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霊感ケータイ  作者: リッキー
疑心暗鬼
434/450

160.お見舞い


病院・・


拓夢くん達が美奈子の入っている病室へと見舞いに来た。


「ミナちゃん、居ますか~?」


恐る恐る部屋に入る千佳ちゃん。

入口の標示にちゃんと名前が書いてあるのだが、念のため呼んでみる。


「はい。ここですよ。」


美奈子の代わりに陽子が答えた。


「お母様もおいででしたか。」


「ええ。寝ているから静かにね・・」


「はい。」


カーテンに囲まれた中にベットがちらっと見えた。機械音も聞こえている。

大掛かりな装置を取り付けて少し心配になった千佳ちゃん。


「ミナちゃんは・・

 具合はどうなんですか?」



「胸は痛むみたいだけど、大分良くなったみたいよ。」


「そうですか・・じゃあ、起こすと悪いから、お土産だけ置いて帰ります。」



その時・・



「千佳ちゃん?」


カーテン越しに声が聞こえた。

酸素マスクを付けているらしく、篭った(こもった)感じの弱々しい声。



「起きたようね。」


「済みません。声が大きかったかしら・・」


陽子に謝る千佳ちゃん。



「構わないわ・・

 入って。」


美奈子が声をかける。

千佳ちゃんがチラッと陽子を見ると、軽く微笑んでうなずいた。


シャッとカーテンを開ける陽子。



「ミナちゃん!・・」


その姿を見て唖然とした。千佳ちゃん達・・

酸素マスクを口に付け、腕から点滴の管が伸び、胸から心電計のコードらしき配線が伸びベットの脇の機械に取り付けられている。


見るからに痛々しい状態の美奈子。

顔も少し青ざめている・・








「大丈夫・・


 なんですか?」


拓夢君が心配そうに陽子に聞くが・・



「だいぶ、良くなったよ・・」

酸素マスクをつけて答える美奈子。


「ミナちゃん・・

 ゴメン・・私が・・」


涙ぐんでいる千佳ちゃん・・・

昨日、美奈子と学校の浄霊をしようと誘った責任を感じていた。


「千佳ちゃんのせいじゃないよ・・」



苦しいながらも微笑んで見せる美奈子。

心配させまいとしてはいるが・・



「あ!それ・・」


沙希ちゃんの持っている袋に目がいく美奈子。



「これ、途中の大判焼き屋さんで買ってきたんですよ~。」


袋を差し出す沙希ちゃん。



「わぁ・・大判焼きだ・・お母様!」


「もう・・あなたはケガ人なんだから、大人しくしてないとでしょ?」


「でも・・」


悲しげな表情になる美奈子。残念な感じだった。


「仕方ないわね・・」


渋々、美奈子に大判焼きを食べるのを許す陽子。

ベットの脇から美奈子が起きるのを手伝う。



「痛っ・・」


上半身を起こすだけだが辛そうな感じの美奈子。

酸素マスクを自分で取って、陽子から大判焼きの袋を手渡された。


「何が、あるのかな・・・」


興味津々で袋の中を覗く。

5、6個の大判焼きが入っていた。


「わぁ!!クリームと餡子だ!!!」


一目見て、大判焼きの種類を当てる美奈子に一同がびっくりしている。



「え?副部長さん・・わかるんですか?」


「うん!

 レーズンが付いてるのがクリームだよ!」


「凄い・・結構、網羅してるんだ・・・」


沙希ちゃんと拓夢君が驚いている。さすが甘党の美奈子・・・

袋から、餡子とクリームの大判焼きを出して、両手で頬張り始める美奈子。



「こら!はしたない!!」


「えへへ!どっちが甘いか、食べ比べですよ。」


陽子が注意するが、軽く流している美奈子。



「ミナちゃん!これも!!」


「何?」


千佳ちゃんが、おもむろに取り出した牛乳瓶・・


「あ!牛乳だ!!

 餡子と一緒に食べると、甘みが倍増するんだよ!!

 覚えていてくれたんだね!!」


「ベスト・マッチだって言ってたもんね!」


満面の笑みを浮かべる美奈子。

千佳ちゃん達にも大判焼きを配って、椅子に座ってもらう陽子。





「でも、このコードって、何を計ってるんですか?」


沙希ちゃんが不思議に思って陽子に聞く。


美奈子のパジャマの胸の辺りから伸びる電線がベットの脇に置いてある機材に差し込まれている。機械からは電子音が鳴り続く。


「心電計だそうよ。美奈子の心拍音が聞こえるのよ。

 昨日、運び込まれた時は弱々しかったわ。今にも止まりそうだった・・」


ワラ人形の攻撃で、かなり弱っていたようだ・・



「そうだったんですか?」


「今は普通になってるみたいだけどね。」



 ピ ・ ピ ・ ピ ・・


と、一定のリズムで快調に鳴っている。



「ふ~ん・・心臓と同じリズムなんだ・・」


興味津々の沙希ちゃん。



「例えば~」


何かを思い付いて、美奈子に耳打ちする沙希ちゃん。




「・・・・」



「え?!」


 ピ・ピ・ピ・ピ・ピ・・


心拍音が早まる。



「あ~!凄い!ちょっと早くなりましたよ!」


沙希ちゃんが喜んでいる。



「え~?何々?何を言ったの?」



「副部長が居ないと、部長さんが寂しそうだって言ったんです。」



「そっか~。美奈ちゃん、相変わらず、ヒロシ君ラブだもんね!」




「そ・・そうだけど・・」


顔が赤くなっている美奈子。



 ピッピッピッピッピッ・・


心拍音が更に早まった。




「あ~!また早くなりましたよ!」


「ヒロシ君の事、考えただけで、鼓動が高まるのか~」


「恋ってやつですね~。」


「ねえ!もっとヒロシ君の事、妄想してみてよ!」


「キャー!!キスしてるトコとか、抱かれてるトコとか~?」


勝手に盛り上がってる千佳ちゃんと沙希ちゃん。



「え~?やだよ~。」



 ピッ!ピッ!ピッ!ピッ!


「凄い!160まで上がってますよ!」


「これ、嘘発見器とかに使えるんじゃないですか?」


「美菜ちゃんの本性をバクロしちゃおうか!」



「もう!いじめないでよ~!!!」


心電計で遊んでいる皆・・







「そう言えば、この部屋は、大丈夫なんですか?

 童子に襲われでもすれば、大変ですが・・」


拓夢君が、陽子に聞いてくる。



「ああ・・大丈夫よ。

 四隅に盛り塩と札を張って置いたわ。」


その言葉通り、病室の角の床に塩が山盛りになり、壁に梵字の書かれた札紙が貼られていた。



「結界・・ですか・・」


呟く拓夢君。


「お母様の結界は本格的なのよ。

 童子の強襲は防げると思うわ。」


補足する美奈子。


「そう言えば、美菜ちゃんの結界を破って来たのよね・・

 昨日の『妖麗』って霊が・・」


「一時的に霊力を強めて来ていたのよ。

 都会で何人もの女子高生を自殺に追い込んでたみたいだから・・

 その女の子達の霊力で、私の結界を破った・・


 私も、あの時は、簡易的な結界しか張らなかったから・・

 油断していた・・」



俯く美奈子。



「そうね・・

 あなたの、その油断も、昨日の被害を大きくしていたのよ。


 最悪の場合は、

 ここにいる千佳ちゃんまで巻き添えにしてしまったかも知れない。」



「はい・・

 拓夢君やヒロシ君が来ていなかったら、

 どうなっていたか・・・」


陽子の指摘に、素直に答える美奈子。





「でも、やっぱり、ゴーストバスター部なんですよ!

 皆の考えていた事は、同じだったわけだし!」


千佳ちゃんがフォローする・・



「そうね!

 私の考えてる事・・

 千佳ちゃんにも、拓夢君にも、ヒロシ君にも分かったんだもんね・・」


美奈子が嬉しそうに答えるが・・



「え~?じゃあ、私は部外者ですか?

 今日の会議の内容も考えてこなかったし・・」



沙希ちゃんが嘆いている。


「いや・・

 沙希ちゃんは、それで良いんだよ!」


フォローする拓夢君・・


「え??だって、私、足手まといみたいじゃない!」



少し、涙目になって訴える沙希ちゃん。



その時・・





「いえ!

 いいのよ。

 沙希ちゃんは、沙希ちゃん・・」


その言葉を投げたのは、陽子だった。



「え?お母様??」


驚く美奈子。


今まで、足手まといと思われる人は、見向きもしなかったし、厳しく指摘もしてきていた。

霊の世界に素人が興味本位で入ってくるのは、危険な行為だと、寄せ付けなかった陽子・・・



「足手まといになる人なんて、

 この世には居ないのよ・・


 その人、その人のお互いの距離を保って、

 役割を見つけて行くのよ。


 さっきも、心拍数で遊んでたけど・・

 この病院に来て、美奈子は一度も笑わなかった・・・


 あなた達が、来て、笑顔になった美奈子を始めてみた・・

 あなた達は、

 私には出来ない・・持ち合わせていないモノを、

 持っているんだって・・

 思ったの・・」



「お母様・・」





「あなた達は、

 いい仲間なのよ。

 沙希ちゃんも自信を持っていいと思うわ。」



「そう・・


 ですか??」


陽子に褒められて、何だか、嬉しくなっている沙希ちゃん・・ 






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