144.真夜中の浄霊
学校・・
残業を終えた先生達が帰って、真っ暗になる・・
宿直室に当直の先生が詰めているだけの、だだっ広い校舎はシーンと静まり返って、かえって不気味な様相を醸し出していた。
誰も居ないはずの女子更衣室の窓がスッと開く・・・
「やっぱり、ここは鍵が掛かっていなかったね・・」
「うん。
女子だけの秘密の抜け道よね・・」
彼女と千佳ちゃんが、南校舎にある玄関脇のロッカールームの窓から忍び込む。
女子更衣室の窓の一つは、鍵をかけない女子達の暗黙のルールがあった。
宿題や勉強道具などを校舎に忘れた場合に緊急に入る目的で女子達の間で秘かに決めていた。
男子どころか、教員も滅多に入れない聖域となっているので、こういった事が可能なのだが、何せ、窓までは地面から高低差があるため、一人だと入るのが大変なのだ。
一人が、もう一人の生徒の肩の上に乗って、窓を開け、中に入った生徒が、もう一人を引っ張り上げなければ入れない。
連係プレーが試されるのと、スカートでは厄介な難所でもある。
ロッカーで、白装束と紅白の巫女姿に着替える千佳ちゃんと彼女・・
目的の中校舎の2階へと進む。
「やっぱり、怖いね・・」
「うん・・夜は、静か過ぎて不気味よね・・」
「美奈ちゃんでも怖いの?」
「怖いって言うか・・・
・・・
良く考えたら、怖くもなかったわ・・」
「全く・・
霊能者に掛かれば、お化けも怖くないか・・
私は、やっぱり怖いよ。」
「この学校は、地縛霊が多いからね・・
戦争の時は、空襲で焼かれた遺体を、一時的に集めた所だって聞いてたわ。
霊も寄りやすいスポットなんだって、お母様が言ってたし・・」
「そ・・
その話は、しないでよ・・」
意外な事実なのだが、千佳ちゃんくらいの情報通には知れ渡っていた事だった。
体育館の裏の焼却炉は、空襲で犠牲になった遺体を焼いた焼却場跡だと言う・・
近くに、防空壕があって、そこで多くの人が生き埋めになったそうで、源さんの若い時の彼女も、そこで命を落としている。
『いわく付』の敷地に建っている学校ゆえ、心霊スポットとなっていた。
七不思議があっても、不思議では無い学校・・
理科室の隣の工作室に入る二人・・
大きな作業台があって、そこを祭壇に仕立てる。
ロウソクに火を灯し、持ってきたお供え道具を並べる千佳ちゃんと、教室の四隅に塩や酒を撒いている彼女。
北校舎の浄霊をしまくって、もうセッティングは慣れていた。
祭壇の前に椅子を一つ置き、そこに千佳ちゃんが座って、目を閉じる。
彼女が、千佳ちゃんの前で、御幣(ギザギザの紙が付いている棒)をかざして、一礼する。
「それでは、魂鎮め(たましずめ)の儀を始めます・・・」
御幣を数回振る彼女。
「高天原に神留坐す(かむづまります)・・・」
神道の経文を唱え始める彼女・・・
目を瞑っている千佳ちゃんの頭が左右にゆっくり振られ、憑依が始まる・・
「ハァ・・ハァ・・・」
浄霊が始まって1時間、彼女もだいぶ疲れてきている。
「・・
まだ3体・・・か・・・
今夜はこのくらいにしておく?」
そう言っている千佳ちゃんも、それ相応に疲労していた。
汗をぬぐっている彼女・・
「明日になれば、また、博士に消去させられちゃう・・・
1体でも、多く、成仏させたいわ・・・」
「ミナちゃん・・」
そう言って、再度、浄霊を続ける。
ガク!
彼女が膝を落とす。
「ミナちゃん!!」
彼女に寄り添う千佳ちゃん・・
「もう、これ以上は無理よ!
休まなきゃ!!」
「う・・うん・・・・」
祭壇にもたれかかって、休む彼女・・
「大丈夫?かなり疲れてるよ・・・」
「千佳ちゃんもじゃない・・
霊力を消費しちゃったね・・
う!」
胸を苦しそうに押さえる彼女。
悪霊との対決の時に受けた傷が痛む・・・
「大丈夫?」
「うん・・・ちょっと痛む・・・」




