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霊感ケータイ  作者: リッキー
いざ!霊視能力
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六. いざ!霊視能力

「さて、


 腹ごしらえも終わったし、


 行ってみましょ~か!」



やる気まんまんの彼女。



何処へ行こうというのだろうか・・


僕はこのまま彼女に振り回される運命なのだろうか・・


でも、母の話が聞けるかもしれないし、付いていってもいいカモ・・



 可愛いし・・



レジで勘定を済ませて店を出る。


 「ごちそ~様~」


 「どういたしまして」


おごってってのは、そちらから言い出したのだし、こっちは例の覗きの弱みもあるわけで・・


仕方ないと諦めるしかあるまい。



そんな事も裏腹に、


すたすたと街路を歩いていく彼女を追いかける。



先程の話だと、何やら目的地があるらしいのだが・・・

でも、


ちょっと様子が変である。



人とすれ違うたびに、その廻りに何かが居るのか、避けているのである。



「人が倍に見える・・」



途方に暮れた表情で、ポツリと呟いた(つぶやいた)彼女。


聞けば、一人の人には守護霊やらが何体かついているので、数倍の数の人やら霊やらでわけがわからなくなるそうだ。


更に地縛霊やら浮遊霊など入れればもっとらしい・・



「いつもそうなの?」



「今日は、特別!


 ヒロシくんとのデートだし・・」




はあ、


デートですか・・



そればかりではなさそうなのですが・・


「いつもは、眼鏡してるでしょ?


 あれは伊達じゃないのよ」



「伊達じゃない?」



学校では冴えない雰囲気を更に倍増させているド近眼メガネ・・


除霊の儀式の時は、眼鏡を外してもチャンと周りが見えていた。


今日のデート(らしき密会)でも、ずっと眼鏡を外していても、全然不自由の無い仕草をしている。


伊達メガネをあえてする必要なんてあるのだろうかと少し疑問に思っていた。



「あの眼鏡は、『見える能力』を弱めて、『見えなくする』ためにかけてるの・・」



あの眼鏡は、彼女の霊力を弱める意味があったらしい・・


それで眼鏡を外したときにたまたま僕の母を見かけたというわけだ・・



学校では、霊力を弱めるために、あえて掛けていた伊達メガネ。


メガネを外せば、こんなに可愛いのに・・


ついでに、一つ聞いてみた。




「じゃあ、ポニーテールは?」


「あれは、霊力を弱めるためのもの・・」


女の子の髪の毛には、霊的な能力が宿っているという。


髪を束ねる「髪止め」は、強すぎる霊力を封印するためのアイテムだそうだ。



やたら霊力があると、そこらの困っている霊が助けを求めて来るらしい。


それにいちいち付き合っていると、こちらのほうが参ってしまうということだ。



なるほど・・


あの冴えないスタイルには理由があったわけだ。




じゃあ、


今日は特別ってのはどういう意味なんだろう?


考えれば考えるほど謎なのだ・・・


喫茶店のある街路から、少し大きな通り沿いの歩道に出た。


道路には車がひっきりなしに行き交っている。


向こう側の歩道の方を指差して彼女が言った。



「ほら、あのほこら・・」


「祠?どこ?」



見渡しても、どこにも見当たらない。


「1年前にビルの建設で移築されたらしいよ」


「1年前・・


 移築・・


 あれ?」



歩道に面する植樹帯の中に、小さな石碑みたいなのがあった・・


丁度ビルのまん前にある。


新しく御影石で作られた石碑・・



「あれは、何か封印してあったみたいね・・」



「封印ですか・・


 悪霊とか眠ってたとか?」


「ぴんぽーん」



当たったらしい。


「それをお払いに来たの?」



「いえ、


 今日はこの先の十字路・・」



最近、その十字路で事故が多発している。


死亡事故も起きているのだ。


大抵は、こういった所に事故にあった「地縛霊」が居て、波長が合った人たちを引きずり込むのだという・・


その地縛霊の正体を探りに来たのだという。


いわゆる「下見」ですか・・・


何だろう?



携帯の表示画面を良く見てみる。


良く見ると、人影の様な???


「へ?


 何?


 これ・・・・」



シャッターを切らないでカメラの画像を見ていると、その影が少しずつうごめいているのだ。


カメラから眼をそらして、彼女のほうを見ても、何も無い・・



彼女がこっちを見て微笑んでいるだけ・・・



もう一度カメラを覗くと・・


確かに居る!!


この世の者とは思えない無表情・・だが、その冷たい視線は確かにこちらに向けられている。



背筋に寒気が走った・・・


「そのケータイはね・・


 霊視能力もあるんだよ」



霊感が全く無くても、


 霊が見える、


 写せる。


そういうケータイなのだ。


だから「霊感ケータイ」。


彼女の眼鏡とは逆の作用をするそうだ。


この携帯電話があれば、霊とコンタクトをとることも、見ることもできる。


何万個に一個の割合で出てくるのだそうだが、普通の携帯電話としては使えない。


一般に故障とみなされ、捨てられる運命にあるそうだ。


この間の、疲れを覚えたのは「通話」の機能を使ったときのみ・・


こういった写真機能や画像機能では「通話」は発生しないため、疲れないとのこと・・



「だから、気にせずに、


 どんどん見てみてね」


彼女の言葉通りに、恐る恐る携帯のカメラで辺りを見てみる。



OL風の女の人が一人、さっそうと歩いている・・


その人の廻りに無数の光や影が付きまとっているのが見える。



 「へ?」



女の人の直ぐ後ろの中空に、ボウッと浮かび上がる人影らしきモノ・・


1体だけではない・・無数の光が、その女の人に付いているのだ。



「あの人の守護霊達よ・・


 何か最近、職場の人達と上手くいってないみたいね・・


 周りの霊が心配してるわ・・」


彼女が説明を加えている。


彼女は携帯無しでも、霊が見えるのだ・・・



「そんな事が分かるの?」


「うん。守護霊とか見れば、その人の抱えてる問題が、だいたいわかるよ」



よくTVで霊視したり、占いをして、その人の生い立ちや現状の様子を言い当ててしまう番組があるが、そんな事もた易くできてしまうのだろうか??


表向きには意気揚々と颯爽と歩いている人でも、悩みがあるのか・・・


それが瞬時に分かってしまうなんて・・・ 




道路の向こう側に何人かの人達が会話をしながら歩いている。


そこを見ると、その人達だけでなく、やはり後ろに「守護霊」らしき霊たちが重なり合っているのが見えた。


数人の人達の後ろにまとわりついている無数の霊達・・


確かに、彼女の言った通り、「倍に見える」のだ・・・



「ほら、あそこ!」


彼女が上空を指さした。その方向を見ると・・・



 「何?!!


 あれ・・」


ヒラヒラとした長い白い着物を纏った人影らしきモノが漂っている。



「浮遊霊だよ。


 人に憑かないで単体で浮遊している霊も居るんだよ。」


恐怖心も微塵も無い様子で説明を加える彼女。


「襲って来ないの???」


恐る恐る彼女に聞いてみる。



「大丈夫。


 別に危害も加えてこないよ。


 その霊と波長が合わない限りは、赤の他人と同じだよ。」



「波長が合う??」



「あなたのお母さんだって、亡くなってからは見えなかったでしょう?


 ずっと側に居たとしても、波長が合わなければ、見えない。


 身内だとしても、波長が合う事は滅多にないのよ。」



確かに・・母に会いたいとずっと願っていたこの5年間だったが、一回とて、その姿らしきものを見る事は出来なかった。


家族だとしても波長が合う事は極稀だと言う・・・・



「波長が合えば、見る事ができるの?」



「うん。


 その人に対する想いが強ければね・・


 生前に想いを寄せてたとか、よっぽど恨みがあったとか・・」



「そうか・・」


家族だった母とは、波長の合わない「赤の他人」に近い存在だったなんて・・・・ 


そんな僕を宥める(なだめる)彼女。


「うふふ。


 波長さえ合えば、そのうちに会えるよ。


 霊感ケータイでも、見る事はできるしね。」


「そうだね・・」


彼女の言葉で、少し気を落ち着かせ、携帯で更に周りを見渡していた。




でも・・・・


改めて、よく見れば、


世の中、


霊だらけではないか・・



背筋に寒気が走るどころか、これだけ霊だらけだと、怖いとかそういう問題でもない。


いつの間にか、興味深い映像で夢中になっていた。


これが本当の世界なのだろうか?



「こんなの毎日、見てるの?」



「うん、


 こんがらがるでしょ?


 だから眼鏡をしてるの・・」



「確かに・・」



ごちゃごちゃの世界は、複雑で見るに耐えない。


普通の世界は、本当にシンプルだ。


眼に見える世界のほうがよほど居心地がいい。



「中にはね~、


 出血で、


 見るも無残な霊もいるんだよ~。」




普通の人たちならいざ知らず、さまよう落ち武者の霊とかいるんだろうな・・


悪霊とかも居るんだろうか、どんな姿をしているのだろう?




母の姿も見てみたいものだ。



今は近くに居ないと言っていたが、傍に居るときに一目会ってみたい。


もう5年も前のことだ。


一緒に何をしたかという思い出は残っているけれど、実際に生きていた姿の記憶は少しずつ薄れてきていた・・


「さて、


 ここが目的の十字路~!」



どうやら、目的地に到着したらしい。


意気揚々と宣言した彼女。ここでの霊視を開始しようと言うのだろうか?


だが、そう言ったとたん、彼女の動きが止まった。



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