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霊感ケータイ  作者: リッキー
少年兵 サム
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5.夢の果てで・・

その夜・・僕は夢を見た。



争いを好んだり、人を(あや)めたりした者が落ちる「修羅」。そこで繰り返される醜い争い。


そこでの、翔子ちゃんの生死を賭けた修行。


少年兵との出会い。


ジャングルの中をさ迷う翔子ちゃんと少年兵の姿があった。


戦火に飛び込んでいく幼い兵士達・・


上官との会話。


翔子ちゃんの目の前で、爆撃され、無残に死んでいく一人の少年兵・・



彼が・・サムなのだろうか?・・



少年兵の残酷な現実、無残な運命。


彼女の痛切な想いが僕に伝わってくる。







僕に、会いに来たのは



それに、耐えきれなかったから?・・







小さな一人の少女の心に止めておくには・・



あまりにも・・




  悲しく




  辛く




  残酷で




  恐ろしい





出来事だった・・





僕は、はっと目覚めた。

時刻は夜中の2時を廻っている・・


僕の頬を涙の伝った跡がある・・

今まで、翔子ちゃんのイメージが夢となって現れていたのだ・・



「翔子ちゃん!」



僕は翔子ちゃんが、あんなに苦しんでいるとは思っていなかった・・




僕が、



  「慰める」



とか



  「守る」




・・と言っても・・



それは表面的な「言葉」に過ぎない・・




翔子ちゃんの「想い」を本当に受け止めてはいなかった・・・



かえって、



翔子ちゃんを




傷つけているのではないか?




そっけない態度をしていたのではないか?










もう、霊界に帰ってしまったのだろうか?



僕は、霊感ケータイを作動させ、カメラで翔子ちゃんの姿を探した。



必死で辺りを見回す。



部屋の四隅、ベットの脇、勉強机・・







僕の寝ている直ぐ隣に、翔子ちゃんが僕に寄り添うように寝ていた。



可愛い寝顔・・



涙が頬を伝っている・・・




少し、震えているようだった・・



まだ、幼い女の子に・・



僕は何もしてやれないのか・・?





「ごめん・・・」




僕は、そうつぶやいて、翔子ちゃんを抱き寄せた。


わずかに、翔子ちゃんを感じた・・





霊感ケータイで翔子ちゃんに電話をする。


「翔子ちゃん・・」




「お兄ちゃん・・」

寝ぼけ眼の翔子ちゃんが写っている。



「見えたよ・・サムとの想い出が・・」






泣きながら、僕にしがみつく翔子ちゃん・・



「怖かったよ・・お兄ちゃん・・」






「うん・・怖かったね・・」




「悲しかった・・」


翔子ちゃんの小さな手が、僕の背中をにぎりしめる・・





「うん・・悲しかったね・・」




翔子ちゃんの髪を、なでる・・



「辛かったよ・・・」




「辛かったね!・・ごめんよ・・・」





僕は自分の力の無さを、痛感した・・



僕が守るんではなく・・逆に守られている・・



僕がしっかりしないから、翔子ちゃんや皆を危険な目に遭わせている・・




涙が出る・・





強く、抱きしめる・・



「ああ・・





お兄ちゃん・・






暖かい・・」






僕と、翔子ちゃんは、その晩、ずっと抱き合った。




恋人とか兄妹ではなく・・



生きている者、死んでいる者の境界も無く・・



お互いに、お互いを想い、無事を確かめ合い、これからの無事を願った。



魂と魂が一つになった・・そんな感じがした。












朝・・・



すっきりと目が覚めた。



霊感ケータイにメールが入っている。




 また来るね!  翔子











学校で・・


先生のマンションは、今までの市営住宅と学校の反対側にあるので、「彼女」と一緒に登校する機会がなくなってしまった。

その点は、ちょっと寂しい気もする。


9月に入って一週間もすると、夏休み気分から抜けきれて、学校の生活にも慣れ始める。

気がつけば2学期の中間試験も迫っていた。


生徒達の間では、試験にここが出るのでは・・とか、昨日は何時まで勉強していたとか・・話題は試験が中心になっている。




僕はといえば・・


昨晩の翔子ちゃんの事で頭がいっぱいだった・・



霊感ケータイで会話していて、いつの間にか気が遠くなっていたらしく、

半分は覚えていない。


いつもならば、疲労してしまうのだが、何故だかスッキリしていたのも不思議だった・・



「ヒロシくん、おはよう!!」

登校して下駄箱で靴を履き替えていると、「彼女」に呼び止められた。

眼鏡をして、ポニーテール姿。



「あ・・望月さん・・おはよう・・」


あいさつをしたのだけれど、急に、僕のほうを不思議そうに眺める。


「ど・・どうしたの?」


「ん~?」

僕の目の前で、見つめる彼女・・


いきなり、眼鏡を外して、髪止を取る・・

カワイイバージョンの彼女で、じっと見つめられる。



少し、眉をしかめている・・


ひょっとして、昨日の翔子ちゃんの事がバレてる?

「浮気者」とか言われるんだろうか?冷や汗が出てきた・・


「何でしょうか?」

苦笑いする僕を、カワイイ彼女が見つめる。


「ちょっと大人になった?・・・」

まじまじと見つめる彼女がポツリと言う。


「え?」


急に笑顔になる。


やっぱり、カワイイ・・


翔子ちゃんもカワイイが、「彼女」はもっとカワイイ・・



「ヒロシくん!」


「ハイ!」


「私も、今度・・慰めてね!」


にっこりとして、眼鏡と髪止をつけ、

自分の教室へ歩いていった「彼女」だった・・・













あの世・・お花畑


翔子ちゃんと響子さん




「何だか、楽しそうね!」



「はい。お兄ちゃんに会って慰めてもらいました!」



「良かったわね!」



「ああ・・・なんだかエネルギーをもらったみたいデス!」




「そう・・また修行に励めるわね~」





「うん!  お兄ちゃんと一緒に寝たんです!」



「え?」



「あ~楽しかったな~一晩中お兄ちゃんが抱きしめてくれたんです・・」



「しょ・・翔子ちゃん・・?」



「お兄ちゃん、『いつでも慰めてあげる』って・・キャー!!!」




「あなたねえ・・」




「あ、何にも無かったですよ!」



「あ・・当たり前です!!」




「でも、嬉しかったな~・・あんなに傍で見れるなんて、もっと早く行けばよかったな~・・」



「!・・・」



「ひょっとして『近親相 ピー 』なんてことも~?でも、血の繋がってない兄妹だし・・それもアリ??」



「!!・・」




「どうしよ~・・早く、お兄ちゃん、『こっち』来ないかな~・・」



「!!!」





  ピシャーン!




雷が落ちた・・・




  ドドーーーーン!!!!




雷に打たれた翔子ちゃん・・



「お・・お母様・・いつのまに・・、こんな技を・・」



「私も戦う時もあると思って、密かに修行してました・・」



「ごめんなさい・・・もう・・しません・・・(たぶん・・)」



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