149.攻防戦
学校・・・
工作室の前の廊下で、お母様から治療を受けている彼女・・
先輩からの連絡を受けて、遠く都心から駆けつけたという事だったが・・・
「ミナのお母さん!
先輩は何処へ?」
僕がお母様に先輩の居所を聞く。
「あの子は・・
ワラ人形で攻撃を仕掛けている犯人の捜索に行っている・・・」
「一人で?行ったんですか?」
「いえ・・・
霊感ケータイがあるから、パパと一緒よ!」
パパと二人で大丈夫なのだろうか?
「童子と・・さっきまでここで対峙していた妖麗もいるはずです!
強力ですよ・・
あの悪霊は!!」
先輩の方が危険な感じがした。
「でも、妖麗と言う霊は、昨日、深手を負ったはずだけど・・・」
「復帰してました!
どうやったのかはわかりませんが・・」
僕が、先程の妖麗の事を報告する。
確かに、かなり深手を負って、立てない状態だったと聞いていた。
「都心で自殺をした女の子達の霊力を使ったんです・・」
彼女が、弱弱しい声で話し始める。
「あの妖麗と言う霊は、
人のオーラも取り込める・・・
おそらく、自殺した人達の霊も取り込んでいます・・
かなり、霊力が高まっていたから・・・」
そんな相手も居るのならば、尚更、先輩が危ない。
「お母様・・
先輩の所へ行ってください・・・
私は
大丈夫です・・」
「美奈子・・」
「今、危険なのは、先輩です・・
私は、結界の御蔭で、守られていますから・・・」
「わかったわ!
でも、何処へ行けば・・」
「丘の上の公園です・・
この間と同じ方向からでした・・・」
「オレが、知ってます!」
僕が答える。
顔を見合わせる先生とお母様・・一刻を争う。
丘の上の公園の広場・・
妖麗と対峙している先輩。そしてその脇にパパ。
パパがバリアーを展開し、先輩を守っている。
霊感ケータイのスイッチを切った先輩には、パパとの交信が出来なくなっている。
妖麗の姿は見えないが、目を凝らせばボウっとした灯りとなって確認されている。
「パパさん・・
これは、時間稼ぎです・・
あの少年を逃がしている・・」
短刀を構えている先輩が、呟く。
その答えは返って来ない。姿も見えないが、気配はある・・・・
「確かに・・
相手も構えているだけだ・・・」
「フフフ・・
手も足も出まい・・・
霊感ケータイが無いその女子など、赤子も同然だ・・・
そなたからの交信は不可能なのだからな・・
さて・・
どう戦うのかな?」
「く!
バリアーがどこまでもつか・・・」
呟くパパ。
「パパさんが、妖麗と戦っている間に・・
私は、あの林に向かいます!
でも・・
童子が居たら・・
アウトです・・・」
「ダメだ!未来ちゃん・・・
応援を待つんだ!
陽子さんがこっちに来ているなら、
必ず向かっているはずだ!」
そのパパの声は、先輩には通じない。
だが・・・
「陽子さんが、こっちに向かっていると思う・・・
望月さんなら、
自分の事よりも、私を優先してくれるハズ・・・
あの子は、そういう子です・・
たぶん、
ヒロシ君が案内してくる。
先生の車に乗って・・・
そこまでは読めるんです。
それまで、待っていたら、
あの少年は逃げて行ってしまう・・・」
その言葉を放って、息を大きく吸う先輩・・
「私が、あの妖麗と戦います!
パパさんは、少年を追ってください!!!!」
そう叫んで、妖麗の方へ走って行く先輩。
「未来ちゃん!!!」
叫んでいるが、パパの声は届かない。
「何?!!!」
怯む妖麗。
「先手・必勝ーーーー!!!」
ボウッと浮かび上がっている光の方へ斬りかかる先輩。
ギーン!!!!
手応えはあった。
思わぬ奇襲に、爪で短刀を受け、一歩下がった妖麗。
すかさず、そちらへ斬り込む先輩。
「何だ!!私が見えているのか??」
「見えている!!私には、あなたの位置が!!!」
シュン!!!
短刀を大きく横に振る先輩。
その攻撃を交わす妖麗。
間合いを取って後ろに下がり、爪を構え直す妖麗。
そちらに向けて、短刀を構える先輩。
チャ・・
浮かんでいる灯りを頼りにしている先輩・・
再び、動かない所を見ると、こちらの隙を覗っているようだった・・・・
姿も何も見えない状態で、イメージだけで戦っている先輩・・
しかも、剣術は素人なので、剣筋も容易に分かってしまう・・・
「ふふ・・
その様な腕で・・
私と戦えるとでも思ったか?」
あざ笑っている妖麗を無視するが如く・・
「パパさん!
行ってください!!」
「わかった!」
あっけにとられていたパパが林へと向かう。
「何!?」
そちらに気が行く妖麗。
ジャ!!
先輩が短刀を向ける。
「あなたの、相手は、私よ!!!」
妖麗を睨みつける先輩。




