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霊感ケータイ  作者: リッキー
事件
385/450

111.葬儀


 

次の日・・


老夫婦の旦那さんの葬儀が葬儀ホールにて簡易的に行われていた・・


会場も花輪が一本も無く、棺桶の奥に白黒の垂れ幕という質素なもので、予算の少ない最低限の葬儀の形式だ。

通常は通夜と葬儀は二日続けて執り行われるが、通夜もまとめて葬儀のみで、式が終われば、そのまま火葬場へ直行する。


喪主である、お婆さんと息子さん夫婦と思われる家族、そして数名の親戚が同席していた。


警察関係者では野口と女性の検視官の二人で参列していた。

住職の経が速やかに読まれ、焼香を焚いていく・・



「全く!

 こうなる事がわかっていて、出て行ったんだもんな・・

 結局、俺たちが尻拭いか・・


 こっちの身にもなってくれよな!」


息子さんが悪態をついている・・


お婆さんは黙って俯いている・・


 拳を握りながら・・


女性の検視官が、野口をチラッと見たが、首を横に振って我慢しようという合図を送った。

警察が騒ぎを大きくする訳にもいかない。











無事に火葬が済み、元のアパートへ戻ってきたお婆さん・・・

和室の隅にテーブルが置かれ、位牌と骨箱が並べられていた。


野口達も、息子さん夫婦からのガード役として、火葬場からずっと付きっきりだった。

上司から特別に配慮してもらったのだ。


お婆さんが、位牌に手を合わせてから、野口達に話し出す。


「何から何まで・・

 ありがとうございました・・・」


「いえ・・私達は仕事ですので・・」


「御蔭様で、年金も、この数か月分を返納するだけで良くなりました・・」


「そうですか・・それは良かった!」


「この後、このアパートを出て、息子の所へ身を寄せる事が条件ですが・・。」


「大丈夫ですか?あんな息子さん夫婦の元で・・」


女性の検視官が心配している。

あの、悪態をついた息子さん夫婦の所へ行くなどというのは、当人にとってどれほど辛い事か・・・


「わかりません・・

 あの人が他界した以上・・

 何処へ行っても同じだと思っています。


 それに、僅かな年金しかないのです。

 仕方がありません。」


苦渋の選択と言った所だ・・背に腹は代えられない・・


「あの・・我慢できなくなったら、私の所へ連絡を下さい!」


そう言って、女性の検視官が電話番号の書いたメモを差し出した。

今まで、捜査を進める中で、他人事と思えなくなったらしい・・


だが、そのメモを返したお婆さん・・



「そのお気持ちだけで結構ですよ・・


 世の中、悪い人ばかりではないって・・

 まだ、人情に溢れた人が居るんだって・・


 分かっただけでも、心が休まります。」


お婆さんに見送られて、部屋を出る野口と女性検査官・・

罪悪感にも似た、やるせない想いが残った・・







野口のアパート・・

天井を見つめながら、ビールを飲んでいる野口・・


ため息が何度も出ている・・


「道照さん・・・」


心配そうに声をかける法子さん・・

昨日は若い女性で言い合いになったが、今日は一変している・・


そちらを見つめるが、やはり天井を見つめ直す・・・


だが、法子さんの方を向いて、話し始める。


「オレは・・

 この先・・

 色んな家庭を見て行くんだろうな・・・


 仕事柄、

 『生死』とは切っても切れない縁になる・・


 耐えきれない事も・・

 あるのかも知れない・・・」


そう言って、ごくごくとビールを飲む。


「プハ~ぁ・・・

 何か、パーっとする話は無いかな~・・」


急に景気の良い話をねだってくる野口。

気分転換を図りたい所だった。



「そう言えば、はがきが届いてたわよ!」


「ハガキ?」


「ええ。」


法子さんが手渡した一通の往復はがき・・



「何々?高校の同窓会?」


野口が卒業した高校の同じクラスの人から宛てられた案内だった。


「どう?行ってみたら?」


「ああ・・・高校か・・・懐かしいな・・・」


早速、返信用はがきに出席の意を表す野口・・

このハガキが野口のその後の運命を大きく変える・・・


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