143.胸騒ぎ
「じゃあ、先生の自転車、お借りしますね!」
僕と先生に見送られながら、勢い良く玄関のドアから出て行く先輩。
先生の自転車で、防犯カメラを振り切る作戦だ。
明日の朝、迎えに来るという事だった・・
それにしても、ルンルンの後姿の先輩だった・・
顔を見合わせる先生と僕・・
「何か・・
良い事あったの?
水島さん・・」
「いや・・
何も・・
ないですが・・・」
とぼけている僕の顔を覗き込んで・・
「ふ~ん・・」
と言った先生・・
さらに・・
「さっき、何か、大きな音がしたんだけど・・
何かあったの?」
先輩が飛びついてベットに倒れた音だろうか?
「あ・・
ちょっと・・
本棚の本が落ちて・・」
誤魔化そうとする僕・・
「ふ~ん・・・」
何か、その『ふ~ん』が異様に気になる・・・・
その夜・・
僕は、なかなか寝付けなかった・・
先輩との別れ際での、この部屋でした事を考えると、興奮して眠れない。
先輩とキスした事・・
抱き合った事・・
彼女に隠れて先輩と抱き合ってたなんて知ったら、何て言えば良いのか・・
先輩を励ます為とはいえ・・こんな事をして良いのだろうか?
翔子ちゃんの時に、許してくれた彼女・・
「最初は、君とする・・」
って約束はしたけれど・・
それさえ、守れればキスしたり、抱き合ったりするまではOKなのか?
何処まで許されるのだろう?
いや・・
彼女を裏切っているのには、変わりない・・・
罪悪感が沸々と湧き出る・・
そして、寝付けないのは先輩の事だけではなかった・・・。
昼間の出来事が気になったのもある。
都心での今西さん達の追っている一連の事件、そして、こちらでの博士の研究・・
これからの対応をどうするのか・・
明日、部活で決めようと先生が言っていた。
各自で出来る事を考えて、会議をするのだろうか・・・・
皆が、それぞれ出来る事・・
大した事も出来ないような気もしていた。
でも、皆は何を考えてくるのだろう・・・
博士の消磁作業は次々に行われ、校内中の地縛霊を、夕方の理科準備室の教師の霊の様に、無残な姿にしてしまうのだろうか・・・
それを防ぐ方法なんて、あるのだろうか・・・
先輩は、何を考えてくるのだろう?
彼女は、何を考えてくるのだろう?
そんな事を想っていると、寝付けない・・
そう・・彼女も、今頃は、考えているはずだ。
明日、何をすれば良いのか・・・
博士の作業をする前に・・
浄霊をするのがベストだろう。
北校舎を千佳ちゃんと浄霊しまくった、あの時の様に・・・
博士が次の作業をする前に・・・
それは、
いつ?
明日の会議の時では間に合わない・・
今日、一緒に帰った彼女と千佳ちゃん・・・
まさか!
ベットから飛び起きた僕・・
寝付けなかったのは、これが原因?
先輩の言っていた、
「気がかりな事は・・
まだあるわ・・・」
って、この事なのか?
まてよ・・
先輩なら、そんな時、どうするのだろう?
今、霊感ケータイは先輩の手元にある。
この展開を読んでいたのなら、次に先輩のする事は・・・
僕には今・・霊感ケータイが無い・・
胸騒ぎがした・・




