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霊感ケータイ  作者: リッキー
お盆の夜に
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14.送り火

その時・・


トゥルルルル トゥルルルル


僕の家の電話が鳴った。




何だろう?


僕が電話に出る。


「はい・・」



「あ、ヒロシくん~?」


彼女だ。お盆で忙しいということだったが・・


「ねぇ、これから、ウチに来ない?」


これから?デートですか??



「どうしたの?」


「花火でもやろうと思って・・」


花火ですか・・小学校以来だな・・



「先生も来てるんでしょ?皆、誘っておいでよ!千佳ちゃんも誘ったんだ!」



何で、先生がウチに居ることが分かったんだろう?


翔子ちゃん経由か、僕のお母さん経由だろうか?・・

突然の事でも、あまり驚かなくなってしまった・・


千佳ちゃんまで誘ったのだったら、メンバーが多いほうが楽しいだろう。




「うん・・行くよ。」


「じゃあ、30分後ね!」


ガチャン


一方的に電話を切られてしまった。

父と先生に、花火の事を話す。


「望月さんだけど、これから花火しないかって・・」


目を合わせる父と先生。


「行きますか・・」


「はい!」



う~ん・・この二人、急に仲が良くなったというか、ノリが一緒になったな・・

活き活きしてる?

言わば、新婚カップルのような??


まあ、僕も彼女と一緒の時は、嬉しいけれど・・同じようなものなのか?




食事の後片付けが済んで、3人でお寺へと向かう。

もうすっかり、夕日も落ち、辺りは暗くなっている。


お盆が終わる頃は、「つるべ落とし」で、日暮れが日に日に早くなっているのに気づく。

夜風は、涼しくなり、秋ももうすぐそこだ・・




橋から眺めると、水面に送り火の灯籠とうろうが無数に流れているのが見えた。



もう・・帰るのか・・



そう思ったら、お母さんが無性に恋しくなった。


「ちょっと、先に行っててくれる?」


「ああ・・」


僕は、父達と別れて、後から追っていくと告げる。

二人きりになれる時間を作るのに気を利かせたのと、もう一つ目的があった。


道路から離れて、人目のつかない木陰に潜む。

胸元から、アレを取り出す。



  霊感ケータイ



先ほど、先生から返還してもらった霊感ケータイを握り締める。



「お母さん・・居るんでしょ?」



側にお母さんが居るような、そんな気がしたのだ。


チャラララ チャラララ


霊感ケータイが鳴り始める。



スイッチを入れた。メールが表示されている。



 ヒロシ ヒサシブリネ



久しぶりの母との会話(?)だった。

悪霊との対決以来だ。





「お母さん・・雨宮先生の事・・」



アノヒトガ、アナタノ アタラシイ オカアサンヨ!



「お父さんは、ずっとお母さんの事が忘れられなかったって言ってたのに・・」



イマデモ ワタシノコトヲ オモッテクレテルワ



「じゃあ・・」


ひょっとして、僕の事を考えて一緒になる決意をしたのではないかと、心配になった・・

僕の為に、二人が考え直したというのなら、僕はいったい・・

そう思った途端、メッセージが入る。


 ヒロシ?



アナタ アノフタリガ 



アナタノ タメニ イッショニナルンジャナイカッテ オモッテナイ?




図星だ。お母さんには僕の考えが筒抜けのようだ。


「うん・・」


ソレモ アルカモ シレナイケド・・・



アノフタリハ ジブンタチノ イシデ イッショニナルッテ キメタノヨ!



「自分たちで?」



オトオサンノ プロポーズ・・ ステキダッタワ・・



プロポーズまでしたらしい・・そんなに好き合っていたのか・・

では、お母さんや翔子ちゃん、お父さんは・・




アタラシイ セイカツガ ハジマルノヨ



「新しい生活・・」



今まで、生活していく中で、僕もお父さんも、母の事が忘れられなかった。

先生も、翔子ちゃんの闘病生活で、他の事は考えられなかっただろう。


それが急に、お互いの亡くした人達を忘れて、新たな生活をスタートすることが出来るのだろうか?


いや・・新しい生活を始めることで、お互いの想って来た人達を忘れなければならないのではないだろうか?


父が僕に・・


   ・・・母さんの事、忘れなければならないのかな・・・


って聞いていた事を思い出す・・父は、その事を恐れていたのではないか?



お母さんや翔子ちゃん、翔子ちゃんのお父さんを忘れる事なんて、できやしない!




「それは・・いつか・・


お母さんの事を忘れる事になるんじゃ・・」





ソンナコトナイヨ




ワタシタチハ カゾクダモノ





「家族?」



ショウコチャン ヤ



ショウコチャンノオトウサン モ



ワタシタチノ カゾクニ ナルノヨ。





「翔子ちゃんやお父さんも・・」



ソウヨ!

スバラシイジャナイ!!




ワタシタチハ


 アナタタチヲ


 ミマモッテイクワ




アナタハ


 ヒトリデハナイ・・



ミナチャンヤ


 オトオサン、


センセイ ガ 



アナタヲミマモッテイル。



ソシテ



ワタシヤ


 ショウコチャン


 オトウサン モ



 アナタヲ イツモ


 ミマモッテイマス 




アナタノ ウシロニハ


 タクサンノ ヒトタチガ


 ツイテイルノヨ。


  

ダカラ・・・



ドンナコトニモ


チョウセンシテミナサイ!



「お母さん・・」




ーーー僕は一人じゃないーーー



僕は、勉強も出来ないし、運動も出来ない・・部長として情けないくらいダメなヤツだ・・


でも・・こんな僕でも見守ってくれている人がいる・・



いつも想ってくれている人がいる・・


僕が、沢山の人に支えられて、今があるんだって思うと・・


何だか、幸せな・・嬉しい・・感情でいっぱいになった。



千佳ちゃんも、先生も、「守ってね!」って言ってくれた。



僕も頼りにされている。



僕には「自信」なんてない。



でも・・・



僕は、自分に出来ることを、精一杯することが・・


僕を見守ってくれている人達に対する・・せめてものお返しなんだって・・思った。





「僕・・皆の所へ行くよ!」



彼女のお寺へと、走り出す。







お寺



お寺の境内で、皆がそろって、楽しそうに花火をしている。

辺りに広がった煙に花火の明かりが照り返している。




「あ・・ヒロシくん!遅いよ~!!」




彼女がいる・・

嬉しそうに僕を見ている・・

僕の大切な彼女・・






「ほら、ヒロシくんの分、残しといたよ!」



千佳ちゃん・・

皆を思いやる優しい友達・・

大切な部員・・





「おお!このネズミ花火をやってみるかぁ~?」



源さん・・

千佳ちゃんのお爺さん・・

僕の木工の先生・・





「僕が、火をつけましょう!」



お父さん・・

僕のかけがえの無い家族・・






「気をつけて下さいね」



雨宮先生・・

新しいお母さん・・・





「フフフ 皆、楽しんでおりますな・・」



彼女のお父さん・・

頼もしいお寺の住職・・


遠く彼女の「お母様」も僕達をサポートしている・・




そして・・



お母さん、



翔子ちゃん、



翔子ちゃんのお父さん・・




見えないけれど、そこに居る。

僕達を見守っている存在・・






恋人が居て・・



家族が居て・・



友達が居て・・



仲間が居て・・




守ってくれる人(?)が居て・・




そして・・





僕の大切なもの・・



守るもの・・



かけがえの無いもの・・



それが、ここにある!!






「みんな~!記念写真、撮ろうよ!!」


僕が提案する。


「いいね~。」


「うん、撮ろう。撮ろう!」


「あ~、もっといい服着てくれば良かった~。」


「いいじゃない、その格好も可愛いよ!」




僕は、霊感ケータイを庭石の上にセットした。

タイマーをセットする・・





3・・2・・1・・・ パシャ!





「ヒロシくん、後でメールで送ってね!」

千佳ちゃんがせがむ・・



「どうしようかな~・・」


「え~・・自分だけずる~い!」


どうしよう・・みんな写ってるんだから・・驚くかな・・



他の人が見れば「心霊写真」なんだもん・・



この世に生きる僕の家族や友達と共に、

あの世のお母さんや、翔子ちゃん、お父さんも写っていた・・


みんな、楽しそうな顔をしていた・・


満面の笑顔・・

僕達にとって、最高に幸せな時なんだって思った・・




チャラララ チャラララ



霊感ケータイから、メールが入る・・



ヒロシ ワタシタチ・・ソロソロ カエルワ


オニイチャン マタネ!


ヒロシクン オタガイ ガンバロウ!



「うん…また会う日まで…」


お盆も終わりを告げる・・








そして・・・




僕たちの知らないうちに




事件は進んでいた・・
















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