11.お祭り
昼休みの音楽室。この間のメンバー・・
いきなり、彼女が提案する。
「ヒロシくん!今度のお祭り、一緒に行かない?」
何だか、昨日の憂鬱な様子と打って変わっている・・何かあったのだろうか?
しかも、顔が引きつっている??
「ああ・・あの神社のね・・」
とりあえず、答えておいた。
「あの神社の花火って盛大よね~」
先生も話しに加わってきた。
「僕のお父さんも、この花火は毎年かかさず見てるよ・・」
「ねぇ~家族みんなで行かない?お母様も久しぶりに見たいって・・」
何か、積極的だな~・・・お母さんは苦手じゃなかったのか?
「賛成~。先生、おべんとう作っちゃうもんね~」
雨宮先生も積極的だな~ 何だか楽しみにしてる様子だ・・
「何で、先生、ハリキってるの?」
僕が問いただす・・
「へ?だって・・・・」
その、考えている間は何??
「お祭りってワクワクするじゃない!!浴衣着て行こうかな~」
浴衣ですか・・先生の浴衣姿も良いカモ・・
千佳ちゃんも、この和気藹々とした雰囲気が良いらしく・・
「私も行こうかな・・」
「うん・・おじいちゃんも連れてきてよ!」
「そうね・・慰霊祭に出席するって言ってたから、その後に一緒に行けばいいんだもんね」
そんなこんなで、皆でそろってお祭りに行くことになったのだった・・
慰霊祭
神社の広場に設置されている慰霊碑に向かって、大勢の参列者が椅子に座っている・・
殆どは高齢者で、源さんの姿もそこにあった。
羽織袴を着ている・・
美奈子のお母さん(陽子)は、神事の礼服を着て、慰霊の儀式を行っていた。
なにやら、経のようなものを唱えている・・
太いロウソクの炎が揺れている。
長いお経が終わり、何かに気付いて慰霊碑を見つめていた美奈子のお母さん。
突然、
「この中に、イシダ・フミのご親族は居られるか?」
陽子が、参列者に問いただす・・
経を唱えている脇まで来て、ずっと立っていたという。
「それは・・私の・・姉です・・」
一人の老婆が泣き崩れる・・
参列者からどよめきが・・
その姿を、見て、御幣をかざす陽子。
この慰霊碑の場所に、昔、防空壕があり、太平洋戦争の空襲で、多くの人々が焼け死んだということだ・・
ここに参列している人々は、その亡くなった人たちの身内でもあった・・
毎年、お祭りのときに、この様に盛大に供養が行われ、慰霊のための花火を揚げ始めたのが、この神社の花火大会の云われ(いわれ)だった。
お祭り
夕方になり、神社の境内は、屋台でにぎわっていた。
綿飴や金魚すくい、水ヨーヨーや射的などの屋台が所狭しと並んでいる。
ハッピを着て、はしゃぐ子供達。
学校帰りの中学生や浴衣姿の女子高生達。
アベックが往来している。
そんな中に、僕達の一行もまぎれていた・・
浴衣姿の彼女。眼鏡を取って、カワイイバージョンだ。
「ヒロシくん・・綿飴食べようか?
あ、りんご飴もいいな・・
あ!クレープだ~!」
相変わらずの、甘党全開である・・
両手に飴だの飲み物だのを抱えて満足そう・・
「いっぱい、買ったね・・」
「ウチのお父さんも来れば良かったのにな~」
彼女のお父さんは、用事があるということでお祭りに来れなかった・・
家族水入らずでお祭りを楽しめたのに・・
先生と、月光仮面のお面をつけた父が並んで歩いている。
「ヒロシと妻と3人で、よく来たんですよ・・」
「私も、翔子と来たかったな~」
先生の浴衣姿も、綺麗だ・・行きかう人が見とれている・・
こうしてみると、いいカップルじゃないか?
千佳ちゃんは源さんと金魚すくいに没頭していた・・
「おじいちゃん!がんばって!!」
「ふふ!わしは金魚すくいの源太って呼ばれていたんじゃ!」
ポイを構えて、タイミングを見計らっている・・
そんな姿を、見守る彼女のお母さん・・