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霊感ケータイ  作者: リッキー
混沌
448/450

174.儀式の後で・・


自分の部屋に面した縁側から月を見つめている紗代・・

寝床を用意して横にはなったものの、なかなか寝付けなかった。


以前、祖母が亡くなる直前に、痛み止めとして掛けた呪いが、意外にも望月の君の頭の病に効果があった事・・

成功など在りえないと思っていたが、不思議に効き目があった。


望月の君の痛みが取れ、安心した反面、ヤスマサとの間を見せつけられて、嫉妬に似た想いも覚えていた。

望月の君の亡き後は、紗代にヤスマサを頼むとも言われていたが、実際、回復に向かい、その期も伸びてしまったが、それが良かったのか、悪かったのか・・


これから都に蔓延るもののけとの対決も控えているが、

自分の呪いなど、それほど役にも立たないだろう・・


ヤスマサを取り巻く人々は、皆、妖術や剣術に秀でている。

自分が、足手まといのような感じもしていた。



「はぁ・・・」


儀式の疲れもあり、ため息を漏らす紗代・・

月の明かりが、肌に染みるように照らす・・・・



「紗代殿・・」

後ろから声がかかる。


振り返ると、ヤスマサが縁側から続く廊下に立っていた。


「ヤスマサ様・・」


「どうなされた?

 急に居なくなって、皆、心配しましたぞ。」


優しく声をかけてくるヤスマサ。 



「少々・・

 疲れましてございます・・」


呟くように答える紗代・・

まさか、先程から色々と想い悩んでいたなどとは言えなかった・・









「さようでございまするか・・


 確かに、

 大事でありました・・


 あれだけの儀式を行うには、

 身にも心にも負担が掛かりましょう・・」


自分の言葉通りに受け取ったヤスマサが、半分可愛らしく思えた紗代・・

笑みを漏らして、答える。


「それでも、望月様の病に、効果があるとは思いませんでした・・

 私の拙い(つたない)呪いが、お役に立てて光栄に存じております。」


「望月殿は痛みが取れて、大変、気分が良くなったと、

 紗代殿に礼を言えなかったのが心残りだと申しておりました。


 私からも、礼を申しまするぞ。

 誠に、ありがとうござりました!紗代殿!!」


ヤスマサに感謝されて顔を赤らめる紗代。


だが、表情を曇らせる・・



「望月様の元へお戻りになられたほうが、良いかと思われます。

 痛みから解放され、ヤスマサ様と過ごされたい事でありましょう・・


 昼間は、婚礼の儀の段取りも進んだとか・・

 これから、お二人が中心となる家を作りあげて行かねばなりませぬ。」



「そうですな・・・

 だが、紗代殿の元へ行くように薦められたのは、望月殿です・・」


「望月様・・が?」


その意外な言葉に耳を疑った紗代・・



「先程の儀式で、さぞ、心身ともに疲れたでありましょう・・

 その疲れを癒して欲しいとの、望月殿のたっての願いでした。

 紗代殿に感謝の意を表したいと・・」


「私めに・・

 その様な、御心遣いは・・

 無用ですものを・・・」


悲しげに俯き、呟く紗代・・







しばらく考えていたが、ヤスマサの方を向いて、話し出す。





「私は・・


 先ほど・・

 ヤスマサ様を取り囲む御方・・

 正子様や和泉様・・望月様が、明るく接している所を見て、


 なんて、眩しい御方たちだろうと・・

 想ったのです・・・」


「我らが?」



「はい・・

 私には、眩しすぎるのです。


 朗らか(ほがらか)に・・

 汚れの無い・・

 この上ない間柄の・・

 ヤスマサ様の身辺の方々・・


 私など・・

 入り込む隙も無いのだと・・

 改めて感じたのでございます・・」


「紗代殿・・」


紗代の告白に、ジッと見つめるヤスマサ。



「私めは・・

 遠き信濃から出てまいりました身・・


 ヤスマサ様の御側に置いて頂く事こそ、この上ない栄誉・・

 それ以上は望めない身分だと心得ております・・


 望月様からお聞きしたのですが・・

 私めを側室になさるとのお心遣い・・

 お受けして良いものかどうか・・


 それほどまで・・

 私めが

 幸せになって良いのかどうか・・


 少々、恐ろしくなったのでございま・・」



 バッ!!!・・・・ 



「紗代殿!!」


紗代の言葉が終わらないうちに、その体を抱きしめたヤスマサ。


紅白の巫女姿の紗代の身体・・

一瞬、何が起こったのか分からなくなった紗代だった。



「ヤス・・マサ・・様・・」


強く抱きしめられて放心状態の紗代・・

全身の毛穴が開いて、体中の力が抜ける感触を覚えていた・・








「悲しい言葉を投げるのは・・


 自分を他人だと思うのは

 お止めくだされ・・・


 私は・・


 そなたを

 他人とは思えぬのです!


 既に家族と同様に想うております。

 それは、皆も同じ!」



「イクシマ・・


 様・・


 ですか??」







「それも・・

 あるやも知れませぬ・・


 志半ばで、この世を去ったイクシマを憐れみ・・


 せめて

 瓜二つの、紗代殿には・・

 イクシマに出来なかった事をしてやりたいと・・

 心の片隅に想うておるやも知れぬ・・


 だが・・


 それ以上に

 私は、

 紗代殿の事を愛おしいと想うております。


 そなたを

 側室に迎えるは・・

 紛れもない本心・・


 そなたでなければ・・

 務まらぬ事もありまする!」



「私めで・・

 良いのですか?」


ヤスマサの目を真剣に見つめる紗代・・



「紗代殿でなければ・・

 ならぬのです!」


その言葉に、目が潤みだす紗代。



「紗代は・・


 この上ない・・

 幸せ者です!


 私を・・

 この私を・・

 お守りください!」


「無論でござります!」


「ああ・・

 ヤスマサ様!」


ヤスマサの背中に手を回し、力いっぱいに抱き付く紗代・・

ヤスマサも紗代を強く抱き寄せる・・・



「あっ・・・」


歓喜の声を上げる紗代・・


「紗代殿・・」


「ヤス・・


 マサ・・


 様・・」


お互いに見つめ合って、唇を寄せる・・

そのまま、部屋に敷いてある寝床へと赴き・・


月明かりの中・・静かに重なり合う二人・・




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