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霊感ケータイ  作者: リッキー
伊吹丸
83/450

13.勅命


頼光の軍勢が、三河を下り、駿府へと向かう。

その間に、東方征伐に加わる地方豪族を合わせると、10万以上の軍勢に膨れ上がっていた。


一方、都に残る護衛は、近衛の卜部氏率いる5千の兵のみとなっていた。

手薄となった都。



熊野のナカヒラの軍勢は2万・・


更に、西方の豪族は、ナカヒラの挙兵にあわせて集結するという密約をしていた。

東方の軍勢と力を合わせれば、頼光の10万の軍勢を挟み撃ちにできる。


頼光亡き後は、一気に関白の勢力を一掃できる。


まさに千歳一遇のチャンスであった。




この作戦こそ、伊吹丸が熊野詣出の際に、ナカヒラに語った策略の全容なのだ。

ナカヒラは熊野にて、帝の勅命を待ちわびていた。

帝の命令ひとつで都へ軍勢を送れる体制を整えていたのだ。




「帝!ご決断を!」

茨木の君が、帝にせまる・・・



「・・・・・」

黙っている帝。



「今のままでは、関白の思い通り・・ますます悪風漂う世の中となりましょう!」



「母上・・どうしても、戦をせねばなるまいか・・?」



「良い国を作るためには、犠牲も必要です!」



「犠牲の上に建つ、良い国とは・・何ぞや・・」

辺りを見回す帝。


皆、無言のままである。

「朕は、戦はしとうない!」



「帝!」



「話し合いで、何とかならぬのか?」



「話してわかる相手ならば、今まで、やっております。

それよりも、何度、帝のお命を狙われた事か・・」



「それは・・・」


「このままでは、いつ帝のお命が無くなるかわかりませぬ!」



「やられる前に、やれというのか・・・」



「御意!」





「・・・イクシマ・・・」


「帝・・」



「そなたは・・どう考える?」



「私めは・・まつりごとの事は良く分かりませぬ・・・




分かりませぬが・・・



帝が、どんな国を作りたいか・・それが一番・・肝心かと思いまする・・・」




「どんな国・・」



「さようでございます。その国づくりに賛同される方々が、帝に力を貸されるでしょう・・」



「朕は・・



戦いのない、平和な、皆が笑って暮らせる国を作りたい!



そのために・・・





今の・・




関白の業事わざごとは・・・



朕の考えとは真っ向から違う!




良き国を作るに・・



悪しき者を成敗せねばならぬ!」





「帝!」

茨木の君が、歓喜の声を上げる。




「関白を成敗せよ!帝の勅命なる!!」



「聞いたか・・帝のお言葉・・ 国の道を正すために、立ち上がるのじゃ!」



「おーーーーーーー!」


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・



小屋の中で話を聞いている祥子ちゃん。


「帝が立ち上がったのですね!」

翔子ちゃんが歓喜にわく。



「うむ・・あの時の帝の言葉を聞いて、この国も生まれ変わるのだと思うたのだ!」



「凄いです!幼くして国の行く末を考えるなんて!!」



「皆、我慢しておったのじゃ・・


関白の悪政に苦しんでおった!」




「これで、全てが変わるのですね!」



「うむ・・皆がそう思うておったのじゃ・・・

 じゃが・・・」



「え?」



  ・

  ・

  ・

  ・

  ・



東方へと向かう頼光の軍勢・・

頼光の陣営に、早馬にて都から知らせが来る。



「頼光様!都でナカヒラ殿が挙兵しました!」



「何?!」



「関白様の邸宅を襲っているよしにございます」



「誰の命じゃ!」



「帝の勅命との事です!」




「く!!我らの留守に・・挙兵とは・・・

 ナカヒラ・・・やってくれたな・・・・


 よくも! よくも!  よくも!!!」

地団駄を踏む頼光。だが・・・



「よくも、やってくれた!!!ナカヒラ!!

 我らの術中に、こうも上手く、はまってくるとは・・・!!」

ニヤリと笑う頼光。



「この日を待ちわびたぞ!

 皆の者!都へ戻るぞ!!!」



「御意!」



ここは、近江・・都から半日もしない場所である。

影武者の率いる軍勢を東方へ向かわせ、頼光はこの地に潜んでいたのだった・・


軍勢の主力の大半は、残していた・・・



「敵は、都にあり!いざ!出陣じゃ!!!!」



   「おーーーーーー!」









小田原付近で陣を敷いているヤスマサ。

敵の軍と距離をおいて、にらみ合いが続いていた。


「ヤスマサ様!」

伝令の兵士が駆けつける。


「何用じゃ?」


「敵の陣営が、降伏をしたいと申しております」


「何?それは、誠か??」


「はい!」


それまで、必死に抵抗していた敵が、急に降伏をしてくるのも、変だと思ったヤスマサ・・・

さらに、伝令が走って来る・・


「ヤスマサ様!都で内乱が起こっております!」


「何!!?」



「熊野のナカヒラ様が挙兵し、帝に加勢しているそうです!」


「関白様と交戦しておるのか?」


「御意!」


胸騒ぎがしたヤスマサ・・


「敵の大将を呼べ!直ちに、降伏に応ずると伝えよ!

 我が軍勢は、即刻、都に戻りて、大納言様をお守りするのだ!」


「ははーーー!」


ヤスマサの軍は、降伏を受け入れ、都へと引き返した。

命令を伝えたヤスマサは単独で早馬に乗り、都へ急ぐことにした。







関白の私邸を攻めていたナカヒラ・・


「親方様!」

邸内を探査していた部下が戻ってくる。


「どうした?」


「関白の邸内、もぬけの空となっております!」


「関白はどうなったのじゃ?!」


「全く、姿がありませぬ!」



更に伝令が到着する。

「親方様!大変です!!」


「どうした!?」


「頼光の軍勢10万が、近江より引き返してきております!!」


「何?!

 東方へ向かったのではないのか?」


「主力は近江にて潜んでいたと思われます!!」


「おのれ・・・・頼光!謀ったな!!!

 帝の命が危ない!宮中へ遣いをまわすのじゃ!」




  「わーーーーーーーー」

遠くで大軍勢の雄たけびがあがる・・・


「親方様!頼光の軍勢が攻めてまいりました!

 五条大橋にて我が軍と応戦中です!」


「く!!こんなに早く戻ってくるとは・・・」



頼光の策略により、総崩れとなったナカヒラ軍は、都を逃げ、熊野へと引き返した。

帝は勅旨として全国の地方豪族へ挙兵するように促したが、頼光の計らいで全て寝返られ、

帝の味方となる軍勢はナカヒラのみとなった・・・


関白は、この機に新たな帝を誕生させ、先の帝を討つ勅命を出させた。

情勢は、一気に関白の優勢となり、中立を決めていた大納言も関白側へと傾く。






已む無く、都を落ちる幼い帝と茨木の君・・・


「ナカヒラ殿!」



「帝・・・我らと一緒に、熊野の方へお逃げ下さい!

 生き延びれば、必ずや好機はあります!」



ナカヒラの軍勢と共に熊野へと落ちる帝・・




 ・

 ・

 ・

 ・

「そんな・・・全て、関白の陰謀だったなんて・・・」

翔子ちゃんは驚きを隠せなかった。


「我らは、まんまと、術中にはまったのじゃ・・」



「他の豪族達は、どうしたのですか?」



「皆・・どちらが優勢かを見極めようとしておったのじゃ・・・


この当時は、勝つか負けるかで、生死が決まった・・


どちらに付くのか、決めてはいても、いざ、その時になれば優位な方へ付く・・」




「殆どが関白側に付いたのですか?」


「さよう・・・」



「でも・・都を落ちても・・また建て直せば・・」


「一縷の望みを託して、皆、熊野へ身を寄せたのじゃ・・」




「翔子・・・」


「どうしたのですか?お師匠様!」


「何だか、頭が痛とうなってきた・・」

頭を手で押さえる伊吹丸・・・


修行の疲れでも出たのだろうか・・・


「無理をなさらないで下さい・・」


「うむ・・」






「ここからの話は・・



ワシも思い出しとうない・・・


遠い記憶の奥底に仕舞い込んでいた・・・



自分でも、何があったのか良く覚えておらんのじゃ・・」



「お師匠様・・・」




「じゃが・・・



その記憶の糸を手繰り寄せ・・




真実を話さねばならぬ・・・






話さねばなるまい・・



そして、思い出そう・・



あの後の出来事を・・・」




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