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霊感ケータイ  作者: リッキー
作戦
361/450

87.休息




 キキー・・



 ガチャ!


僕が、自転車を降りる。


既にこの場所に先輩が来ているはずだった・・


ボラードを乗り越えると、たくさんの子供が遊具で遊んでいた。

その脇を素通りして、階段を駆け上がる。



「ヒロシ君!遅いわよ!!」


「スミマセン~。」


僕と先輩が目指していた場所・・

街を一望できる丘の上の公園だった。


先に来ていた先輩が、ベンチのある場所から街を眺め回している。


「分かりましたか?」


「ええ!あそこよ!」


先輩の指差した方向を見る。



 僕達の学校・・



意外な場所に、童子の居る本陣があったなんて!!



「ここから見る限り、あの場所が一番、電波の捜索がし易い・・

 屋上にかすかに霊気も感じられるわ・・」


「じゃあ!美奈達に向かってもらいますか?」


「いえ・・

 先生達への連絡手段が無いわ・・」


そうだった・・僕と先輩は携帯電話を持っていない。



「じゃあ・・パパ経由で、父から連絡してもらいますか?」




「その必要は無いわ・・

 先生には、ある場所に向かってもらっている・・」


「ある場所?」


「ええ!急ぎましょう!」








その時・・



 チャラララ・チャラララ


霊感ケータイが鳴る・・僕の母からのメールだ。



 教頭先生の元にメールが入って、

 スピードを上げているわ!

 ご両親が出かけるとか何とかで・・

 意外に早く実家に到着するかも!

    響子



「先輩!」


「しまった!今西さんが実家に入ったら、

 私達がフォローできなくなる!」


先生達に先回りしてもらい、今西さんを助ける予定だったが、


「Hijiriなら、メールを偽れるか・・・」


「どうしますか?」


「何とか、時間稼ぎができないか、

 響子さんに聞いてみて!

 今西さんに、憑依するとか!!」


焦っている先輩・・





 ・

 ・

 ・




「えぇ~????

 私に憑依しろぉ~????」


教頭先生の車内で動揺している響子。

憑依なんて、交霊の祭に「された」事はあるが、「した」事なんて全く無い・・

しかも、今西が霊媒体質かどうかがわからない・・

霊媒体質ならば、たやすく入れそうなのだが・・・


死んでいるとは言え、自分は女・・

男性の体に入るのは抵抗があった。



「でも・・

 一か八かか~・・」


無表情で前を見つめている今西の背後から、嫌々ながら、その体に重なる響子。








手を動かそうとしてみるが、動かない。


「やっぱり・・無理かな・・」


除霊の時の感覚を思い出してみる。


『口写し』ならば・・



「う・・


  あ・・・」



何とか、言葉が出る!

今西がトランス状態だったため、意識が乗っ取りやすいのだろうか・・


その様子に気づく教頭先生。


「どうしたんですか?先輩??」



「す・・少し・・・


 ううっ!」


今西の口を通して、響子が答える。

まだ完全な言葉にはならない・・


吐きそうな感じになってしまう。



「え?気分でも悪いんですか?

 どこかで、休みますか?」




・・・・休む・・・


その言葉を受けて、響子に浮かんだ言葉・・・

自動車の進行する先に、ある建物が見えた・・


そこならば、時間が稼げそうだった・・・


躊躇ちゅうちょはしたが、この際、仕方が無い・・・

人命が関わっているのだ。



「あ・・


 あそ



 こで・・・」








目を見張る教頭先生があっけにとられている。


「え?

 あそこって・・・」


そこにあったのは、モーターホテル・・・恋人達がひと時を共にする個室のある施設・・・

顔を赤らめる教頭先生。



「あそこに・・・


 入


 ろう・・・」




「は・・はい・・」


スピードを緩め、ハンドルを切る教頭先生・・


時間稼ぎ・・その目的を果たす為とは言え・・強硬手段をとってしまった・・

罪悪感に苛まれる(さいなまれる)響子・・



 ・・・幸子・・ゴメン・・・








チャラララ・チャラララ


霊感ケータイに母からのメールが届く。



 何とか時間稼ぎができそうよ

 そうね

 1時間くらいかしら・・

   響子


「やった!何とかなりそうですよ!」


先輩に報告する僕。


「凄い・・どうやったの?」





 それは、

 言えない・・・・

   響子




何か訳ありのようだった・・・

その後、先輩と何やらメールでやり取りしていた母・・

僕に聞かれてはまずいことなのだろうか・・


女同士の秘密??






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