表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊感ケータイ  作者: リッキー
事件
384/450

110.災難


野口のアパート。


相変わらず、ビールを夜食代わりにしている野口。

携帯のメール画面を見つめている。


先程、若い女性とアドレスを交換してしまった余韻に浸っていた。

メールアドレスが表示されている。

だが、名前はまだ、分からず仕舞いだった・・


法子さんが颯太君を寝かしつけて、台所に戻ってきた。

携帯をサッと隠す野口・・


その仕草に違和感を感じた法子さん・・



「そう言えば、今夜は帰りが遅かったけど・・

 どうしたの?」


鋭い!世の女性は、こういう所は鋭いのだ!

アンテナを張っているかのごとく問いただしてくる・・


「ああ・・

 昨日の変死事件の資料をまとめていて、遅くなったんだよ・・

 新たに公園の自殺の件もあったし・・」


それらしい理由を並べて、凌ごう(しのごう)という野口・・

半分、疑いの目で見ている法子さん・・


「ふぅ~ん・・

 でも、自殺した人が、あのお婆さんでなくて良かったね!」



「ああ・・

 あの時は、オレも驚いたよ。


 ・・

 なあ・・法子・・・」



「なぁに?」


昼間、喫茶店でお婆さんと話したことを思いだす野口・・



「今日、あのお婆さんと会って来たんだよ。

 旦那さんとは相思相愛の仲だったそうだ・・・


 年金を騙し取るという理由よりも・・

 旦那さんの突然の別れがショックだったらしい・・」


「そう・・」


「何か月も、旦那さんの遺体と一緒に暮らしていたんだ・・

 そんなに、人を愛せるものなんだろうか?

 オレが死んだら、法子は・・同じ事をするかい?」



「私?」





少し考えた法子さん・・



「私は、あなたが死ぬなんて、考えた事も無いわ!

 ずっと一緒に暮らすんだって・・思ってた。


 颯太が大きくなって、その後もね・・


 でも・・

 いつかは、あなたも死ぬのよね・・

 それは、私も変わらない・・」



改めて、自分たちの死について考える法子さん・・・



「あなたが死んだら、収入が無くなるのよね・・

 遺族年金だけで暮らしていけるのかしら・・


 保険屋が旦那さんの生命保険に入れってうるさいのよ!

 三大疾病も気になるし・・


 やっぱり、入らなきゃならないのかな・・

 颯太が働く前に、あなたが死んだら大変だし!

 生命保険付の学資保険にも入らなきゃ!


 ああ・・

 マイホームなんて夢のまた夢ね・・

 宝くじ、当たればな~」


いきなり現実的な話になっている・・・

まぁ・・大半の奥さんは、こういう反応だろう・・



 

「お・・オレの存在って・・

 金ずるだけなのか??」


幻滅しだす野口・・

その表情を見て、微笑んだ法子さん。




「冗談よ~。

 あなたが居なくなれば、私は悲しくって、立ち直れないと思うよ!」


「それ・・本当なのか?」


言葉の割には軽い態度の法子さんを見て、疑っている野口・・

野口の後ろに回り込んで、抱きついてくる法子さん。


「本当よ!

 あなたが死ぬなんて、始めて考えたわ・・


 いえ・・

 そんなの考えたくもない・・


 ずっと、一緒に居たいもの・・

 いつまでも・・」


頬を摺り寄せる法子さん・・温もりが伝わってくる・・


「法子・・」

頬を赤らめる野口・・




そして・・



スッと、野口の胸元に手が伸びる・・



胸ポケットに仕舞いこんだ携帯を抜き取った法子さん・・・



「あ!」


一瞬の出来事に驚いた野口・・

だが、気付くのが遅かった・・


携帯を開いて、内容を見る法子さん・・



「何!?

 これ!!


 女の人じゃない!!!」


先程、若い女性とメールアドレスを交換した画面がそのままだった・・

おいおい・・野口君・・少しは考えろよ・・








しかも・・



 ブルルル・ブルルル


法子さんの手元で鳴りだすバイブレーター・・・


「何?・・

 メール?」


  ピ・・


嫌な予感がした野口・・

即座に、届いたメールを読む法子さん・・・




 先程は、

 ありがとうございました

      千尋




・・・・

しばしの沈黙・・



「この、浮気者がぁ~!!!!!!!」


「誤解だ~!!

 まだ

 何もしてないよ!!」



「『まだ』って何よ~???

 何するつもりだったのよ~!!!

 誰よ~!!千尋ってぇ~!!!」


涙目で訴えている法子さん・・

世の中、悪い事は出来ないのよ・・野口君・・








怒りに震える法子さんを、何とか説得したのは30分くらい後の事だった・・・


「何で、警官が時間外に女の人の護衛をしなきゃなのよ!」


「それがワケありで・・

 この間も、法子が『連携できないのか』って言ってただろ?」


「その、回りくどい言い方は何よ!」


「どの課でもストーカーに関しては調査ができないんだよ。

 もう3回も引っ越ししてるって言ってたよ。」


「引っ越しを3回も?」


「ああ・・

 なかなかストーカーに関しては、被害届が出しにくい傾向にあるんだ・・

 そんなに精神的に影響を受けててもね・・

 ほうっておけないよ!」


「だからって、あなたがずっと面倒見なければならないの?

 それは変でしょ?」


「だから、危ない時にメールが来るって・・」


「あんたは、出前ヒーローじゃないのよ!

 そんな暇があったら、颯太の運動会とか出てよ~

 展覧会とか音楽会とか、保育園でも月1ペースでイベントがあるんだから!」


「オレ、休み、不定期だから・・」


「同じ公務員でも、殆ど出てるお父さんとか居るのよ!

 何よ!この差は~!!」


「公務員って言っても・・

 オレ、高卒だし・・大卒のキャリア組と比べられても・・」



「もう!頼りないわね!

 それでも、千尋って人の所へ行くなら、

 離婚するわよ!」



「そんな~・・協力してくれよ~」


・・更に・・こんな話が延々と続いたのだった・・・

大変だね・・野口君・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ