表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊感ケータイ  作者: リッキー
作戦
354/450

80.強襲


「などと・・話してるうちに、

 本命が来たようです・・!」


真面目になったパパが振り向く。


「本命?」

陽子が聞く。


「この低級霊を操っている童子!

 いや・・下僕の登場です!」


顔が強張って(こわばって)いるパパ。

緊張が走る。


低級霊の集団が蠢く中、一回り大きな・・狐と女性の中間の姿をした霊・・・




「あれは・・」


陽子には霊感メガネが無いため薄っすらとしか、その霊を確認できなかった。

目を凝らしてようやく輪郭が見える・・




「ふふふ・・・

 あの低級霊を退けるとは、

 余程の強者がいるらしいのう・・・・」


不気味な声がする。

手に力が入るパパ。


「貴様が、低級霊を仕掛けてきたのか!」


恐る恐る、その妖怪に問うパパ。



「その通り・・

 私は星熊童子様の一の弟子・・


 妖妃!


 我が姉の敵・・

 とらせて頂く!」


妖妃の目がギラリと光り、陽子を睨みつける。


「く!あの時の霊の妹か・・!」


陽子が呟く。


高校の時、幸子の夢を乗っ取り、死へと導こうとした霊。最後は陽子が浄化したのを思い出した。その霊の妹?

身構える陽子とパパ・・









「こちらから、参る!!」


妖妃が声をあげ、こちらへと向かってくる。


「バリアーで、どこまで防げる!」


パパが攻撃に備える。



 ビシー!!!!!



バリアーに体当たりしてきた妖妃・・

一歩退くパパ。


「く!持ちこたえられないのか?!!

 霊力はそんなに無いはずなのに!」



「ふふ!私には姉と同様、特殊な能力があってね!・・」


不敵な笑みを浮かべている妖妃。

その言葉に、陽子が反応する。



「オーラ・・


 この霊は、

 オーラを操る能力がある!


 私と同じ能力!」


「オ・・オーラを操る?」


妖妃の攻撃を受けながら、パパが聞いている。



「私には、自分の体に人や霊のオーラを取り込んだり、

 オーラ同士をシンクロさせて、お互いの記憶を共有させる能力がある・・


 この霊は、都会でかき集めた低級霊の霊力を

 自分に取り込んで、霊力を高めている!」



「そ・・そんな事が?」



「タネがばれたみたいだねぇ~。

 まだまだ序の口・・

 本気を出させてもらおうかい?」


妖妃のパワーが増し、徐々に押されているパパ・・

地獄で守備系の特訓をして、童子と同等にまで高めていたはずだった。


「く!もたないのか?」


周辺に蠢いている低級霊がバタバタと倒れていくのに気づく。



「こいつらのオーラを消費しているのか!!」










陽子の前に立ちはだかっていたヒロシの父が陽子に聞いている。



「陽子さん・・

 パパが押されているんですか?」


陽子の会話を聞いて、薄々は気づいていた。



「ええ・・

 低級霊の群れの霊力を利用しています・・

 私も加勢したいけど、

 さっきの結界で力を使ってしまったし・・」



「霊力が・・

 オレには何も出来ないが・・・


 ・・・

 そうだ!」


ヒロシの父が何かに気づく。

ショルダーバックの中から取り出した何本かの小瓶・・


「それは?」


「静江さんが、精力を使い果たした時に効くって言ってました。」


高級精力ドリンク剤を陽子に差し出すヒロシの父。

美奈子や千佳ちゃんが校舎の浄霊をしまくった時に使っていたモノで、少々高級で値がはるドリンク剤だった。


「こんなんで?効くんですか??」


試しに一口飲んでみる・・・

瓶の蓋を回して、喉を鳴らしてドリンクを飲む陽子。


「ぷはぁ~…!

 た、確かに効くかも…

 このドリンク…」


感心して、次の1本を手に取る。










パパの展開したバリアーが切れ掛かっている。


「く!バリアーがもたない!」


バリアーが切れれば無数にいる低級霊が陽子達に襲い掛かってくる・・

死守したいパパだった。

妖妃の攻撃している個所を補強する。



「ふふ・・

 そろそろ疲れが見えてきたようだねぇ・・」


パパの苦痛な表情をあざ笑う妖妃・・

妖妃は低級霊の霊力を消費するだけなので、余裕の表情だ。


その時・・


「何!?」


妖妃が周りの異常に気付く。

周りに居た低級霊が少しずつ消えていた。



「あら・・気づかれたようね・・・」


ドリンク剤で霊力が回復した陽子が低級霊を浄化し始めていた。

ヒロシの父の手も握りしめている。父のオーラも取り込んでいたのだった。


「直人さん・・しっかり!」


「はい・・大丈夫です。」


意識が朦朧と(もうろうと)し始めているヒロシの父・・

陽子の力になろうと精一杯だった。






「く!こしゃくな!」


怒り狂った妖妃が、残りの低級霊の霊力を寄せ集めている。

周りの低級霊がバタバタと消えて行く。


最終手段に入ろうとしている妖妃。


霊力が高まるにつれ、陽子にもその姿が見えるようになってきた。


「パパさん!

 かなり霊力が高まってます!注意して!!」



「はい!」


霊力が膨れ上がっている妖妃にパパがバリアーを切って攻撃に備える。

今にも襲い掛かろうとしている妖妃・・


鬼気迫る・・



「あれだけの霊力・・

 オレに食い止められるのか?」


陽子も回復したとは言え、ドリンク剤程度でしかない・・










その時・・





「色即是空!!」




 バキーーーーン!



「グアーーーーー!!!!」


妖妃が側面から攻撃されて、悲鳴を挙げた。



「間に合ったか!」

陽子が歓喜の声をあげる。



「おのれ・・!何奴!!!!!」


顔を押さえながら立ち上がる妖妃が聞く

(もうバレバレだけど、お約束なので・・)




「お母様!お待たせしました!」

美奈子が黒い数珠を構えて立ちはだかる。


「ミナちゃん!」


「助かった・・」


ヒロシの父とパパも表情が和らぐ。



「く!望月・・美奈子・・か!

 親方様を葬ったという・・」


大物の登場に動揺している妖妃・・



『妖妃!お前の叶う相手ではない!戻るのだ!』


テレパシーの様な伝達方法で星熊童子からの指令が下る。



「しかし!陽子が!!」



『機を見て立て直すのだ!』



「ぎょ・・御意!!」


悔しそうにその場を離れようとする妖妃。



「逃がすか!美奈ちゃん!!」


美奈子の隣に向かうパパ。


「はい!」


翔子ちゃんと連携した時の攻撃を使おうとするパパ。気を溜める美奈子。


「南無大師遍照金剛!南無大師遍照金剛!!」



「く!まだ来るか!・・雷・風・恒!!!」


逃げながら、振り向き様に目くらましを展開する妖妃。



 カーーーー!!!!!!


妖妃の手の平が光り始める。



「南無観世音菩薩!!悪霊!退散!!」


 ビシーーーー!!!!


美奈子の掛け声とともに閃光が走る。




「ギャーーーー!!!!」


妖妃の放った目くらましの光の中、パパが妖妃の体を貫いていた・・

  


「やった!」



「く!!む・・無念・・・」


シュウシュウと音をたてながら散って行く妖妃。


九字を切る美奈子。













「お母様!無事ですか?」


陽子の元に駆け寄る美奈子。


「ええ・・私よりも、直人さんが・・・」



陽子に寄り添っているヒロシの父・・

陽子に自分の生体エネルギーを使わせ、極度に疲労している。


「お父さん!大丈夫ですか?」


「美奈ちゃんか・・ちょっと疲れてるだけだ・・」


「自動車の運転は、しばらく無理そうね・・」


「はい・・少し、横になります・・」


陽子の膝を枕にして草むらに横になるヒロシの父。



3人の元へ、パパが帰って来る。


「さて!私達は、これから、どうすればいいのかな?」



「未来先輩に連絡します!」


美奈子がヒロシの父の携帯でマンションへ連絡する。






先生のマンション。


彼女から電話で連絡があった。父や彼女のお母さんが霊に襲われたものの、彼女が駆けつけ、無事だったという。

安堵する先輩。


「そう・・

 良かった・・・!!」


受話器を胸に当てて、ホッと一息ついた先輩。




・・先輩!これから、どうすればいいですか?・・・



彼女が次の指示を聞いてくる。




「望月さんだけ合宿所へ向かってくれる?

 パパと陽子さんは、そこで待機をお願いします。」 




・・了解です!・・・









「はぁ・・・」


彼女との連絡が終わり、胸を撫で下ろしている先輩。

父と彼女のお母さんが応援に来てくれてはいたものの、それが童子の作戦に利用されるとは思いも寄らなかった。


しかも、彼女のお母さんが一番の標的だったとは・・



「とりあえず、一安心ですね。

 美奈が居れば、何とかなりそうです。」



「ええ・・


 でも、 

 皆を危険な目に合わせているのには変わりないわ・・


 私のペースだと思っていたのに・・

 童子の作戦にはまっていたなんて・・・」



頭を抱えている先輩・・


「今ので、主力はやっつけたんでしょうか?」



「わからない・・

 都会から連れて来た残りの低級霊の集団も消えたそうよ・・


 ・・・

 本陣を叩くなら・・

 今!!」



先輩の目がキッと見開く。

その気迫に、思わずドキっとなった僕・・


でも・・



 バン!!!



勢いよく机を叩く先輩。



「ちっくしょ~~!!!!!!」


先輩らしからぬ口調・・女子中学生の使う言葉ではない・・

拳を握り絞めている先輩。悔しい感情でいっぱいだった・・・


闘争本能がむき出しになっている女の人って・・怖い・・


前に先輩から「嫌い?」って言われたけど・・普通なら引いてしまうかも・・



「パパを!!!

 切り札のパパを使ってしまった!!!

 もう、ここには、

 主力が呼べない!!!


 ・・・・

 私を誘っているのよ!ヤツは!!!!」



「誘っている?」


恐る恐る先輩に聞いてみる。



「この町の何処かに、

 本陣である・・

 童子と、中学生が一緒にいるはずよ!


 高台か、ビルの屋上か・・

 見通しの良い場所に居る!!


 私は・・・、


 そこへ行きたい!


 行って・・

 敵の正体を!!!

 この目で確かめて・・

 暴いて、潰したい!!


 ここまで、

 追い詰めて・・

 手出しが出来ないなんて!!!」


僕と先輩、パパで詮索が出来たという・・


テレポーテーションの様な瞬間移動は、一日に一回しか使えない。


パパが一度、この世に転送された以上、この場へ呼び寄せても時間がかかるだろうし、父たちを守るためには、そこに待機してもらわなければならない。




悔しそうな先輩に、声をかける僕・・


「オレは・・

 行けますよ!!!」


「え?」


僕の提案に、意外な表情を見せた先輩・・・






「だ・・ダメだよ!

 ヒロシ君は!」


慌てる先輩。



「オレには、霊感も何もないけれど、

 霊感ケータイがある。


 今、霊感ケータイを使って連絡がとれるのは、

 僕のお母さんとパパだけど、

 両方供、携帯電話を持っている人と一緒にいる。


 お母さんは先生と一緒だし、

 パパはお父さんと一緒だ。


 先輩が、ここに居て、電話連絡をすれば、

 霊感ケータイで連絡を取る必要もない・・・


 つまり・・

 オレがここにいる必要は全くないんです。」





「それは・・

 そうだけど・・・


 私とは直接、連絡が出来ないのよ!


 それに・・

 襲われたら、

 反撃もしようがない!」



「大丈夫です!

 オレには、


 ・・・・・」



何も無かった・・・


よく考えてみれば、今まで、誰かに頼りっぱなしだったのだ。

霊力も何もなく、よくここまで部長を務めて来ていた・・


しかも、浅はかな知恵しか浮かばない。

何とも、情けない僕だった・・・



『大丈夫』って啖呵を切っても、その根拠なんて、何処にもないのだ。


迷っている僕を見て、先輩が微笑む。




「うふふ・・・

 面白いね・・

 ヒロシ君って!」


「え?・・」


何か、面目丸つぶれの僕・・何も言い返せない・・・




「でも・・

 諦めないって事は、肝心だね!

 どんな時でも諦めないヒロシ君だよね!」




「そう・・


 ですね・・


 いつでも、何か方法があるって・・

 思ってはいるんだけど・・」



諦めないのは良いのだけれど、

良い作戦が思い浮かばない、もどかしさがある。


「ヒロシ君の言葉で、何か策が出そうだよ!

 童子を攪乱させる方策が!」


先輩が再び自信を取り戻している。何やら、ひらめいたようだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ