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霊感ケータイ  作者: リッキー
研修旅行
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5.研修旅行1日目

林の中を通る山道を一台のバスが走っている。


中学校の研修旅行のバスの道中・・







バスの中には拓夢君をはじめとする1年生。ワイワイガヤガヤと賑やかなバスの中・・



一番前の席に校長先生と源さん。

ポットのコーヒーを飲みながら、話し込んでいる。



「合宿所は、ずいぶん前から使っていないと聞いていましたが・・」


「はい。色んな噂話があって、生徒も教師も気味悪がって近づけなかったもので・・」


「それが、どうして、急に使えるようになったのですか?」


「この夏休みに、お孫さんの入っている『ゴーストバスター部』に活躍してもらったんですよ・・」


「ほう・・そう言えば千佳が、お盆前に、ずいぶん忙しそうにしてましたなぁ・・」


「はい!大活躍でしたよ!!」


「それは、見てみたかったものですな・・・」



窓の外を見ると、町からだんだん山のふもとの林に入ろうとしていた。

生徒は、前列が女子、後列に男子が固まって座っていた。


拓夢君の事が話題になっているようだ・・


「おい、タクム。お前、新しい『お姉ちゃん』が出来たって?」


「え~・・ホントのお姉ちゃんの他にいるの~?」


「拓夢君のお姉さんって、すっごく頭良いんでしょ~?」


「幼稚園の頃から、『おねえちゃん、おねえちゃん』だもんな~」


「『新しいお姉ちゃん』って?誰??」


「ゴーストバスター部の2年生の先輩だって!」


既に、『秘密』ではなくなっていた事に驚いている拓夢君・・

学校の噂話の拡がるスピードは早いのだ・・・



「拓夢・・お前、お姉さんと同じ『オカルト研究会』に入ってるんじゃなかったのか?」


「新しい『お姉ちゃん』を追いかけて、二股かけてるのか~?」


赤面して何も言えない拓夢君・・まさに、その通りなのだった・・


「ああ・・姉弟愛かあ~・・憧れるな~。」


「あんた、弟いないもんね~」


「ウチの弟、最悪だよ!部屋にズカズカ入ってくるし、大事なモノ、引っ張り出して行くし・・」


「妹だってそうだよ!俺の大事な本、盗み見してるし・・」


「『大事な本』ってどんな本だよ~」


「エロイ本か~?」


「きゃー!あんた、そんなの読んでるの?フケツ!!」


何だか、拓夢君から話題がそれていっている・・中学校の会話なんて、そんなものなのだ・・

「拓夢君とお姉さん」の話なんて、殆ど、「きっかけ」のようなものでしかない・・・




また、女子の別のグループでも・・・


「でもさ~、拓夢君って、夏休み明けてから、変わったよね~。」


「コンタクトにしたからかな~、カッコよくなってるカモ・・」


「女子の間で密かに狙ってる娘・・多いよね・・」


「シスコンさえなければ、いいトコいってるんだけどな~。」


何かと話題になってる拓夢君・・

その会話をそっと聞いている女の子がいた・・・


「拓夢君・・その『新しいお姉ちゃん』の事・・どう思ってるのかな・・」


「沙希・・気になるの?」


「え?・・あ・・お姉さん同士で喧嘩にならないのかなって・・・」


「ああ・・まだ、お互いには会ったことないみたいだよ!違う部活同士だし・・」


「ふ~ん・・ゴーストバスター部か~・・」



バスの一番後ろの席で聞いていた二人の男子がいた。


「あいつ・・気に入らない・・・」


「どうしたんだ?サトシ。」


「拓夢・・最近、いい気になってる・・」


「うん・・女子の間でも話題になってるしな~」


当の拓夢君は、窓の外を眺めながら、千佳ちゃんの事を考えていた。



  お姉ちゃん・・今頃・・何やってるかな・・・


ふと、道路の際の方を見る・・・

一瞬、、蠢く(うごめく)影の様なものを見た・・・


林に紛れて、透き通った塊が見えたのだ。


ハッとなるが、通り過ぎてしまう。



「何だったんだろう・・アレ・・」

心で呟く拓夢君。


拓夢君の波乱な研修旅行が幕を開けたのだった・・・









バスが合宿所に到着した。


古い学校を改装した合宿所の前のグラウンドに一年生が集合し、校長先生の話が始まっている。


整列する一年生に向かって、メガホンを片手に、マイクを握る校長先生。

それを見守る、数人の先生と源さん達。



「一年生の皆さん、中学生活も始まり、半年が経ちましたが、如何お過ごしでしょうか?

 もう、学校生活にも慣れたでしょうか・・


 つい、この間まで小学校で子供のように無邪気に遊んでいた時期と違い、

 中学生という段階は、皆さんにとって、


 心と体が共に劇的に変わってくる、重要な時期に入っています。


 子供から大人へと成長する。

 身体的な体の成長と共に、脳も大人と同様のレベルに育ってきています。

 運動能力も鍛えればスポーツ選手として活躍できる。

 学習面でも、知力、記憶力共に能力が高まっています。


 今、学習したことは、大人になっても使えるものばかりで、覚えることも考える事も小学生以上の者を要求されています。


 2年後には「高校受験」が控えている・・

 中学生までに学習する事を、身につけておかねばなりません。


 それまでには、自分の「進路」についても考えなければならない・・。」



一同の者が、一瞬、驚かされた感じになった。教師、生徒共に顔を見合わせている。

これから普段の生活と離れての「楽しい」研修が始まろうとしているのに、急に現実的な話になっしまったのに驚いた様子だ。


今まで上の空だったみんなの視線が、こちらを向いている。

周りの様子を見て、ニコっとなる校長先生・・






校長先生が話を続ける。


「『人』としての関心が高まる時期でもある。

 男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしくなってくる。


 心も体同様、子供と違った・・

 恋をしたり異性に関心を持ったりといった「思春期」を迎えています。


 自らの変化もありますが、周りの環境や皆さんを見る目も変化してきます。

 周りからは今まで、「子供」として見られたいた・・


 多少の事は「子供だから」ということで、多めに見られたりした事も、

「中学生」という目で見られ、それ相応の事を求められています。

 ご家族や地域、社会に対しても、「中学生」として、行動しなければなりません。


 それは、いずれ皆さんが社会に出て自立するための準備期間でもあります。


 今すぐに、ちゃんとした精神と体力を身につけよと言えば、それは大変な事です。

 苦痛に感じられる事もあります。

「今すぐ大人になれ」と言われても、成れるものでもない。


  徐々に・・


 自分のペースで、成長をしていけばいいと思います。

 少しづつ大人になっていく道のりを、この中学校で過ごしていってもらいたい。


 我々、教師一同は、その成長をずっと守り続けているサポーターです。

 悩みがあったり、分からないことがあったら、いつでも相談してもらいたい。


 皆さんの親御さんも同様に、皆さんを応援していると思います。

 悩みや苦しみを共に乗り越え、

 中学生活を楽しい、良い想い出としてもらいたい・・


 それが、あなたがたの先輩でもある我々、大人の願いです。

 この合宿所での研修では、


 集団生活や自然の中での授業を通して、普段の校舎では学習できない事を学んでもらい、

 充実した研修になることを願っています。」



校長先生の、中学一年生に対してのメッセージ・・

真剣に聞いていた子は、それほど居なかったと思う。


その「意味」が分かるのは、成長して「大人」になった時・・もしくは、全く気にも留めずに通り過ぎるだけの事なのかも知れない。

「大人」の中学生に対する「思い」と、実際にそれを受け取る中学生「本人」達とのギャップは、かなりかけ離れたものがあるのだ。


それは、どの状況に立っても、同じなのだろう・・・

期待する側と期待される側のスタンスは一致しないほうが多いと思う。


源さんは、その校長先生の想いを深くかみ締めていた。






続いて、学年主任がこの研修旅行のスケジュールやグループ分け、施設を利用する上での注意事項等・・先生の仕事も結構ある。


源さんの「課外授業」は午後からになっていて、午前中はグループに分かれての昼食の準備がメインになっていた。

先生の説明が終わって、各グループにワラワラと別れ、作業に入る。


拓夢くんは、先程の「沙希ちゃん」と数人の女子、そして、「サトシ君」ともう一人の男子の6人のグループに入っていた。



「役割を決めようぜ!

 タクム、お前、火起しをしておけよ、

 俺達は薪とか運んでくるから・・」


サトシ君が提案している。

この、炊事は、火を起こす事から始める本格的なものらしい・・


「うん」


拓夢君は、火起こしの経験はなく、初めての事に不安もあったが、あまりにも強く言われたため、渋々役を引き受けた。


「じゃあ、私達、食材の用意するね!」


女子が、料理の準備をする事となった。調理室へ向かう女子一同と、薪小屋へ移動するサトシ君達・・



グラウンドの片隅で、火起こしに挑戦する拓夢君・・・

薪に小指の指先が入る程度の穴を開け、そこに丸い棒を差し込む。


弓状の棒に張られた紐で、その丸い棒を回転させて、摩擦による熱で火を起こすというものだった。


野外生活の体験ではよく使う方法だ。



他のグループは男子と女子が楽しそうに火起こしをしていた。

既に煙が出てきた所もある。

拓夢君は、その様子を横目で見ながら、一人で必死に作業をしている。

いくら弓を引いても、なかなか火がつかない・・


薪やワラを運んできたサトシ君達・・


「何だよ!まだ火が起きないのか?」


「うん・・なかなか・・」


「俺達、薪とかの準備は終わったんだぜ!早く火を付けてくれなきゃ、次に進まないじゃないか!」


「ちゃんと、やっとけよ!」


そういって、サトシ君達は、校舎を改装した宿泊棟の方へと入っていった。

一人取り残される拓夢君・・・





そんな様子を、調理室から見ていた同じグループの女子達・・


「サトシ君たち、あっち行っちゃったよ!」


「ひどいね~。一番大変な事、タクム君に押し付けて!」


「沙希!チャンスだよ!!」


「え?」


「タクム君に近づくチャンス!」


「二人っきりでさ~、火起こししてれば?」


「で・・でも・・・」


「こっちは、私達に任せてよ!」


沙希ちゃんは、仲間達に見送られ、拓夢君の作業している方へと歩いていった・・・

必死で、格闘している拓夢君・・



「大丈夫?・・・」


恐る恐る声をかける沙希ちゃん・・・



「え?うん・・なかなか・・上手くいかない・・・」


汗を拭く拓夢君に・・


「根詰めないほうが良いよ・・・ちょっと休憩する?」


「うん・・」


少し、木陰で休む二人。


他のグループは、火が起きて、炊事を行い始めている。




「オレ・・こういうの、駄目なんだよな・・・」


「普段、やらないからね~」


「うん・・今って、コンロでも、スイッチ一つで火がつくんだもんね・・」



「便利な世の中なのね・・」


「こういう作業してると、実感するよ・・」


「昔の人って、こういう事はフツーにしてたんだよね。」


「そうだね・・昔の人のほうが、何でも自分でやってたんだよな~」


空を見上げる拓夢君・・


木陰を作っている大きな木の上に広がる青い空・・


鳥が飛んでいる・・・喉かな秋・・・


二人でまったりしている・・・






そんな様子を見ている調理場の女子達・・


「沙希・・イイカンジじゃん!」


「うふふ・・良かったね!」



「でもさ・・まだ・・火・・ついてないんだよね・・」


「このまま、火が付かないと、お昼ご飯・・作れないよね・・」


「ひょっとして・・『昼抜き』~??」



「ちょとぉ・・それマズイんじゃない?」









休んでまったりしている拓夢君と沙希ちゃんの所へ、慌てて走り込んでくる女子達・・


「沙希~・・まだ火・・付かないの?」


「うん・・まだみたい」


「そんな・・悠長な事、言ってらんないよ!」


「他のグループ、調理終わっちゃうよ!」


「このままだと、ご飯抜きになっちゃう!!」


「タクム君!がんばってよ!!」


「え~~?」


再度、火起こしを迫られる拓夢君・・


どうしても、やらなければならないらしい・・・


必要に迫られ、焦りも出て、なかなか火が付かない・・・


「コラ!タクム!それでも男か~??」


「ひえ~~!」


檄が飛ばされている。








宿泊部屋で、二人、休んでいるサトシ君達・・・

外では、拓夢君が女子に迫られながら必死に火起こしをしているのが見えていた。


「あ~あ・・タクム・・まだ、やってるよ・・」


「ふふ・・いい気になってた罰さ!」


「女子もタクムの、あんな姿見れば、あきれられるよな・・」



そんな様子を、見ていた源さんが、見かねて部屋に入ってくる。


「君達は、手伝わないのかい?」


「あ・・源さん・・」


「オレ達、自分の役は終わったし・・」


「薪とか、釜戸の準備は終わってます」


「他のグループは、皆で協力してやってるみたいだが・・」


「俺たちのグループは、役割を分担したんです。

 他のグループは、火起こしに集中して、他の準備をしてないから・・・」


「でも、火が付かないと、君達も大変な事になるんじゃないのかね?」


「大変な事?」


「ほら・・他のグループは火が付いて、調理を始めてるよ・・


 このままだと、君達、飯ヌキだぞ・・食べないのは君達の勝手だが・・

 午後からの私の授業は、山に登るから、ちゃんと食べておかないと、もたないぞ!」



窓から、改めて様子を覗うサトシ君・・

他のグループは、確かに調理を始め、終わりそうな所もある・・

もうお昼まで時間が残っていない・・



「やべ!行こうぜ!!」


「タクムのヤツ・・何やってるんだよ!!」


急いで部屋を出て行くサトシ君達・・そんな様子を、見守る源さん。






まだまだ女子にはやし立てられながら、焦りながら作業をしている拓夢君・・

焦れば焦るほど上手くいかない・・



「タクム!何やってるんだよ!」


「あ・・サトシ君!」


「あんた達、今まで何やってたのよ!」


「しょうがないな・・貸せよ!」


火起こしの道具を、取り上げるサトシ君・・

実際に、やってみると大変だった・・・


だが、しばらく棒を廻していると、先端に煙が出てきた。


「あ・・煙・・出てきた!」


「もう少しだよ!がんばって!!」


女子達も必死で作業しているサトシ君に声援をしていた。

その声を聞いて、がんばるサトシ君。


ワラをくべると、火が付き始めた。

フウフウと息を吹きかえると、小さな炎が上がった・・・



「やった~!!」


周りから、歓喜の声があがる。

その状況が、自分でも信じられなかったサトシ君・・実際に、火を付けたのは初めてだった。


釜戸に火種を移して、薪をくべはじめる。

薪に火が回ってからは、皆で調理を協力しはじめた。



「サトシ君・・すごいよ!」


拓夢君が、サトシ君を褒める。


「え?・・ああ・・」


意外な拓夢君の激励に、少し驚き、ちょっと見直したのだが、我に返る・・・

それまでの自分のスタンスを崩したくない。



「このくらい、ちゃんと出来なきゃ!お前、何してたんだよ!!」


「ごめん・・オレ・・こういうの苦手だから・・」


「昔っから『お姉ちゃん、お姉ちゃん』だったもんな・・

 お前、『お姉ちゃん』無しじゃ、何も出来ないのかよ!!」


そう言って、調理をしている中に入り、手伝うサトシ君。

今のサトシ君の声が心に刺さる拓夢君だった・・・


皆が楽しく調理をしているのを外れ、一人、落ち込む拓夢君・・・






そんな様子に気づいた、沙希ちゃんと女子達・・


「サトシ君、またタクム君に意地悪してるよ!」


「全く・・全然手伝ってなかったのにね~」


「でも、火起こしできたサトシ君もすごいって思った!」



「何~?沙希~・・サトシ君の肩持つの~?」


「どっちの味方なのよ!」


「え?どっちって・・・」



「ほら・・タクム君・・たそがれてるわよ!」


「またまた、チャンスじゃない?」


「チャンスって・・・」


「落ち込んでるときに、慰めてくれる女性に弱いって・・TVで言ってたわよ!」


「こっちは、私達が引き受けるから、沙希、タクム君の事、なぐさめてきなよ!」


「う・・うん・・」


また、渋々と拓夢君に近づく沙希ちゃん・・


「ど・・どうしたの?タクム君・・」


「え?・・・あ・・オレ・・何にもできないなって・・・」


「あんなに頑張ってたのに、火起こし、サトシ君がすんなりやっちゃったもんね・・・」


「あぁ・・・オレってだめなんだなって・・・

 お姉ちゃんが居ないと、何もできないのかなって・・・


 小学校に上がる前から、お姉ちゃんを頼ってばかりだった・・・」







うつむく拓夢君の様子を見て、話題を変えようと思った沙希ちゃん。


「タクム君のお姉さんって、頭いいんだってね~」


「うん・・部活の副部長もしてるし、高校も推薦入学できるって言ってた・・」



「部活って?」


「オカルト研究会だよ。僕も入ってる。」


「何か、オタクっぽい部活だね~」



「え~?

 すっごい頭の良い人たちばかりなんだよ!顧問も教頭先生だし・・」



オカルト研究会と聞くと、単なる超常現象やUFO、幽霊等に興味のある人たちが集まる同好会のような印象がある。でも、実際には、ハイテク機材が揃って、ネット上でもOBや教頭先生とつながっている大学や研究機関と交流がある。超常現象を科学的に探求しようというグループの一員となっていて、その構成員は校内でもトップクラスの人たちが入っている。勉強でも分からない部分も丁寧に教えてくれる先輩達が大勢いるのだ。

パソコンのプログラムやアプリ作成など朝飯前の先輩や数学、物理が得意な先輩もいて、一大プロジェクトを形成している。

この部活に入るにも、ある程度の知識と学力が無ければついてはこれない。



「ふ~ん・・・そんな凄い部活があったんだ・・」


「うん・・みんな凄い先輩ばかりだよ。」


「すごいんだね・・・

 じゃあ・・『新しいお姉ちゃん』って?」


「ああ・・ゴーストバスター部のお姉ちゃんだよ・・

 学校では『お姉ちゃんになってあげる』って言われたんだ・・・」


「頭、良いの?」


「・・・・あんまり・・・かな・・・」


今頃、千佳ちゃん、くしゃみしてるぞ~!


トップクラスの成績のメンバーによるエリート集団である『オカルト研究会』に対して、我ゴーストバスター部は、部長である僕自体が優柔不断なだけではなく、成績も最低レベルで頼りない・・しかも部員の中で一番霊感が無い。その他の構成員も、霊感があっても「変わってる」副部長の彼女やオカルト大好きな千佳ちゃん、拓夢君も正式な部員ではない・・・と、不安定要素が多い。





「変わった、部活だね~・・この夏にできたって聞いたけど・・・」



「うん・・頼りなさそうだけどね・・・



でも・・・」




「でも?」




「ゴーストバスター部って・・・『本物』なんだよ・・」



「本物?」




「名前だけじゃない・・・本当に除霊とか悪霊退治してるんだ・・!」



「え?それって・・・」



「この合宿所の除霊も、夏休みの間にしてたって・・・」



「この合宿所に『居た』の?」



「うん・・・限られた人たちには、噂されていたんだ・・


これを知ってるのは、先生達やオカルト研究会くらいだったけどね・・



この夏休みに一掃したんだって・・・」



「ウチの学校も、色んな噂あるけど・・・」



「ゴーストバスター部は、そういう現象に、真正面から立ち向かってる・・


みんな霊感があって・・・あ・・先生と部長は無いけど・・・


幽霊が助っ人に来るし・・」



「幽霊が助っ人??」




「顧問の先生の亡くなった娘さんだって・・・」



「何か・・・その部活も凄そうだね~オタクっぽい人たちばかりなの?」



「ううん・・・みんな、良い人たちばかりだよ。やさしいし・・・」









「ねえ・・・私・・・部活に入るなら、どっちが良いと思う?」



「え?」



「タクム君と一緒なら・・オカルト研究会・・・かな・・・先輩・・怖そうだけど・・」



拓夢君は少し考えたが・・



「ゴーストバスター部のほうが楽しいと思うよ!」


「え?でも・・・除霊とか悪霊退治って・・・・怖そうだけど・・・」


「楽しいよ!」


拓夢君の満面の笑顔に、どんな部活なのか、ちょっと見てみたいと思った沙希ちゃんだった・・・






その時、サーーーーっと風が吹き渡った。


そよ風ではなく、ザワザワとした突風に近い風。



「何??」


拓夢君は驚いた感じで、口走る。

それ以来、同じ風は吹かなかった。


見渡しても、何もない。




「タダの風でしょ?」


沙希ちゃんには、普通の風に思えた。


拓夢君は何やら胸騒ぎの様なものを感じていた・・・・

















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