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霊感ケータイ  作者: リッキー
伊吹丸
87/450

17.砦で見たものは・・・


砦へたどり着いた伊吹丸。


兵士たちの屍が目に入る・・・・


「ここも・・落ちたのか・・・」


火が廻り始めている。






「帝~!!」



「イクシマー!!」



「何処に居るのじゃ!」



必死でイクシマ達を探す伊吹丸。


砦の見張り台のある階にたどり着いたとき・・・





「伊吹様・・」


イクシマの声がする。

見ると、帝の亡骸を抱えているイクシマ。

放心状態である。



「イクシマ・・」


その顔に帝の血を浴びて赤い顔になっているイクシマ。



「帝が・・お亡くなりに・・なりました・・」


変り果てた姿の帝。イクシマに抱かれている。


「帝~!!!!」

その亡骸に抱きつく伊吹丸。





「帝・・  




 帝・・・・  




 帝ーーー!!」





「伊吹様・・・」

その場で、悲しみに暮れ、泣き続ける二人であった・・







砦にたどり着いたヤスマサと和泉の君。


「ここか・・」


「兄上!」


馬を降りるヤスマサ。

砦に、火の手が上がっている・・・




「和泉・・お前はここで待っておれ!」



「はい・・」



「兄上!」



「如何した?」



「伊吹丸様を・・・」



「うむ!かならず、連れ戻してくる!」



そう言い残して、火が廻り始めている砦へと入っていくヤスマサ・・







「伊吹丸!!」


ヤスマサの声がする。

声のする方へ振り向く伊吹丸。

下階から階段を登って来るヤスマサ・・


「ヤスマサ・・様・・」

イクシマがつぶやく。




「伊吹丸・・イクシマ・・・無事だったか!」




「無事?・・帝は崩御なされました・・・」

伊吹丸が恨みを込めて答える。



「帝が・・・」

イクシマの抱く帝の亡骸なきがらを見るヤスマサ。




「これが・・人間のすることですか?・・人を騙し、人を殺める事を平気でやってのける・・・」


伊吹丸がヤスマサに問いただす。




「すまぬ・・ワシの力が足りなかったのじゃ!」





「私は・・力無くとも・・幼き帝に・・茨木の君に・・仕えましたぞ・・!


力のあるあなた方は・・弱い人達に・・よってたかって・・・」




「う・・」



「強い者が弱い者を助ける・・それが人間なのではないのですか?


全うな・・幸せな生活を夢見ていただけなのに・・・


なぜ・・帝を助けて・・よきまつりごとを行うことに精をだせなかったのですか・・


自分たちの勢力争いの道具に・・幼い帝を死に追いやるなど・・


ヤスマサ様・・これが・・人間のする事ですか!?」



イクシマの抱きかかえる帝のむくろを指差して、ヤスマサに叫ぶ伊吹丸。






砦全体に火が回り、猛火に包まれている・・

そろそろ逃げ出さないと、皆が危ない状態だ・・





「伊吹丸!お前とは・・争いとうない!!」



剣を地に差すヤスマサ・・




「今更!何を言うのですか!!


 戦をしたくないと・・・帝も・・申しておられました・・・・


 関白とも手を結ぶ機会はあったはずなのに、


 なぜ、止めなかったのですか!!」



「すまぬ・・」



「亡くなられた帝も・・・どれほど悔しい思いをされたことか・・・

 茨木の君も・・」


見張り台のあるこの階も、天井や柱に火が廻ってきている・・

早く逃げないと、危ない・・必死で説得するヤスマサ・・



「伊吹丸!


 悔いても悔やみきれない!!


 謝っても許してはもらえぬだろう・・


 でも、もう終わったのじゃ!!


 帝も亡くなられ、、お前達が戦うこともない!!



 ワシも、もう都に戻りとうない・・


 帝や、茨木の君様の居ない都など・・見とうもない・・


 関白の行う政に力も貸さぬ!


 伊吹丸!イクシマ!


 越後に戻って、仲良く暮らそう!



 我らの元へ・・戻ってまいれ!!」


 和泉も待っておる!


 我ら、いとまを頂きたいと、大納言様にお伝えした!」




「和泉の君・・・」


一歩足を出す伊吹丸・・





  ヒュン!!




一本の矢が伊吹丸の肩に刺さる・・



「な・・・」


その光景に驚く伊吹丸とヤスマサ・・



忍び込んでいた兵が放った矢が当たったのだった。


キッとにらんで、兵の息の根を止める伊吹丸・・


バッタリと倒れる兵・・




刺さった矢を抜きながら

ヤスマサを睨む(にらむ)伊吹丸・・・



「おのれーーーー!!騙しおったなーーーー!!」




「違う!これは・・・」




「ヤスマサーーーー!!」


妖刀を振りかざす伊吹丸・・





その時、イクシマが飛び込んでくる・・・


「おやめ下さい!!」


振り下ろした刃がイクシマの肩から背中を一直線に斬る・・



「う!!!」


イクシマの返り血を浴びる伊吹丸・・



ヤスマサの前に立ちはだかり、伊吹丸の一撃を受けたイクシマ。



「ヤスマサ様・・」

かすかに、微笑むイクシマ・・



「イクシマ!」



伊吹丸の方を向くイクシマ・・



「あなた方が・・


 争ってはいけません


 お願いです・・」

イクシマが宙を舞い、伊吹丸の方へと身をよせる。



イクシマを抱き寄せる伊吹丸・・


「伊  吹  様・・」



笑みを浮かべて、息絶える、イクシマ・・







「あ・・  あ・・・  あああ




ワシは・・イクシマを・・・殺めてしまった!!




ワシは・・ ワシは~ーーーーー!



イクシマーーーー!!」


イクシマの亡骸をかかえて、叫ぶ伊吹丸。

伊吹丸の着物に火がついている・・・


「伊吹丸!!」


安否を気遣うヤスマサ・・



「ぐあーーーーーーーーーーー!」



炎に包まれながら

見る見る姿と形相が変わっていく・・・





「わ・・






 我






  は・・







   酒





   呑





   童





   子




 なる!!」






「酒呑童子?!」



驚きを隠せないヤスマサが思わず叫ぶ。





「うおーーーーーーーーーーー!」


この世の恨みと怒りを一心に受けて、酒呑童子が唸り声を上げる。


豪火と共に、崩れ落ちる砦から、一筋の光の固まりが飛び出し、北西の方向へと飛び去った・・・







火災の渦巻く中、燃え落ちる屋根や梁を交わしながら、ヤスマサが姿を現す。



豪火の中、何とか助かったようだ。



和泉の君が駆け寄り、ヤスマサに聞く。


「皆は・・無事なのでしょうか・・?」



「イクシマが・・・死んだ・・」



「イクシマの君が・・・」


ガックリとひざを落とす和泉の君。


「伊吹丸様は?・・・」



「あれは・・


 もう



 人間では・・


  ない・・・」



酒呑童子の飛び去った方角を見ながら・・・






「すまん・・・・」





ヤスマサがぽつりと言った・・・










この後、酒呑童子の術によって、四人の童子が復活し、


都は酒呑童子と四天王が荒れ狂う「もののけ」の巣となり、


ヤスマサと望月の君による長きに渡る妖怪退治の幕を開ける。



そして、その因縁は、ヒロシと美奈子の生きる現代にまで引き継がれていった・・。











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