126.攻撃
数日後・・
野口のアパートに送られてきた一通の封筒。宛名も送り主も書いていない・・
不思議に思って、開けてみる法子さん。
「痛っ!!!」
法子さんの指から血が吹き出る。
封筒の開け口付近に剃刀の刃が入っていた。
封書の中身に新聞の文字の切抜きを貼った文面・・
あの・人・から
ハナ・れ・ろ・!
「これは!
脅迫なの?!」
恐ろしくなる法子さん・・
公園・・・
颯太君を何人かの子供達が囲んでいた。
「おまえのウチのお父さん、フリンしてるって~!」
「警察なのにな~」
「お母さんが恥だって言ってたよ!」
「そんな事ないよ!」
泣きそうになっている颯太君。
「あなた達!!何やってるの!!」
通りかかった千尋さんが止めに入った。
「わ~。変なおばさんだ~!!」
そう言って、颯太君の傍から逃げていく子供達。
立ちすくんで泣いている颯太君に駆け寄る千尋さん。
「大丈夫?颯太君!」
「お姉ちゃん・・」
アパートに颯太君を送る千尋さん。
「お母さ~ん!」
玄関のドアの前で法子さんに抱きつく颯太君・・・
「颯太・・どうしたの?」
「公園で虐められてたんです・・」
千尋さんが説明する。
「虐め?」
「旦那さんに変な噂が流れてるみたいで・・」
その言葉に、暗い表情になる法子さん・・・
「ネットでも、噂が流れているんです!
誰が垂れ込んだのか・・・」
「ネット?・・・」
「入ってください!」
千尋さんを部屋に入れた法子さん。
周りの様子を観察してからドアを閉めた。
「掲示板に、書き込みがされてたんです!」
食堂でパソコンを開いていた法子さん。
パソコンの画面に表示されている掲示板の文面・・・
ストーカーから
守っている警官が
職務を名目に
被害者の女の子と
いい仲になている
街で二人で歩いてるの見た。
不倫に走ってるんじゃないの?
奥さん可愛そう!
旦那を盗られる嫁が悪い。
旦那さんを虐めすぎたんじゃないの?
サイテーの女!
その文章を読んで、千尋さんが叫ぶ。
「酷い!・・・・
本当の事・・知らないで!
何で、こんな事書くんですか?
私、野口さんとやましい事なんかしてませんよ!
親身になって、警護してもらってるだけなのに!!」
「世の中は、良心的に見てくれる人ばかりじゃないのよ・・」
机に向かって、俯く法子さん・・・
「法子さん・・・」
「こうしている処を、監視してる人も居るかも知れない・・・」
「監視?!」
カーテンを少しめくって、窓から外を見る千尋さん。
向かいの道路からチラッとこちらを見た男性が居た。
何食わぬ顔で歩いていくその男性・・
その脇を通り過ぎる年配の女性。
その女性も、一瞬、こちらを向いたような気がした。
こちらの錯覚なのかも知れない・・
通り過ぎていく人が、皆、怪しく見える。
「こんな手紙も来たんです・・」
送られてきた封筒を見せる法子さん。
封筒の口から剃刀の刃が露出している。
中から、「手を引け」という内容の手紙・・・
「これは!」
「誰かが、私達の生活にも目をつけたみたい・・
あなたから手を引くように仕向けている・・」
「私のせいで・・・
野口さんの家庭まで・・・?」
その言葉に、キッと睨んだ法子さん。
「あなたには、
早く道照さんから手を引いてほしい!
私の前から!
直ぐにでも消えて欲しい!
私の大切な家庭を!
壊さないで欲しい!!」
「法子さん・・」
申し訳ない表情の千尋さん。
自分のせいで、野口の家庭にまで迷惑が掛かり始めているのだ。
「でも・・
そうやって、あなたが私達から離れて行けば、
それは、ストーカー男の思う壺・・・
外堀を埋めているのよ・・」
ストーカー男の作戦であると睨んでいる法子さん。




