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霊感ケータイ  作者: リッキー
事件
377/450

103.緊急連絡


学校・・


午前中の国語の授業が行われている僕の教室。

年配の男の先生が黒板に向かってチョークで古語の変格活用を書いて説明している。


ネットによって世界と一瞬につながることの出来る今の世の中に、昔の言葉など習って何か意味があるのだろうか?

でも、熱心にノートに写している皆・・


シンと静まり返って張り詰めた空気が漂う。

僕はグランド側の席で、日の光も心地よく、うたた寝うしようとしていたが・・



 チャラララ・チャラララ


霊感ケータイの呼び出し音が僕の胸ポケットで鳴った。


すばやくスイッチを切る僕だが・・・



一瞬、シーンとなった教室・・



 ワハハハッハハッハハ



大爆笑の嵐となってしまった。


うう・・何たる不覚!

赤面する僕・・



「静かに!

 誰だ!授業中に変な音楽を鳴らしたのは!!」


国語の先生が注意している。


授業中に、しかも学校に携帯を持ってきてはいけない規則なのに、さらに呼び出し音を鳴らしてしまった!

しかも、着新メロディーは「トワイライト・ゾーン」のテーマである・・



でも、こんな時間にメールを送ってくるなんて、よほどの緊急事態なんだろう・・


咄嗟とっさに先生に申し出る。


「すみません!オレです!」


席を立って、謝る僕・・


皆に見られている・・

教室中の視線を一点に受ける僕・・


・・恥ずかしい・・





「なんだ!ヒロシか!

 この間、成績が上がったからって、油断するんじゃないぞ!

 中学2年の後期は高校受験の内申に響くんだ!」



「すいません!

 反省します!


 罰として、

 校庭を走ってきます!!」


「え?そこまでせんでもいいが・・」



「いえ!

 オレの気がはれません!」


そう言って、教室を出る僕・・

国語の先生に唖然とした表情で見送られる・・・





廊下に出て、ポケットから霊感ケータイを取り出し、メールを見る。


 ヒロシ。

 至急、水島さんと連絡を取りたいの

   響子




案の定、母からの緊急連絡だった・・

都心のHijiriについて、何やら動きがあったのだろうか・・


さて・・・困った・・・どうやって、先輩を呼び出せばいいのやら・・








国語の先生に言った手前、校庭に出て走り出す僕・・


先輩は3階の教室だ。

窓から、良く見えるわけだから、僕が走っていれば、そのうちに気づいてくれるだろうか・・・


いや・・


よく考えたら、校舎の全教室の窓から丸見えだった!

全校生徒が、僕の走っている姿を見ているではないか????



「あれ見て!

 男子が授業中に校庭を走ってるよ!」


「え~?あれ、誰??」


窓際の生徒達が気づきはじめた。


今時、授業中に注意されて、校庭を走る生徒なんて居ないだろう・・

走る行為自体は、どうでもないのだけれど、その姿が全校生徒の視線のまとになってしまう事にまで考え付けなかった・・


 何とも間抜けな行為だった!


 は・・

 恥ずかしい!!!



「あの人、2年3組のゴーストバスター部の部長じゃない?」


「ホントだ~。

 かっこ悪い~」



窓に次々に人だかりが出来ているのがわかった・・


ああ・・


僕は、なんて事を提案してしまったのだ・・後悔の念が募る・・




だが・・




「ヒロシ君・・・!」


3階の教室の窓際に座っていた先輩も気づいた。

僕と先輩の目が合う。


目で合図する僕・・

気づいてくれるだろうか???



「先生・・

 ちょっと・・

 気分がすぐれません・・

 保健室へ行ってきます・・」



具合が悪そうな仕草をして、先生に訴える先輩。

今にも倒れそうにオーバーな動作・・

傍で見れば、如何にも演技だと分かってしまいそうな感じだが・・


「大丈夫か?水島・・

 誰かついて行ってもらうか?」


意外に先生は見抜けなかった。



「いえ・・

 一人で何とか、行けそうです・・」


「そうか・・」


おどおどしている先生・・・













僕が校庭を走っている。

1年生や2年生のクラスからは丸見えで、恥ずかしい限りだ。


もう何周しただろう・・

全く・・何で、僕がこんな事をしなければならないのか・・

つくづく貧乏くじを引くタイプだって、自分を呪っていた・・





・・などと、思っていたら、校舎の出入り口から手招きをされていた。

先輩が他から見えない様に合図を送っている。


どうやら、無事に呼び出すことが出来た。

・・無事?なんだろうか・・恥ずかしい・・


頃合いを見計らって、先輩の方へと向かう。



「どうしたの?ヒロシ君?」

先輩も、ちょっと恥ずかしそうにしていた・・


そうだろうね・・

こんな格好の悪い事してたんだもの・・


「オレのお母さんから連絡があったんです。

 先輩に至急、繋いでくれって・・」


「響子さんから?

 霊感ケータイなの?」


「はい。」


「人目につかない所へ行きましょう!」


そう言って、先輩が体育館の方へと小走りに走って行った。

僕も、その後に続く。



「雨宮先生は音楽の授業中だから手が離せないわ・・

 今西さんとは直接、携帯での会話はできない・・

 霊感ケータイのみね・・」


母と霊感ケータイで連絡して、間接的に今西さん達と連絡をとるしかないようだった・・・


回りくどいけれど、僕達に残された最低限の連絡手段・・


でも、普通では在りえないのだけれど・・・・



体育館の壁伝いに進む僕達・・

先輩は何処へ行こうというのだろう?


人目につかない所・・って言ってたけど・・・・










 ガラ・・・



重い戸を開ける先輩・・


「入って!」


先輩に案内されたのは、体育準備室だった。

彼女と夏休みに校舎の霊を調査した時に入った事がある。


ここなら確かに人目はつかないだろう・・

でも・・二人っきりになるんだけど・・・



僕は、先輩の言う通りに体育準備室へと入った。

先輩が辺りに人が居ない事を確認して戸を閉める。


ほのかに埃と汗の匂いが漂っている・・

灯りをつけるとバレるということで、真っ暗な状態だった・・


「ちょっと・・・怖いね・・」


先輩が、不安な感じになって、僕の腕に捕まってくる・・

胸が僕の腕にムニュっと押しつけられている。


マシュマロの様な柔らかい感触・・



校内でトップクラスの成績で、美人の先輩・・

僕よりも年上だけれど、可愛い・・





若いカップルがお化け屋敷に行きたがる理由がわかる・・・

暗い空間で二人きりになれて、しかも公然と「くっつく」事ができるのだ。


女の子は「弱い」というのを強調し、それを見て男の子は「守ろう」っていう気分になる。

二人の間に生まれる信頼関係・・


そして、おばけが出て来た時に、運が良ければ抱き合う事もできるのだ。

う~ん・・何か、妄想の世界だな~。

さっきまで、校庭で恥ずかしい思いをしていたのだけれど・・


彼女に見られたら怒られるだろうな~・・



でも、今は、そんな事に感けている(かまけている)場合ではないのだ。

とりあえず、霊感ケータイを開く僕・・

携帯の表示の灯りが僕達の顔を照らし出す。


「とりあえず、母に連絡をします。」


「うん。」


僕は、霊感ケータイでメールを打ち込み、母に送った。



 先輩と一緒に居るよ。

 どうしたの?

   ヒロシ



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