156.先輩
校舎を抜け、校庭を当ても無く走っていた先輩。
僕がようやく追いつき、先輩の手を引いて、ようやく止まる・・・
「先輩・・はぁ・・はぁ・・
待ってください!!
はぁ・・・・」
運動もロクにしていない僕は、息が切れ、話も途切れてしまう・・
振りむく先輩・・・・
「何で・・
何で・・ハァ
追いかけて・・
くるのよ!!!」
息を切らして叫ぶ先輩。
「先輩が・・・
心配・・
だから・・・」
「心配?!!
私より・・
自分の心配をしなさいよ!!!」
「オレの?」
「おめでたい人ね!!!
あなたの・・
部活が・・
崩壊するのよ!!!
私なんか放っておいてよ!!!」
「一人を・・
誰かが、一人になって・・
寂しい想いをしても・・
放っておくような・・・
そんな部活なんて・・・
崩壊してもいいです!!!
一度失敗したからって・・・
寄ってたかって・・
悪口言って・・
傷つけ合うような部活なんて・・
無い方がいい!!!」
「ヒロシ君・・」
「オレは・・・
お母さんが居ない寂しさから・・
ようやく抜け出したんだ!!
やっと・・
仲間だって
想える人達と・・
一緒にやれるって・・・
離れて欲しくないんだ!!!
寂しい思いもさせたくない!!
傷つけ合う事も・・
したくない!!!
もう、
そんなの
こりごりなんだ!!
オレには・・
皆を
守る事が
出来るような
力は無いけど・・・
だからって・・
全ては放り投げたくない!!
自分で
出来る事はしたいんです!!
今・・
オレに
先輩に
出来る事は・・
傍に居て・・
見守る事しか
できないけど・・・
それしか
できないけど・・
諦めないで
欲しいんです!!」
「でも・・・
私は・・・
皆の・・
期待を・・
裏切ってしまった・・・
私の中の・・
闘争本能が・・
むき出しになるのよ!!
我を失ってしまう!
醜い・・
私・・」
「自分を責めちゃダメです!
自分がダメな存在だって・・
自分なんて、
この世で、何の意味もないって・・
思った瞬間・・
自分が無力になる・・
でも・・
無力な人なんて
この世にいやしないんだ!
自分がそう思っているだけなんだ!
一線を引いて、
そこから出れないって思っているのは・・
自分自身なんです!
母を亡くして・・
ずっとオレが落ち込んで・・
ようやくたどり着いた・・
答えなんです。」
「自分・・自身・・・」
僕を見つめる先輩。
「先輩は
頭も良いし・・
キレるし・・
霊力もあるし・・
人も動かせる!
他の人が持っていないモノを持っている。
その力が欲しいって・・
オレは言ったけど・・・
そんな能力なんて・・
どうでもいいんです。
オレは・・
先輩と
一緒に居たいだけなんだ。
先輩を守りたい・・」
「ヒロシ君・・」
先輩の瞳が再び潤みだす。
僕にそっと抱きつく先輩。
「私・・・
私、
やっぱり・・
ヒロシ君が好き!!!
私を守ってくれる・・・
強い存在が欲しい!!!
あなたの彼女が・・
時々・・
憎くなるのよ!
嫉妬するのよ!!!
あんな子なんて・・
居なくなれば良いって・・・
心の片隅で思うのよ!!!
あの時だって・・・
望月さんと宮脇さんが除霊をする時だって・・
あの子が・・
居なくなれば良いって・・・
思ってしまった・・
囮にしてしまえば良いって・・・
あわよくば・・
私があなたの彼女になれるって・・
私は・・
私は・・
そんな女なのよ!!!!
人を騙して・・
人を利用して・・
人を蹴落として・・
自分を有利にして・・
自分を少しでも良く見せようって・・
自分が他の人よりも出来るって・・
優越感に浸りたいのよ!!
勉強でも・・
部活でも・・
恋愛でも・・
わたしは・・
そんな女なのよ!!
そんな人間なのよ!!!
そんな
自分が・・
嫌いになってしまう!!」
泣き叫ぶ先輩を、強く抱きしめる僕・・・
「あ!!」
短く歓喜の声をあげる先輩・・
「それでも良いです!!!
先輩は
それでもいい・・・
オレは
受け入れます!
だから・・
自分を責めないで!!!
自分を嫌いにならないで!!
自分が
自分を好きになれなかったら・・
誰も、好きになれなくなる!
そんな人に・・
したくない!!
他の人が何と言おうとも・・
先輩が自分を諦めたとしても・・
オレは諦めない!!」
「う!!!
うああ・・・!!!!」
声を張り上げて泣く先輩・・・




