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霊感ケータイ  作者: リッキー
お祭りの夜に
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10.母・・来る・・

ピピピ・・ピピピ・・・



朝・・



目覚まし時計のスイッチを切る・・


長い夢を見ていた気がする。

何か・・テニスの夢だったような・・


父は昨日遅くまで飲んでいたのだろうか?

玄関に靴は脱ぎ捨ててあったので、僕が寝ているうちに帰っていたようだ・・


今日の朝食は、僕が当番だ。

パジャマのまま台所へ行って、朝食の準備をする。


「お父さん、朝だよ~」



「う~ん・・・昨日は飲みすぎた~」

頭をかかえて部屋から出てくる父。


「ご飯、食べれる?」


「ああ・・一応食べてく・・」

母の写真に手を合わせている。

二人だけの朝食・・・





丁度、同じ頃、二人で朝食をとっている美奈子と美奈子のお父さん。

ちゃぶ台に正座をしている。さすが、お寺といった感じ・・厳かに朝食が進む・・


お茶碗にお湯を注ぎながら、お父さんが、ポツリと話しかける。


「陽子が来るそうだ・・」


「ブッ!」

味噌汁を噴出す美奈子・・・


「お母様が?」


「今度の神社のお祭りに呼ばれたそうだ・・」


「神社の?慰霊祭??」

何か・・とんでもない事件でも引き起こしそうな気配がした美奈子・・・





学校・・登校して教室に入った美奈子。


美奈子が窓の方をみて、途方にくれている・・眼鏡をかけて、さえない姿なので、さらに増幅された感じ・・


そんな様子を見かねてクラスメイトの千佳が話しかける。


「望月さん、おはよう。」


「千佳ちゃん・・・おはよう・・」

千佳に気づいて、答える美奈子。

少し、心配そうに千佳が尋ねる。


「どうしたの?」


「お母様が帰って来るの・・」


「良かったじゃない」

意外な答えに、少し疑問を感じたが・・


「はあ・・・」

ため息をつく美奈子・・


「嬉しくないの?」


「え?嬉しいよ!久しぶりだし!!」

でも、見ていると、あまり嬉しそうに見えないのだ・・










男子の家庭科の授業。僕の最も不得意な木工の時間だ。



「おめぇ、そんな持ち方じゃ、手を怪我しちまう!」

ノミの持ち方が悪く、源さんに注意された。


「こうだ!」


「はい・・」



源さんは、大工を引退後、僕達の学校で家庭科・・特に木工の指導をしている。

隣のクラスの千佳ちゃんのお爺さんだ。

僕は、いつも道具の使い方で注意されてしまう・・何度やっても慣れないのだ。


ああ・・もう直ぐ、弁当の時間なのにな~。

課題の半分も出来ていない・・


「おい、少年!これ終わらせてから。メシじゃ!」


「は~いい・・」









昼休み。音楽室で・・・ピアノを弾いている雨宮先生。

美奈子と千佳が遊びに来ている。

美奈子は未だ、モノ想いにふけっている・・



「あら・・望月さん、どうしたの?重い表情で・・」

雨宮先生が聞いている。



「わかります?」



「何となくね・・・」



「『あの』お母様が帰ってくるなんて・・・


 また、一騒動あるわ!」

呟く美奈子。


「お母様?」



「望月さんのお母さんが、帰ってくるんです。」

千佳が代わりに答えた。



「山奥で修行してるお母さん?久しぶりに会えるんじゃない。」

雨宮先生は、悪霊退治の一件で、美奈子が母の元へ修行に行ったことを思い出していた。


「ああ・・・皆は、あのお母様の事を知らないから・・」

かなり、苦悩の様子・・


そこへヒロシが入ってくる。

「いやあ・・木工の課題が出来るまで残されちゃったよ!」


「おじいちゃんが?ごめんね~。」


千佳ちゃんが居るとは思わなかった・・ちょっとマズかったか?

「いや・・熱心に教えてくれるから・・」



「千佳ちゃんのお爺さんには、いつもお世話になってるわ・・熱心でいい教官よ!ヒロシくんも頑張らなきゃね!」

雨宮先生がなだめてくれた。

ああ・・雨宮先生っていつも優しい。



それにしても、彼女の様子がいつもと違う・・


「あれ?望月さん・・どうしたの?」

付き合っているのに『望月さん』ってのも変だけど・・一応、学校では仰々しくしておこう・・


「ヒロシくん・・・」

思い悩んでいる表情で、僕を見る・・

どうしたのだろう?


「お母さんが帰ってくるんだって・・」

千佳ちゃんが代わりに答えた。


「山奥で修行してるお母さん?」

僕は、悪霊退治の件を思い出していた。

確か、高校の時、ウチのお母さんとコンビを組んでいたとか・・



「今度の慰霊祭に供養の行事で呼ばれたって・・」

彼女が、補足する。


「慰霊祭?ああ・・近くの神社の?」

学校から帰る道中にある神社だ。ここのお祭りは盛大に行われる。特に、太平洋戦争の空襲による被害者の霊を弔う行事と夜の花火大会は一大行事になっている。

僕のお父さんは、何故か、このお祭りを楽しみにしている。母が生きている時(何回か)は、3人で屋台を見に行ったものだ。



「いつもの神主さんが都合が悪いからって・・」


「でも・・お母さんが帰ってくるんなら、楽しみじゃない。滅多に会えないんでしょ?」


「ああ・・ヒロシくんもそう言う~?」

よっぽど、会いたくないのだろうか・・その時は、それ以上は言及しないことにした。



学校の帰り道・・・

僕と彼女・・そして千佳ちゃんも一緒だった。



帰り道の道中、町を見下ろす高台に、大きなケヤキの木が1本立っている・・

その大木に手をついている老人の姿があった。


「あ・・源さん!」


「おじいちゃん、どうしたの?」




「ああ、千佳か・・」

そして木を見上げる源さん・・


「この大木はな・・・思い出の木なんじゃ・・」


「思い出の?」


「あの時・・ここで会おうと約束したのにな・・」


「あの時??」


「昔のことじゃ・・

 さあ、もう遅いから帰るか・・」


「うん・・

 じゃあね、望月さん・・ヒロシくん!」



「また・・」


「少年よ!腕を磨いとけよ!」

昼間の授業の続きらしい・・


「はい・・」


僕達は、源さん達を見送った・・





「あれ?あの子・・・」


その時、彼女が不思議な少女の姿を目撃した。

大木の近くのほこらの影から僕達を見ているという。



「え?」

僕には見えなかった。少女の霊なのだろうか?

霊感ケータイを作動させて見てみようとポケットから取り出しているうちに姿を消してしまった・・・



「よく見る霊なの?」


「ううん、見かけない子だよ。」


僕達に危害は与えないという事だった。大木で見かけた少女の霊・・いったい何者なのだろう?







美奈子が家に帰ってきた。小高い丘の上にあるお寺。

お寺の山門をくぐると、母の気配を感じて、思わず身構える・・


「はっ・・・?  お母様!!」


「何?その反応は??」

山門の影から姿を現す陽子・・美奈子が帰ってくるのを待っていたようだ。



「い・いえ・・」

すこし、たじろぐ美奈子・・蛇ににらまれたカエルといったところ。




「この間は、ご苦労様・・」

悪霊退治の一件らしい。ひょっとしたら命を落とすところだったのだが・・あまり心配していなかったのだろうか?


「あ・・ありがとうございます・・お母様・・」

おどおどした様子の美奈子・・


「大変だったみたいね・・響子から聞きました・・」



「命があったのが、幸運です・・」




「それでね・・・」

もう、悪霊退治の話はいいんかい?あれだけの壮絶な戦いだったのに・・・

美奈子に耳打ちする陽子。何事もマイペースな様子だ・・美奈子の事など気もかけていない感じ・・


「え~!!!」

驚く美奈子・・いったい何を話したのだろうか??










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