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霊感ケータイ  作者: リッキー
少年兵 サム
71/450

1.修羅

ブォー・・ブフォー


「ワー・・・・・」


ホラ貝の音とともに、一斉に刀を持った侍や、槍を持った足軽、馬にまたがった武士が草原を駆け巡る・・


草原の先に、浅い川原が広がる。

川原の対岸に、旗が上がる。


パーン  パーン


銃声が轟く・・数名の足軽が倒れ、馬に乗った武士が撃ち落される・・

ひるまず、敵陣に走っていく軍勢・・


銃を構えていた足軽が、槍で突かれる・・胸を突かれた者・・首を突かれた者・・返り血を浴びる足軽や侍達・・

手や内臓、首が、血と共に飛び散る・・


バタバタと倒れていく双方の兵士達・・

川原は、その血で赤く染まっていった・・




ここは、修羅の世界・・この世で人を殺め(あやめ)たり、争いを好む人たちが来る世界だという・・


鬼の教官に案内されて、翔子ちゃんとお父さんが見学に来ていた。




翔子ちゃんは、その光景に耐え切れず、目を手で覆っている・・

お父さんは、直視できない・・



鬼が、翔子ちゃん達に向かって、話し出す・・


「これが、修羅だ・・。



 前世で戦いに明け暮れた者達が、集まる場所・・



 互いで互いを傷つけあい、命を奪う・・



 最後の一人になるまで戦い続ける・・」




「最後の一人?」


お父さんが、聞き返す。



「最後の一人になった時、ワシと勝負することができるのだ・・」



「あなたと?」



「それで、勝つことができれば、悟りを開くことができる・・


 ワシと同じ『鬼』になることができるのだ・・


 まあ、大半は、負けるがな・・」



「それ以外の人たちは?」



「ワシとの勝負が終わるまで、もがき苦しむ・・


 それまで、死の苦痛を味わうのだ・・



 そして、また、生き返り、戦いが始まる・・」





まだまだ続いている、両軍の激闘・・・

足軽の数が減り、刀を持った侍同士の死闘が、辺りで展開されている。



「でも、どちらかの軍勢が勝てば、終わるのではないですか?」


お父さんが聞いている・・



「フフ・・ そう思うか・・ 見ているが良い・・」


川原で激戦が繰り広げられている最中、遠くの草原から新手の軍勢の姿が現れた。


形勢が変わったようだ・・


川原に横たわる屍骸の上を、騎馬隊が勢い良く駆け抜けて行った。


馬上から敵の侍を槍で突く騎馬隊。

刀で応戦していた侍が逃げ出す。


そのまま、川原の対岸の林へと消えていく。


旗の周りに煙が上がる。敵陣が総崩れとなっている。


「ワー」


本陣にて騒ぎが起こる。




逃げ出してくる侍や足軽。それを待ち構えて槍で突く。

しばしの争いの後、シーンと静まり返る。


騎馬隊が、林から川原へと威勢よく現れる。

先頭の武士が一本の槍を高々と掲げている。槍の先端に、今、切り落とされた武将の首が翳されていた・・


背後の林では、残党狩りが始まっている。


草原の彼方にある味方の本陣に戻ってきた騎馬隊。

戦果の報告をしている。

勝利に沸き立つ軍勢。


宴の酒盛りが始まる。


その宴会の最中、騒ぎが起こる。



騒ぎの理由は


どっちが戦果を上げた、とか褒美や手柄の横取りなど、ささいなものだった・・


が、少しずつ、騒ぎが大きくなっていく。



次第に二手に別れ、小競り合いとなる。

味方だった軍勢が、敵味方に割れて、再び争いとなる・・・



「いつも見ているが、この場面が一番醜い・・・

必ず、こうなってしまうのだ・・」

鬼がポツリともらす・・



  「元は味方同士だったのに・・」

お父さんが、その様子を嘆く・・


「人間同士の争いのきっかけなぞ、皆そんなものだ・・


 共通の敵があって結束していたものは、

 敵が無くなれば、自分たちで抗争を始める・・

 肉親であろうと、仲間内であろうと・・

 憎しみは争いを呼び、争いは憎しみを生む・・」


鬼が宙を悲しい目でにらみながら、語っている・・



「そこの娘よ!・・」



「はい・・」

翔子ちゃんが答える・・


「お前が『強くなりたい』と望むのは、ああいった争いに自分の身を投じることだ・・」



「・・・・」

翔子ちゃんはしばらく考えていた・・



「・・・・


 私は、

 守りたい人が居るんです・・」



「ほう・・・」

鬼が関心している・・

だが、争いの様子を見ながら・・



「あの、者達が戦う理由は、はじめはそうだった・・・


 家族を守るため、愛する者を守るため・・

 家を、国を守るため・・

 自分の信じるものを守るため・・」


 「私は・・」

翔子ちゃんが反論する。



「『違う』か・・・何人・・ワシに、そう言ったか・・・


 いや・・悪かった!

 『強く』なって弱いものを守るのは、大いに結構だ!

 ワシは止めはしない・・!


 ただ・・戦いに明け暮れ、我を忘れてしまったら・・

 行き先は、『ここ』だという事を覚えておけ!」


先ほどの軍勢が二手に別れ、争いを続けている・・



ヒューーーーーン・・・・    ドーーーーーーン!!


轟音と共に爆風が吹き荒れる・・

それまで、争いをしていた軍勢が跡形もなく、葬りさられていた・・


キャラ・キャラ・キャラ・・・


キャタピラの音がこちらにせまってくる・・

重装甲の戦車が草原の向こうの林から姿を現す。


パパパパ パパパパ


自動小銃の音がコダマする。

無数の兵士が、川原の向こう側から向かってくる・・



「近代兵器のお出ましか・・・」




  「え?あんな物まで?」

お父さんが聞いている・・



「ここでは、兵器は自分の好きなものを選んでいい・・自分の時代で使い慣れたものを選べる・・


自動で動く物意外の『道具』ならば、どんなものでも揃っている・・」







カッ・・・  バ  バ  バ・・・・


   ドドーーーーーン


更なる爆音が轟く・・・爆風が止むと、今まで動いていた戦車が残骸と化していた。

兵士も影も形もない、いや・・川原や林でさえも吹き飛び、荒れ野と化している・・



「大量破壊兵器か・・・」



ヒュー・・・ン



上空に、無数の機影が飛来し、空中戦を展開している。





「力を得たものは、より強力な力を得たがるものだ・・

 強い力を持てば、それを使いたくなるものだ・・

 より多大な犠牲を出していく・・」




戦闘機を見ながら、鬼が話を続ける・・



「機械に頼っているうちは、本当に強くはなれない・・

 少し、遊んでやろうか!」



「え?」


そう言うやいなや、姿が急に見えなくなった・・




ドーン!!


上空で、戦闘機が爆発する。

そちらを、見上げる二人・・


鬼が、上空にテレポートし、戦闘機を次々に撃破していく・・

パラシュートで脱出したパイロットを一ひねりで潰している。



瞬く間に、上空の戦闘機の残骸が辺りに散っていく・・




「強い・・! 鬼って・・最終兵器なのか・・?」

お父さんがポツリと言う・・



「うん・・あの『人』に鍛えられるのは光栄なのかも・・」





「このラウンドは終了した・・」

上空にいた鬼がテレポートして二人の前に姿を現す。


「ラウンド?」


「見るがいい・・」


数分もたたないうちに、林や川原が原型のままに姿を取り戻している・・


辺りの亡骸が人間の姿に復活していく・・・

生も死も無く、互いに殺戮を繰り返すだけの「キル・マシーン」・・・


これが永遠に繰り返されていくという・・・



いや・・人間界でも、同じことが繰り返されているだけのような気もする。


「ワシから見れば、人間の世界なぞ、皆、あの修羅場の一角のようなものだ・・」


鬼がそう言って笑ってみている・・


そんな気がしている二人だった・・










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