのが見えた。

 あのズタ袋は私を攫った後に囮にでもするつもりだったのか?


 魔力感知で見ると、4人の男の悪意は今は怯えに変わっていた。どこかで私の行動を、観察していたのだろう。一目散に逃げている。


 私は4人の男の行く先に、着地して立ちふさがる。



「ちっ! 追ってきやがった! 引き返すぞ!!」



 4人の男の一人が引き返すことを提案すると、4人とも後ろに振り返って逃げの姿勢に入る。



「ぎゃ!!」「ぐえ!!」



 そうはさせない!


 私は風魔法で突風を発生させて、4人の男を吹き飛ばした。

 そして吹き飛んだ男の内3人に、素早く近づいて、土魔法で作った枷で手足を拘束する。

 その内一人は即座に起き上がると、再び逃走を開始した。


 私はその男の後を追って、人攫いのアジトまで案内させるつもりでいるのだ。



「嬢ちゃん。あとはオイラに任せろ。皆が心配している」



 姿は見えないが、どこからかクマさんの声がした。

 そうだ、私はアリスちゃんや、クリフォードくんをほっぽって来ているのだ。



「わかりました。あとはクマさんに任せます」


 

 私は逃げる男の追跡をクマさんに任せると、周囲にころがる3人の男ごと、風魔法の大跳躍で吹き飛ばして、皆の待つ場所へ飛んでいった。


 

 ドカドカドカ!!


「リンネ殿!?」



 上空から降ってくると、クリフォードくんが驚愕の表情でこちらを見ていた。

 3人の男は上空がよほど怖かったのか、泡をふいて気絶している。



「この3人も人攫いの一味です。衛兵に突き出しましょう」


「クマちゃんは!?」


「大丈夫ですよ。クマさんもあとで帰って来ますよ」



 私はクマさんを心配するアリスちゃんを安心させるために、とりあえずそう言った。






「ご協力感謝します。侯爵家の方々」



 駆けつけてきた衛兵の一人が、人攫いを捕らえた私たちに感謝の言葉を伝える。

 そして人攫いの男たちを連行して行った。

 あとはクマさんの報告を、待つばかりである。






「港町ノースポーへようこそ。お待ちしておりましたぞ」



 町長の屋敷に着くと、町長と使用人、先に町長のお屋敷に到着していた、エインズワース侯爵が出迎えてくれた。



「わたくしノースポーの町の町長を務めさせていただいております、イアン・イーテ・ウィルビー男爵と申します。どうぞお見知りおきを」



 この港町の名前はノースポーというのか。今まで醤油のことで頭がいっぱいで、失念していたが、今初めて港町の名前を知った。


 町長は灰色の髪に口髭を蓄えた、黒いタキシードの初老の男だった。

 腰が低いのか、やたらと敬語なのが特徴だ。

 隣に侍っている、茶髪を団子にした感じの、ピンクのワンピースのおばさんは奥さんかな?


 その後すぐに夕食になったが、クマさんのことが気になり、異世界海鮮料理の記憶が曖昧だった。

 ボイルした伊勢海老だけは、記憶に残っているが・・・。






 コンコン!



 そして寝る前になりベッドに入ろうとしたその時、窓からノックの音が聞こえてきた。


 こんな場所から入ってくるのは一人しかいない。



「嬢ちゃん。ただいま」



 クマさんだ。


 

「クマさん。窓は入口ではありませんよ?」


「そう固い事言うな。

 あんにゃろう、なかなかアジトに帰ろうとしやがらないから、遅くなっちまったぜ」



 あんにゃろうとは、わざと逃がした人攫いの一人のことだろう。

 おそらく警戒して、なかなかアジトに帰らなかったのだろう。



「奴らのアジトは見つけて、衛兵の偉い奴に通報しといたぜ。あとはこの町の衛兵が、何とかすると思うんだがよ。少々気になることがあってよ」


「気になることですか?」


「人攫いのアジトに、魔術師が2人いやがったのさ」



 相手に魔術師がいるということは、衛兵には厳しい戦いになるかもしれない。



「その魔術師の相手を私にしろと?」


「まあ気が向いたらでいいんだがよ。明日の未明に、人攫いのアジトに押し入るようなんだ。オイラ今は魔力が少なくて、これ以上は手助けできなかったのさ」


 

 これは衛兵の人たちを助けたいから、何とかしてくれってことだよね。


 まあテンプレっぽいし、少しバトルジャンキー気質になった私には、わくわくする内容だ。それに昼間の恨みも晴らしてないしね。



「わかりました。明日の未明にどこへ行けばいいんです?」


「嬢ちゃんならそう言うと思ったぜ!」



 そして私はクマさんに衛兵の集合場所を聞き、未明まで寝ることにしたのだった。



【★クマさん重大事件です!】↓


 お読みいただきありがとうございます!

 ほんの少しでも・・・・


 「面白い!!」

 「続きが読みたい!」

 「クマさん!」


 と思っていただけたなら・・・


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 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます!!

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