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霊感ケータイ  作者: リッキー
作戦
367/450

93.帰路


「それにしても・・

 遅いですね

 今西さん達・・・」


千佳ちゃんがポツリと言った。


「え?今西さんたち、まだ来てないの?」

僕が千佳ちゃんに訊ねた。


もうとっくの昔に合流していても良さそうだった。

童子との対決が終わり、そろそろ到着しても良さそうなのだが・・


「先輩!

 教頭先生たちは、何処へ行ってるんですか?」


沙希ちゃんが先輩に聞く。


「そ・・

 それは・・・・」


顔を赤らめる先輩。

何処へ行ってるのかは、先輩だけが知っているようだった。


「(僕の)お母さんに聞いてみようか?」

霊感ケータイで、母とコンタクトをとろうとする僕。

今西さんの傍には母が居るので、どこに居るかは直ぐにわかるはずだ。


だが・・


「あ!ちょっと待ってくれる?」

先輩が慌てている。

今西さんの居場所が分かるとまずいのか???



その時、



 トゥルルル・トゥルルル


先生の携帯電話が鳴った。

チラッと見る先生。


「あら、今西さんだわ・・」


今西さんの電話番号が表示されていた。

噂をすれば・・ってトコか・・


 ピ・・


通話ボタンを押した先生・・・


「はい。雨宮です。」




(あ~。先生ですか!)


元気な今西さんの声が聞こえてきた。

こちらで心配されているなんて、全く予想だにしていないようなノー天気ぶりに、少しイラっときた先生が、


「今西さんですか?

 今、何処に居るんです??」



(ああ!

 早乙女さんに駅まで送ってもらったんですよ。

 さっきまで、早乙女さんと一緒だったから、連絡ができなかったけど・・

 今は帰りの電車の中です。)



「え~~??

 駅~~????

 もう帰ってるんですかぁ???」


予想もしていない展開に驚いている先生。半分、呆れた感じになっている。


(はい。

 早乙女さんとの話は済んだので・・)



呆気に取られている先生に見かねて・・


「先生!貸してください!!」

先輩が先生から携帯をむしり取る。



「今西さん!!

 今まで、何処へ行ってたんですか!!

 皆、心配しているんですよ!!」


何ともマイペースな今西の行動に、さすがの先輩もキレた。 


(ご・・

 ゴメン・・・)



「あなたが、この1日、無事で過ごせるように、

 皆が精いっぱい頑張って来たんです!!


 それを、

 あなたは!!!

 よくも軽々しく『もう帰ります』だなんて言えますね!!

 それでも、大人なんですか!?


 自覚が無さすぎます!!!」



(す・・

 済みません!!

 この埋め合わせはしますから!!)



「その言葉!

 覚えていて下さいね!!


 陽子さんからも、しっかり言ってもらいますから!!!

 覚悟してて下さい!!」



(あ・・)



ピ!!!


通話を一方的に切った先輩。


「ハア・・ハア・・・」


息が荒い・・

気が付くと、周りの皆が唖然としていた・・・


「あはは・・

 つい・・頭に血が昇っちゃった・・」


皆の視線を浴びて、場を取り繕おうとする先輩。


  怒ると怖い


そんな空気が漂う中・・


「そ・・そうよね~。

 今西さんが悪いわよね~」


「私から、キツく言っておくから・・」


フォローできたのは、先生と彼女のお母さんだけだった・・・・












電話を切られた今西・・

携帯をしばらく見つめていた後、ポケットに仕舞い込み、電車の座席に深々と座り込む。


「はぁ・・・・」


ため息をもらす今西・・

未来先輩にも怒られ、帰ったら陽子にもこっぴどく叱られるだろう・・


帰るのが怖くなったのだろうか・・。



だが、

それだけでは無さそうな表情だった・・・


電車が発車して、姿が見えなくなるまで、見送ってくれた教頭先生の笑顔が、まだ脳裏に残っていた。


「響子・・オレ・・これで良かったのかな・・・」


ポツリと洩らす今西・・

そこには、誰が居るわけでもなく、独り言を言っているだけにしか聞こえない。

窓の外を見ながら、ずっと黙ったまま街並みが通り過ぎるのを眺めているのみだった・・・・



「今西君・・

 男らしかったわよ!」


今西の肩の上・・宙空に浮かぶ響子が、その言葉に答えた。


今西の長い1日が過ぎようとしている。










教頭先生の実家の門の前・・



「今西君も帰ったわけだし、

 私も、そろそろ帰らなきゃ・・

 水島さん、どうすれば良いのかしら?」


彼女のお母さんも帰る時間だ・・

先輩に、帰りのコースの指示を仰ぐ。


「はい。

 隣の無人駅から電車に乗って下さい。

 あそこなら、監視も行き届きませんから・・」


即座に帰路の指示を出す先輩。

Hijiriの監視を交わしながら都心へ戻るための策だ。


「わかったわ。」


「じゃあ、オレ、

 隣街までレンタカーを返しに行かなきゃだから、送りますよ!」


僕の父が送ろうと言う・・

弘子さんの時と同様、借りた父の名前がバレないように気を使って隣町まで行っていたとは・・



「大丈夫?直人さん・・」


先生が心配そうに声をかけた。


「うん。

 少し、疲労も取れて来たしね・・

 隣町くらいまでなら、何とかなりそうだよ。」


「そんなんじゃなくって・・・」


「え?」


意外な言葉に、一瞬会話が途切れたが・・



「あはは・・送りオオカミにはならないよ!

 陽子さんだって家庭持ちだからね!」


半分、焦っている感じの父・・



「そ・・そうよね・・

 でも、今日は朝から、ずっと二人で車でドライブしてたんでしょう??

 私に内緒で・・」


笑いながら、軽くジャブをとばしている先生・・

ちょっと視線が怖い・・



「いや、

 ずっと二人じゃなかったよ。

 パパも途中から合流してくれたし・・」



パパ・・そうだった・・父と彼女のお母さんの他に、パパが居たのだった・・



「そ・・そうか・・

 あの人も居たんだっけ・・」


拓夢君の手当てをしていたパパが振り返った(らしい・・)。

何故か忘れ去られている存在???



「うう・・

 何か、オレ・・影が薄いな~」


呟くパパ(が居るらしい・・)

その言葉は、彼女と彼女のお母さんのみが聞き取れたようだ。


「まあ、まあ、パパも大活躍だったんですから!

 そう機嫌を落とさずに!」

パパへのフォローをした彼女。


「うん・・

 ミナちゃんだけだよ・・、分かってくれてるのは・・」


彼女に宥められているパパ・・




バタン!


「じゃあ、美奈子。

 後は頼んだわよ!

 皆さん、またお会いしましょう!」


「はい!陽子さんも、お気を付けて!」

「ありごとうございました!」


窓越しに手を振る彼女のお母さん。

父の車が無人駅へ向かって出発するのを皆で見送った。

(パパも一応、お目付け役として同行する事となったが・・)


僕達ゴーストバスター部の長い一日が終わった。








「さて~。一仕事終わったし・・

 これからどうしようか~?

 ヒロシ君!」


彼女が何やら、ねだって来た。ようやく解放された感じだった。

でも、これから、どうするって・・何をしようというのだろう?


「今日は私も霊力使ったから~

 癒されたいな~

 ホントは、今西さんの件が無ければデートできたんだからね!」



「み・・ミナちゃん・・

 相変わらず大胆ね・・

 見かけによらず・・」


千佳ちゃんが突っ込む。



「だってぇ~。

 今日は、ずっとヒロシ君と離れてたんだから~。

 いいでしょ~?ご褒美くらい!」



「ご・・ご褒美・・・」

彼女に迫られ、返す答えに困り果てる僕。


ご褒美って・・何をすればいいのやら・・



「ヒロシ君!私も、ご褒美!!」


顔を赤らめた先輩が、僕にせがんでいた。



「え?」



 「え?」



その場に居た皆が声を無くす。


「せ・・先輩はずっとヒロシ君と一緒に居たんじゃないですかぁ~!」


彼女が反発する。


「一緒に居ただけよ~!

 それ以上は何もなかったんだから!」


「何も無いって、当たり前でしょぅ?

 ヒロシ君は私の彼氏なんですから!」



「私だって、諦めたわけじゃないんからね!

 第一、

 選ぶのは、ヒロシ君でしょ?!」



「わたしの事、ワラ人形で傷めつけたくせに!

 まだ、胸の傷は痛むんですよ~」


彼女が胸をわざとらしく押さえて訴える。


「う!・・痛いところを・・

 それは、この間お母さんを助けて、お相子だって言ったじゃない!」


「え~?

 お母様の件でズッコですかぁ~?」


「そうよ!振り出しに戻ったのよ。」


先輩も負けてはいない・・




「うう~・・・

 ヒロシ君!今日は私も活躍したんだから!

 認めてくれるでしょ?!

 ご褒美ちょうだいよ~!」



「え?」

僕の腕に抱きついて訴える彼女。



「私だって!

 ずっとHijiriや童子のプレッシャーに耐えてたのよ!

 ご褒美くらい・・いいじゃない!」


彼女に感化されたのか、

押さえていたモノが外れたのか・・・

勢いづく先輩だった。


彼女と先輩の二人からご褒美をねだられ、どうしていいのか分からない僕・・

大体、ご褒美なんか、何ができるのだろう?何かプレゼントでも贈ればいいのだろうか?



「あ・・

 じゃあ~。私の家で、恒例の打ち上げホットケーキ・パーティーでもやりましょうか!

 みんな頑張ったしね!」


先生がラチのあかない状態を見かねたのか、助け舟を出してくれた。


「やった~。スペシャル・スィート・メニューにします!」


「あ・・、相変わらずの甘党ね・・あなた・・」


「甘いの大好きですから!」


「昨日もホットケーキだったでしょ?」


「嫌ならいいんですよ~。

 これから、ご自宅へ帰っていただいて・・」


「うう・・い・・行くわよ!」


彼女と先輩の言い争いも、ようやく収まってきそうだった。



「仕方が無い・・また、リベンジしますか・・」

「そうね!千佳ちゃんとの勝負がついてなかったもんね。」


先生と千佳ちゃんの間に火花が飛ぶ。




「あはは・・

 何か、凄いんだね・・ゴーストバスター部って・・」

圧倒されている沙希ちゃん。


「新入部員の歓迎はいつも、こうだからね・・痛ッ!」


「大丈夫?拓夢君・・」


「うん・・まだ、ちょっと痛む・・かな・・」


パパに治療してもらったとはいえ、まだ完全ではないようだった。





こうして、先生のマンションに再び集まり、ケーキパーティーが開かれたのだった。

先輩も、僕達の部活に少し打解けた感じがした。


彼女とは犬猿の仲は、まだ続くような気もするけど・・


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