162.許諾
「先輩・・」
僕が先輩の傍に行き、肩を叩く。
「うう・・!
ヒロシ君!!」
僕の腕にしがみついて泣き崩れる先輩・・・
「私・・
私・・・
悔しい!!
悔しいよ!!!」
千佳ちゃんに、良いように言われたのが悔しいのか・・
自分の失態を後悔しているのか・・
先輩の流している涙は、悲しみの感情よりも、悔しさを我慢してのものの印象が強かった。
彼女は何も言えずに見つめているだけだったが・・
「立派よ・・
水島さん・・・」
先輩に向かって、呟くお母様。
「え?」
その言葉に驚く先輩・・
千佳ちゃん以上に、お母様の動向も気になっていた。
「上に立つ者というのは・・
下で働く人達の想いを受け止めなければならない・・・
それが、
自分の責任でなくてもね・・・
私もそうだけど・・
童子への恐怖が一番の懸念材料よ。
それは、水島さんの責任ではないわ・・
でも
その感情をも受け止めなければならないのは、
あなたが一番、頼りにされている証拠なのよ。」
「はい・・
私は
そんな皆の、
期待を裏切ったんです!!」
「そうね・・
それさえ分かれば・・
私も、それ以上は問わないわ・・
私だって・・
昔は
自分勝手な所があった・・・
だから、
響子や
幸子を
犠牲にしてしまった・・」
「お母様・・」
彼女がお母様を見つめる。
「さっきも、
沙希ちゃんに言ったけど・・
あなた達は、いい仲間なのよ。
私に無いモノを、
あなた達は持っている。
それは、
私達の時よりも
大きな力を持っている童子と対抗するには
必要不可欠・・・」
「お母様の時よりも?」
「ええ・・・
水島さん・・
ちょっと良いかしら?」
「私ですか?」
先輩がお母様を見上げて答える。
まだ、涙が頬を伝っていた。
「あなただけと、話がしたいの・・」
お母様が先輩と直々に話があるらしい。
何なのだろう?
重要な話なのだろうか?
他人に聞かれてはまずい話??
そして、先輩とお母様が僕を見ているのに気づいた。
何??
この期に及んで、僕は邪魔者ですか????
「ヒロシ君・・
一緒に居よう!」
彼女が僕を止める・・・・
まぁ、彼女と一緒に居れるのなら、それはそれでいいのだけれど・・・
何か腑に落ちない僕を残して、病室を出て行くお母様と先輩だった。




