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霊感ケータイ  作者: リッキー
お祭りの夜に
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13.母・・帰る

病院で・・


病院のベットに寝かされていた陽子。

ベットの側によりそって寝ている美奈子。

ブラインド越に朝の陽が入る・・陽子が照らされる。


目覚める陽子・・・


「ここは・・・」

病院であることに気づく。

横を見るとベットに寄り添って寝ている美奈子の姿・・



「美奈子・・」

美奈子の頭に手をやる陽子。


「う・・ん・・」

美奈子が目覚める。

母の手に気づく美奈子。


「起こしちゃったね・・」


「お母様・・体は?」


「うん・・ちょっと、力を使いすぎたみたいね・・」

体の節々が痛そうな陽子。


「あの妖怪との対決で、私の体も、もうボロボロ・・」

響子と共に、悪霊と対決したとのことである・・何とかほこらに閉じ込めたというが、その時の傷は深かった。

響子は寿命が減り、短命でこの世を去った・・陽子は、かなりのダメージを追ったというが・・


「そんな体で・・」



「ふふ・・タエ子さんがどうしても、来て欲しいって・・毎日枕元に立つものだから・・根負けしちゃって・・」


「タエ子さんが?」



「どうしても、メッセージを届けてって・・」



「千佳ちゃんのおじいさんに?」






ブルルル・・ ブルルル・・


枕元の棚に置いてあったポケベルが鳴る・・

それを手に取る美奈子。メッセージを読み上げる。



 アリガトウゴザイマシタ

       タエコ



「タエ子さんね・・どういたしまして!」

再びベットに横になる陽子・・肩の荷が下りた感じだった・・・





「お母様・・


 あまり無理をしないでください。


 私・・


 お母様が居なくなるのはイヤです・・」


美奈子の頬から涙が一滴落ちる・・

本当に心配していたのはそのことだったのだ・・


「ごめんね・・心配かけて・・」

美奈子の頭に手をやる陽子。



「でも・・私も・・あなたが死なずに済んで良かった・・」


「え?」


「あなたは、小さい頃に、自分の最期を予見してしまっていたから・・」

霊力を高めるための修行も、力をつけた悪霊の前には殆ど無力であった・・


「ヒロシ君が・・命を掛けて、救ってくれたんです。」


「また、響子の一族に救われたのね・・私たち・・」


「はい・・」


「霊力がどんなにあっても、彼女達の血に助けられるのね・・」


窓の外を見つめる陽子。

ブラインド越しに青い空が広がっていた。


「美奈子・・」


「はい・・?」


「良かった・・本当に・・生きてて・・良かった・・」

美奈子を抱く陽子・・


「お母様・・」


二人、抱き合って、互いの無事を確かめ合った・・・






数日後、元気を取り戻した美奈子の母・・山奥の修行場へと戻るという。

駅のホームで見送る美奈子。


「美奈子・・」


「はい。お母様・・」


「また、騒がせちゃったわね・・」

どうやら、こんな騒ぎはいつものことらしい・・


「皆さんに、ご迷惑をおかけしましたって・・謝ってて・・」

確かに・・一方的にオーラをシンクロさせて集団で霊象を見せたのだった・・

見境無しに人を巻き込んでしまうのは、昔から変わっていないようだ。



「はい・・皆に伝えておきます」



「あと・・・」



「あと?」



「ヒロシくんを大切にね!」



「はい・・」

涙目の美奈子。やはり、親子なのだろうか・・別れは辛い?



「陽子~、ほら、お弁当!」

お父さんがホームに駆けつけてくる・・手にコンビニで買ったお弁当を持っている。


「ありがとう・・アナタ・・」


弁当を手渡しながら・・

「道中、気をつけてな・・!」


「アナタも・・」

見詰め合う二人・・ようやく家族3人が揃ったのに・・


「美奈子も、家事を任せてしまって、ごめんなさいね・・」


「いえ・・留守は心配しないでください」



「また帰ってくるわ・・」


「はい・お母様・・お体に気をつけて・・」


プルルルル・・・

発車のベルが鳴り響く・・


ドアが閉まり、電車が動き出す・・

いつまでも見送る美奈子と父・・電車が遠くなる・・






しばらく二人で電車の行った方を見ていたが・・


「行ったな・・」

「お母様・・・いつもバタバタ・・・」


嵐が過ぎ去っていった・・









学校で・・


音楽室・・いつものメンバーである。千佳ちゃんもいっしょにいる・・



「あ~肩の荷がおりた感じ!!」


実にはつらつとしている彼女・・本当にうれしそう。

お母さんが帰ってくれたから?

それとも、何かいい事があったのかな?



「大変な事件だったわね・・」

先生が、あの事件をふりかえっている。



「済みませんでした・・ってお母様が伝えてって・・言ってました」

詫びを入れる美奈子。



「うふふ・・

 私も、『戦争』なんて、教科書でしか読んだ事なかったから・・いい勉強になったわ・・」



「あれから、私のおじいちゃん・・

 積極的に公民館で戦災の事を話してるんです・・」

源さんも、「タエちゃん」のメッセージを受けて、人々に戦争の事を話しているようだ。



「私たちって・・幸せね・・・」


「いや・・」


僕は何かを言おうとした・・

そう・・・

「僕たち」は幸せなのだ・・


こうしている今でも、世界の何処かでは戦争をしている所もある・・

僕たちと同い年の少年や少女が戦場に駆り出されて悲劇を生んでいる・・

戦争ではいつも弱い者が犠牲になるのだ・・


「僕たちにできることってないんでしょうか?」


「そうね・・ヒロシくん・・それは・・考えてみようよ!」

先生も何かを感じ取っていた・・


「はい」

僕たちにできる事は何なのだろう?

僕にできることなんて、ちっぽけな事だ・・

でも、あの「タエちゃん」や死んでいった無数の魂の事を思うと・・

何かをしなければって・・・

思った・・・





再び・・あの世・・お花畑・・例の二人、響子と翔子の会話・・


「お母様、今回は出番、ありませんでしたね~」


「そうね~。」


「それにしても、源さん・・戦時中にあんな思いをしてたんですね~」


「戦争は、私も経験は無いけど、私のおばあちゃんから体験談は聞いてるわ・・」

この話も、実は、私の祖母から聞いた話を書いている・・半分は実話なのである・・


「やっぱり、戦争は悲惨ですね~」


「世の中、平和であってほしい・・犠牲になるのはいつも弱い人たちだから・・」



「でも・・美奈子お姉ちゃんのお母さん・・未だに能力健在じゃないですか?」


「私と悪霊と戦った時に、かなりダメージを受けたんだけどね・・」

それは、ちょっとネタばれである・・まあ、1話でもネタをばらしたのであるが・・



「そういう面では、美奈子お姉ちゃんも、一目置いてるわけですか・・」


「能力の上下なんて、あんまり意味が無いのかもね・・」




「でも、(ヒロシ)お兄ちゃんのお父さん・・何か、私のお母さんと仲良さそうですが・・」


(ギク!)「そうね~」


「晴れて、私も『お母様』と呼べるようになるんでしょうか?」


「そうね~」


「お母様・・さっきから『そうね~』しか言ってないんですけど・・」


「そう?・・・」(この子と身内になっちゃうのかな~?)

既に、一話のエンディングでもネタはばれているのであるが・・この時点では(ヒロシが中学校時代の時は)まだです・・





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