表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊感ケータイ  作者: リッキー
事件
376/450

102.喫茶店で


 カラン・カラン


「いらっしゃいませ~」


都内の、とある駅の近くにある、雑居ビルの半地下にある喫茶店・・


昔ながらの風格を醸し出している店内。

古びた褐色のカウンターの上に置かれたコーヒーミルやサイホン・・

机も5組くらいしかない小さな喫茶店・・


野口刑事と今西の選んだ場所だった。









喫茶店の奥の席に、野口刑事らしき人物と、もう一人、太ったオタク系の男性が狭い机に並んで座っている。


「おお!こっちだ!」


今西ともう一人、長いコートとハンティング帽を深々とかぶった人物が店のドアを開けて入ってきた。

野口刑事に呼ばれて、奥のテーブルに向かう。


今西の連れ添いの人物が気になる野口刑事。



「あれ?その人は?」

野口刑事が聞いてきた。



「ああ・・ちょっと今回の件で、田舎から出てきてもらっているんだ・・」


「田舎から?」




「久しぶりね!野口君!」


「え?」


男性だと思ったが、女性の声がしたのに驚いた野口刑事・・

更に、自分の名前を知っていた?


ハンティング帽のツバをおもむろに上げたその人物・・


「私よ!陽子よ!!」


「陽子って・・・

 望月陽子?!」


ニッコリと微笑んで、席に座る陽子・・

意外な客人に興奮を抑えきれない野口刑事だった。



「『あの』事件以来ね!

 ご無沙汰してるわ!」



「・・あの時は、ありがとう・・

 君が居てくれて助かったよ・・

 じゃあ・・、今回も『心霊』がらみの事件なのか?」



『あのときの事件』・・過去にも心霊がらみの事件があったというのだろうか・・




「ええ・・

 でも、私や今西君を狙っているのは、実体のある人物よ!」


「狙っている・・人物?」



「Hijiriっていうヤツなんだ。

 ネットを巧みに操る人物・・

 この都心に潜んでいる。


 ところで、隣の人は?」


オタク系の男性が気になった今西。

少し、俯いて、今西達を上目で見ている・・



「ああ・・こいつか!

 ウチの課でネット系の調査が専門の樋口だ。


 今回の事件はネットやアプリがらみの事件だ。

 こいつが捜査に一役担ってくれそうだから連れて来たんだ。

 怪しい者ではないよ。」



「樋口です・・・

 ヨロシク・・」


ボソボソと挨拶をしだす樋口という人物・・ 



「よ・・よろしくお願いします・・」


少し引き気味の陽子・・

こういった人物には慣れていないようだ。



「ところで、『霊感ケータイ』のアプリについて話してくれないか?」


「ああ・・」


今西が、これまでの経緯を野口刑事に話し出す・・











「なるほど・・・

 都心に身を潜めているHijiriという人物が関与しているのか・・」


今西から話を聞いた野口刑事・・


「信じられないかもしれないが・・

 現に、俺と陽子は命を狙われたんだ。」



「防犯カメラをハッキングして、監視して、

 携帯やアプリを使って間接的に攻撃してくるのか・・

 恐ろしい相手だな・・」


今西は、Hijiriとアプリの情報のみに触れ、星熊童子の存在については、野口刑事には伏せていた。

更なる存在が「悪霊」などとは、話が大きすぎる・・


しかも、童子とHijiriは別物だという事を水島先輩から聞かされていたし、他言も避けて欲しいとも口止めされていた。



「おい、樋口・・

 そんな事は可能なのか?」


隣に居る樋口というオタク系の人物に訊ねる野口刑事。


「理論上は・・


 可能です・・」


ボソボソと小声で答える樋口・・



「そうか・・

 その、Hijiriってヤツの居所さえつかめれば、こっちのものだが・・」



「俺たちは、既に狙われているんだ・・

 あの駅の周辺には近寄れないし、

 防犯カメラが設置されている場所での行動も危険なんだ・・


 何時、攻撃されるかわからない・・」



「わかった!俺たちも動いてみるよ!」


「ありがとう。心強いよ!」


野口刑事もHijiriの捜索に協力してくれるという・・








「ところで・・連続女子高生自殺事件だけど・・」

陽子が話し出す。


「出来れば、現場を見てみたいのよ・・

 何か手がかりになる事があれば・・」



「霊視をするのか?」

今西が陽子に訊ねる。


コクリとうなずく陽子・・・・



「こっちも捜査に協力してくれるなら、願ってもないところだよ。」

野口刑事は話に乗ってくれるようだった。


だが・・・


「気がかりな事もあるの・・

 こういう時は、水島さんに相談した方がいいと思うわ・・」



「水島?」


野口刑事が先輩の名前を聞いて訊ねる。


「ああ・・

 頭のいい子なんだよ。

 俺たちは、何度もその子に助けられてるんだ。


 ・・

 でも、どうやってコンタクトをとれば・・」


ヒロシ達中学生は授業の時間で呼び出す事もできないし、連絡も難しい・・

夕方まで待とうかと思ったが・・



「陽子・・霊感ケータイで、ヒロシを呼んでみようか?」

陽子の脇に憑いていた響子が提案する。


「でも・・ヒロシ君達は授業中だし・・」

さすがに、それは思い悩む陽子。



「人の命がかかっているのよ!

 この際、仕方が無いと思うわ!」


「それは・・そうだけど・・」





何やら独り言を言っている陽子を不思議そうに見ている野口刑事達・・

今西にとってはいつもの事で慣れ始めていた。


仕方なしに今西が野口刑事にタネをあかす・・



「実は、

 響子が、そこに居るんだよ。」



「え?!

 響子って・・一橋の事か?

 確か5年前に亡くなったって・・・」



「それが、居るんだよ・・」


「ひょっとして、ユーレイなのか???」


「ピンポン・・だよ・・」


野口刑事も以前に「心霊がらみ」の事件に巻き込まれていたため、陽子の行動には、ある程度理解を示していた。


それにしても、いくら霊感があると言っても、幽霊と口論しているなんて・・普通では在り得ない・・



どうやら、陽子と響子の話がまとまったらしく・・


「今西君。ヒロシ君から水島さんに繋いでもらうわ!」


「また霊感ケータイを使うのか・・」


「ええ」



「霊感ケータイ?」


野口刑事が、その単語に驚く。


「ああ・・ヒロシ君の携帯は本物なんだ。」


「本物??」


何がなんだか分からなくなっている野口刑事に、更に説明を加え始める今西・・




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ