132.再び現在 車内で・・
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「ふうん・・・
そんな事があったんだ・・・」
響子が呟く。
都内を走る覆面パトカーの車内・・
野口が運転しながら、話を続けている。
「あれから、オレは転勤を命じられた・・・
ネットで噂が広がって、あの署には居られなくなったんだ・・
家族そろって都内に引っ越しを余儀なくされた。
皮肉なものだよな・・
今、オレが警視庁に居るのは、あの事件があったからなんて・・・」
「出世したのよ。
あなたには、それだけの能力があるって、認められていたのよ。」
陽子がフォローを入れる。
「千尋さんとはどうなったんだ?」
今西が聞いてくる。
「それがな・・・」
ポケットから写真を取り出して今西に渡す。
「あれから直ぐに故郷から見合い話が来てな・・
今では一児の母だ。
来年にはもう一人出来るってさ・・」
お腹の大きくなった千尋さん。
息子さんと旦那さんに囲まれて、笑顔の写真。
「幸せそうじゃない!」
「その写真、俺じゃなくって、法子に送られてきたんだぜ!
全く・・あれはいったい・・何だったんだか・・!」
前の道路を見つめながら、ぼやく野口・・
助手席に座る樋口という男性に気づく今西。
「でも、こんな話・・
こんな所でして良かったのか?」
今西や陽子は当事者だったので不都合は無いが、
上司のプライベートの話を平然と明かしていた野口。
「大丈夫です。
オレ、口、硬いし・・・」
ボソッと答える樋口・・
「ふふ・・
そいつのデータベースの御蔭で、オレ達一家は助かったんだ!」
「え?
じゃあ!君は、あのお局様の?」
「弟です・・」
意外な事実に驚いている今西。
野口がポツリと言う・・
「不思議なモノだよ・・
誰かに助けられて、今のオレたちが生きているんだ。
つくづく・・そう思うよ。」
「因果応報って事なのよ・・。
世の中は、見えない力で繋がっている・・」
陽子が付け加える。
「偶然は必然・・
この世で、無駄なモノは何もない・・
出会いも別れも・・
全て、その人の、この世での修行に必要なモノ・・」
「そうだな・・」
うなずく野口・・
「でも、浮気はダメよ!野口君!」
「ああ・・・
もう、こりごりだよ・・」
呟く野口・・
ハンドルを握り締め、女子高生の自殺した現場へと車を走らせる・・・