164.不当辺三角形
病院の屋上・・
先輩と陽子が対峙している。
「お話って・・・」
先輩が切り出す。
「ヒロシ君から・・・
手を引いて欲しいの!!」
「え?」
意外な内容に、一瞬、何を言われたのか、分からなかった・・・・
「そ・・
それは・・
どういう事なんですか・・?」
動揺している先輩。
「プライベートな事で・・
申し訳ないと思っているわ・・
恋愛は、その人の自由・・
他人が干渉する事ではない・・
母親の身勝手な願望だって・・・
我が子の可愛さから、ライバルに手を引いてもらいたいって・・
捉えてもらってもいい!」
「そんな・・・
私に・・
ヒロシ君を
諦めろって・・
言うんですか?
そんなの・・
あんまりです!!」
「あなたが、怒るのも・・・
無理はないわ・・
あの子は・・
美奈子は・・
もう
長くない命なのよ・・
自分でも、
それが分かってしまっているのよ!」
「え?
望月・・
さんの?・・・
命が?
まさか・・
ワラ人形の攻撃で?」
「ええ・・
私でも
治療できる限界にきている・・
酒呑童子との決戦で受けた傷は
どんどん大きくなっている・・
度重なる童子の執拗な攻撃は・・
そこに集中されているのよ・・
美奈子自身の
霊力も落ちている・・・」
「そんな・・
私のせいで・・・
望月さんの寿命を減らしてしまったって事ですか?」
先輩によるワラ人形の攻撃に始まり、これで3回目なのだ・・
それでも、自分の行為だったのは事実だった。
責任を感じる先輩・・
「勘違いしないで!
あなたがワラ人形で攻撃しなかったとしても、
他の誰かに攻撃されてているわ!
それに・・
もともと、美奈子の寿命は、
酒呑童子との対決までだった・・・
それが生きながらえているだけでも
奇跡なのよ。
今の美奈子は・・
この世に、存在しないしないはずの、人間・・」
「望月さんは・・
既に、この世に居ない・・存在?」
「そうよ!
美奈子の代わりとなる・・
ヒロシ君の・・
本当のお嫁さんになるのは・・
あなたかも知れない!
あなたのオーラを見ればわかるわ・・
ヒロシ君と引き合っているのですもの・・・
それは
美奈子もうすうす感じている・・」
「そんな・・
私が
ヒロシ君と
結ばれる運命??」
「それでも、
あえて、
あなたにお願いしたいのよ!
あの子が生きている間だけでも・・
ヒロシ君と
一緒に居させて!!
あの子が
幼い頃から願っていた事を・・
叶えさせてあげたい・・
お願いよ!!!」
陽子が、屋上の床に手を着いて、頭を下げている・・
ヒロシ・・美奈子・・そして先輩
絡み合う3人の運命は・・・
そして・・
再び、彼女の居る病室で・・・
「ヒロシ君・・・
私と
別れて!!!」
「ミナ・・・」