104.遠隔会議
都心の喫茶店。
陽子の脇に憑いている響子がピクンとなる。
ヒロシの霊感ケータイからのメールを受けたようだった。
「陽子!ヒロシから連絡が来たわ。
水島さんと一緒よ!」
「そう・・
まず、今までの経緯をメールして!
女子高生が次々に命を断った事件・・」
「わかったわ。」
目を瞑って(つむって)念ずる響子。
「霊」からは、こうして伝えたい想いを念ずることで、霊感ケータイにメールの文章として送られるのだ。
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チャラララ・チャラララ
僕の持つ霊感ケータイが鳴る。
母からのメールが届いた。
その文を先輩と二人で読み始める。
ヒロシ、都心で女子高生が集団で自殺したのよ。
例のアプリを使っていた女子高生らしいんだけど・・
Hijiriが関与している可能性がある。
響子
「都心で・・集団自殺!?」
先輩が驚いている。
「犠牲者が出たんですね!」
「今まで、間接的な攻撃に使われてただけだったのに・・・
その命まで奪う様になってきたの?」
「早く・・何とかしないと!」
そして、次のメッセージが入った。
警視庁の刑事さんが協力してくれる事になったの。
自殺の現場へ向かおうと思うんだけど
水島さんにアドバイスをお願いしたいのよ。
響子
「警視庁が協力か・・」
先輩が呟く。
「何か・・本格的になってきたんですね・・」
犠牲者が出てきているのだ・・警察が動き出すのは当然と言えば当然だ。
「そうね・・
刑事の人との打ち合わせも必要になるけど・・
警視庁の建物内部は、Hijiriの監視も予想される・・
防犯設備の整っていない場所でするのが懸命ね・・」
今、刑事さんと会っている場所は防犯カメラの無い喫茶店よ。
響子
母からメールが入ってくる。
「今西さんも考えてますね。」
「そうね・・監視されてるという事を常に頭に入れて行動すればいいと思うけど・・
自殺現場へ向かうのは、ちょっと危険かな・・・」
Hijiriが自殺現場に今西さん達が来るのを待ち構えている可能性があるのだ。
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「霊視をすれば、亡くなった女子高生の霊に会えるかも知れないのよ。
霊に会えなくても『思念波』が残っていれば情報が得られる!」
都心の喫茶店で響子に強く迫っている陽子。
今西達にしてみれば、何もない宙空に向かって独り言を言っているようにしか見えない・・
が、真剣な表情で語りかけている。
そんな様子を見ると、野口刑事も嘘ではないのだと思い始めていた。
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「う・・
確かに・・
陽子さんに行ってもらいたいけど・・」
先輩も迷っている。
危険を冒して得られるものもあるが・・・
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「なあ、どうしても現地に直接行かなければならないのか?
パトカーから離れて霊視するとか・・」
見兼ねた野口刑事が提案している。
「離れた場所よりも、直接、触れた方が分かる事があるのよ・・」
「そうか・・」
陽子に言われて、考え出す野口刑事・・
「あの・・
まだシートを
掛けている
現場がありますよ・・」
ボソッと口を挟んだ樋口・・
『何?』という感じでそちらを向く一同・・
再び俯き加減になる樋口だったが、脇にあったカバンから小さなノートパソコンを取り出す。
画面を開いて、机に乗せ、地図を表示させる。
「ここ
です・・」
バツの付いている幾つかの現場の印の中で、一点を指し示す樋口。
「ここへ・・行ってみるか?」
「響子!
水島さんの意見は?」
しばらく中空を見つめている陽子。
「良いそうよ・・
くれぐれも防犯カメラに気をつけてって・・」
「よし!
じゃあ、これから現場へ急行だ!」
喫茶店を後にする一同・・
体育準備室・・
「陽子さん達は現場に向かったみたいね・・
ヒロシ君、霊感ケータイを貸してくれる?」
「え?これですか?」
「うん。
そろそろヒロシ君も授業に戻らないと、怒られるよ。」
そうだった・・
国語の授業を抜け出しているのだった。
「私は、保健室で陽子さん達と連絡をとるわ・・」
先輩は体調が悪いと保健室へ向かっているという理由で抜け出してきていた。
最もな理由を付けて教室から出てくる点では、先輩の方が一枚上手だ。
女の子という特性も上手く使っている・・・
霊感ケータイを先輩に手渡し、二人で準備室を出ようとした時・・
「あ・・
でも、
もうちょっと・・・」
「え?」
僕の腕を離さない先輩・・
気がつけば、先輩の顔がすぐ脇にあった・・
互いの息遣いが聞こえる近い距離・・
僕の肩に身を寄せてくる先輩・・
「もうちょっと・・
こうしていたいな・・・」
「先輩・・」
「何か・・
襲いたい・・」
「え?」
今朝も校門の前で彼女と口論になってたけど・・襲う・・って何をするんだろう?
次の瞬間、僕の真正面で向かい合った先輩・・
「うう・・
でも・・
早く戻らないと怪しまれるよね・・
昼休みに、図書室へ来て!」
僕の目を真剣に見つめる先輩。
普段はゴーストバスター部のメンバーは音楽室に集まるのだけれど・・
先輩は図書室を指定してきた・・
二人っきりで会いたいのだろうか?
準備室の戸をガラッと開けて、保健室の方へ駆けて行く先輩。
僕は、少し時間をおいてから、教室へと向かった・・




