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霊感ケータイ  作者: リッキー
現場
409/450

135.図書館で


昼休みの図書室・・


弁当を食べた後、僕は図書室へ向かった。

先輩が昼休みに待っているという事だったが、都内での母達の詮索はどうなったのだろう?


授業中、気になって勉強どころではなかった・・




図書室の戸をガラッと開けて、貸出カウンターを横切る。

読書用の机が並ぶ向こうに本棚が並んでいる。


静かな図書室をグルッと見渡すが、先輩の姿は無かった。

まだ、来ていないのだろうか?


仕方なしに、一番奥の本棚の方へと向かう。

この間、酒呑童子の資料と言う事で借りた「妖怪学全集」のある辺り・・


「妖怪」とか「お化け」「怪奇伝説」「怪談」等の本が集まっている。

この図書室は種類は意外に充実してはいるが、古い本が多いのだ。



「ヒロシ君!」


聞き覚えのある声に振り向くと、先輩が微笑んでいた。


「先輩!」


「お待たせ!向こうの机に行こうか・・」


本棚の奥の方に、開けたスペースがあり、窓際に向かって机が2、3並んでいる。

グランドが一望できる席なのだ。


並んで座る僕と先輩。


「あれから、授業は無事に行けた?」

先輩が聞いてくる。


「はい。何とか怪しまれずに済みました。」


「そう・・

 私は保健室で、陽子さんと連絡を取っていたの・・」


聞けば、ベットの中で布団に包まって、メールをやり取りしていたらしい・・・


「途中、呼吸困難になったわ!

 布団の中って、大変ね・・」


布団に潜って酸欠状態になったらしい・・


「気をつけてくださいね・・」


「うん。」


ニッコリと微笑む先輩。








「それで、自殺現場はどうだったんですか?」


「自殺した人の霊も周囲の思念波も消されていたそうよ・・

 やはり、童子達の仕業ね・・」


「都心で被害者が出ているんですか?

 早く、何とかしないと!」


「そうね・・

 でも、詮索しようとしてもHijiriが妨害しているから、進まないわ・・

 さっきも、陽子さん達が攻撃を受けたのよ・・」


「攻撃??」



「自動車で突っ込んできたの・・

 ニュースにもなってると思うわ・・」


今西さんと彼女のお母さんが駅前のロータリーで襲われたのと同じ手口だと言う。


「大丈夫だったんですか?!」


「ええ・・

 マスコミの人達にケガ人が出たみたいだけど・・

 陽子さん達は無事よ!」


「良かったです・・」


ケガ人が出て『良かった』は不謹慎なのかも知れないが、身内が助かって安心した。


「今は、弘子さん・・

 今西さんの妹さんの家に戻ってると思うわ。」


「何だか・・

 詮索もしたいけど・・

 出歩かない方がいいのか・・

 厄介ですね・・」


「それが、Hijiriの狙いでもあるのよ・・

 今回の、自動車での攻撃も、半分は『脅し』の目的もあるわ・・」


「脅し・・

 か・・・」


都心に身を隠しながら、執拗に攻撃をしてくるHijiriの存在が懸念材料だった。

早く、居所を突き止めたい。


そのために、母達が詮索しているのだが、足止めも喰っている状態だ・・



「自動車の攻撃ですが、雨宮先生が運転中に幻覚を見たって言ってました。

 目の前が急に真っ暗になったって・・・」



この前の日曜日、教頭先生を追跡した時に先生が襲われたのだった。

運転中に亡者に襲われると意識が飛んでしまうと話していた。



「野口さんに、今回の運転手を調べてもらえば、分かるのかも知れないわ・・

 Hijiriがどうやって、携帯を持っている人を操っているのか・・」


「そうですね・・

 警視庁の協力があれば、心強いですね!」


「ええ・・少しは進展してるって・・思いましょう!」


都心に居るHijiriの情報は殆ど無い・・

先輩の言うとおり、進んでいるって思わないと、気が滅入ってしまいそうだった・・・


その「焦り」を誘うのも、Hijiriの作戦の一つなのだという・・









「ところで、ヒロシ君・・」


「はい?何でしょう?」


先輩が改まって、僕に話しかけてきた。


「霊感ケータイだけど、少しの間、貸して欲しいの・・」


「霊感ケータイを?」



「ええ・・陽子さん達と密に連絡を取り合いたいのよ。

 私が携帯電話に加入すれば済む事なんだけど・・」


先輩は、都心に居る母とメールのやりとりをして、使いこなしている。

しかも、今や司令塔の役割を果たしているのだ。


僕が持っているよりも、むしろ先輩が持っていた方が良いのかも知れない。

先輩は霊感もあるのだし・・頼りになる存在なのだ。



「はい。

 オレが持ってるより、先輩の方が良いかも知れません。」


「でも・・」

先輩が表情を曇らせる。どうしたのだろう?



「この携帯が無いと、ヒロシ君は無防備になるのよ・・」


「無防備?」


「非常時にパパも呼び出せないし、霊の存在も分からなくなる・・

 帰り道は危険よ!」


そっか・・

あんまり深く考えていなかったけど、僕が霊感ケータイを所持しているという事は、意外に霊への対策ができていたという事なのか・・


ゴーストバスター部の部長としては、本当に無防備どころか、何にも考えていない僕・・

帰り道に関しては、メンバーで必ず2人以上で帰宅する事に決めていた。


沙希ちゃんは拓夢君と・・千佳ちゃんは彼女と一緒に帰る事にしていて、先生は僕が愛紗さんの詮索に行っている最中は拓夢君に送ってもらっていた。


千佳ちゃんは霊感があるし、パパと一緒に帰る事もあった。


僕は一人でも大丈夫だったけれど、

良く考えれば、霊感ケータイがあったから狙われなかったのかも知れない・・


これを先輩に貸すという事は、狙われやすくなるのだろうか???

でも、先輩が持っている方が良いんだろうし・・・・







「う~ん・・どうすれば・・・」


考え込む僕・・


悩む・・


でも、そんな表情を見て、先輩が提案してくる。



「うふふ・・

 私と一緒に帰ればいいのよ!」


ニコッと微笑んでいる先輩。


 

「え?」


「私が、帰りに、ヒロシ君を送ってくわ!」



そうか・・帰り道が同じ方向だ。先輩に送ってもらえば解決する。

でも・・それは彼女が何て言うのか・・


只でさえ、先輩を警戒している彼女だ・・・

帰りに先輩に送ってもらうなんて言ったら、何て言われるやら・・


悩む・・



そんな事を考えている僕に・・



「やっぱり、望月さんが気になるよね・・

 たぶん、反対すると思うけど・・」


鋭い!


先輩は僕の心を見抜いているのだろうか?

ていうか、「分かりやすい」んだと思う・・・


「今は、母とコンタクトを取る方が重要だと思います。

 ミナに相談してみますよ。」



僕の所持する霊感ケータイは、元はと言えば、彼女のモノだった。

所持しているというよりも、借りているようなものだ。


そのケータイをあっさり他人に貸していいのかどうか・・

それも、相談する必要があると思った。


黙って貸していて、後でバレたら、それこそ大変な気もしていた。

今は、非常時なのだ。個人的な感情よりも、優先することがあると思う。

説明すれば、納得するだろう。


僕は先輩に見送られながら、図書室を後にする。皆の待つ音楽室へと向かった。





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