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霊感ケータイ  作者: リッキー
作戦
352/450

78.縁


だが・・・



「オレには・・・

 他にも・・

 守ってあげたいって・・

 想った人が・・

 いたんだ・・・」


何を言い出すのかと、あっけにとられている教頭先生・・


「社会に出て・・

 日々の生活をしていれば・・・


 そんな人が出てきても不思議はありません・・・

 私も再会するまでは、

 家庭を持っているって・・覚悟していましたから・・」


必死に説得しようとしている教頭先生・・



「いや・・

 その人も亡くなっている・・・


 ある・・

 事件に巻き込まれて・・・」



「ある事件?」


今西は、香織さんの事を思い出していた。


これから付き合おうと・・

将来を誓おうとまで、関係を深めたはずだったが・・

霊感ケータイによって自らの命を絶った香織さん・・・


思えば、自分に関与している女性が、

ことごとく悪霊によって、目の前で葬りさられていたのだ・・・


今、目の前に居る教頭先生にしても、

その危険をはらんでいる。

その事を話していいのかどうか・・迷っていた・・・



「オレに・・

 関わる人が・・

 次々に・・

 亡くなっていく・・・


 お互いに

 将来を誓い合った相手でも・・


 オレの前から

 去っていく・・・


 そんな姿を・・


 もう・・

 見たくない・・」



自分でもどうしていいのか・・分からなくなっている。

そんな今西を繋ぎ止めようと必死の教頭先生・・


「私は・・

 先輩の前からは・・・

 絶対に

 離れません!」



「早乙女さん・・・


 ・・・

 違うんだ!!」




・・・君は

   童子に

   利用されている!・・



 陽子や響子に対して、

 憎悪に似た執念を抱いて、

 それを巧みに利用している・・



そう言いたかった今西・・


そして・・・




   用が済めば・・      

   早乙女さんも

   命を

   狙われる?・・・



心に浮かんだ今西・・

今、守らなければならない相手が・・・

ここにも居たのだった・・・



ずっと、自分を思い続けてきてくれた後輩・・

ゴーストバスター部やオカルト研究会の争いなど、展開している場合ではない。


現に、自分も都心で命を狙われたのだから・・

星熊童子にとって、無防備な教頭先生など、命を奪うのは容易い事だろう・・・












「早乙女さん・・・


 これは・・

 無理な提案なのかも知れないけど・・


 何とか

 和解をする事はできないのかい?」


「和解??!!!」


不意を付いて、今西から意外な提案をされた教頭先生・・・



「ゴーストバスター部や、

 陽子たちと

 分かり合えれば・・


 オレの好きな人達が、

 争う姿は・・

 見たくないんだ!!」


そして、お互いに手を組み、共通の倒すべき相手が居るのだと・・・



「そんな・・・


 い・・・

 今更!


 何を・・

 何を言い出すんですか!!?


 私を

 何十年にも渡って苦しめてきた

 根源なんですよ!!


 今更・・

 和解なんて!!!」


キッと目を見開いて睨む教頭先生。

未来先輩から止められていた事だった・・


逆上している教頭先生・・・




その様子を体育館の扉から覗いて見ている美奈子達・・・

話し声はしているが、遠くて詳しい内容は聞き取れない。

それでも、教頭先生が感情を露わにしているのは伝わって来ていた。


「先生・・

 あの二人・・ 

 ちょっと雲行きが怪しいですよ・・」


千佳ちゃんが率直に感想を言う。


「そ・・そうね・・・

 ラブシーンどころか・・

 話がこじれてる感じね・・」


答える先生・・以下、先生と千佳ちゃんの話が続く・・



「今西さんも、

 先輩から、あまり教頭先生を刺激しない様にって、注意されてるはずですが・・」


「『お堅い女』だから・・


 あのオンナは・・

 仕事『命』のインテリだからね・・」


「さっきまでは、いいムードだったんですがね~」


「今まで仕事以外で男と付き合った事ないのよ・・

 男の教員の人達からも敬遠されてるし・・

 何で、今西さんを呼びだしたのか・・」


半分呆れて、半分、憐れんで(あわれんで)いる雨宮先生・・

他人の恋路の事になると、こうも率直な意見が言えるのだろうか・・






千佳ちゃんと先生の会話を尻目に、

宙空に浮いて、見守っている響子が、美奈子に耳打ちしている・・


「美奈ちゃん・・


 教頭先生は、高校の時から今西さんが好きだったみたいなの・・


 私と陽子が、童子との対決に今西君や幸子さんを巻き込んでしまった事が


 教頭先生の恨みをかってしまった・・


 根が深いわ・・・


 私達にも責任はある・・」




「そうですか・・・


 お母様も、あんな性格だから、

 教頭先生にも強気な発言をして、反感をかったのかも知れませんね・・


 『霊の世界はある!』って・・

 博士も、同じくお母様に反論してたし・・」



「陽子も知らないうちに敵を作る方だから・・

 根は良いんだけど・・ 

 相手が教頭先生なら尚更、反発するかも・・」


「確かに・・

 性格は似てるかも知れませんね・・」


体育館を覗きながら、ブツブツと独り言の様な事を言っている美奈子。




「副部長・・

 部長さんのお母さんと、内緒話ですか??」


沙希ちゃんが突っ込んできた。


「沙希ちゃん・・」


「お母さんは、さっきまで教頭先生の話を聞いてたんですよね・・・

 何か、分かった事があったんですか?」


「ええ・・

 教頭先生も、色んな事情がありそうだって・・・」



「そうですか?

 あの教頭先生も、学校での地位を利用して、

 やりたい放題に見えるんですけど・・」



「そこまで行くのに、

 苦労したみたいなの・・・


 研究に執念を燃やすようになったのも、

 私のお母様の影響が強いみたいで・・」



「私は、副部長の『お母様』に会った事ないですけど・・ 

 (千佳)先輩の話だと、教頭先生に似たようなモノがあるって・・

 聞いてますが・・・」



先程の響子との会話と同じような内容になっている・・・
















「はっくしょーい!!」



合宿所から少し距離を置いて道路沿いの茂みに停車している1台の乗用車・・

ヒロシの父の運転する車内でくしゃみをした陽子・・


「どうしたんですか?陽子さん・・・」


「うう・・

 何か・・

 寒気が・・・」


「また、低級霊ですか!?」


ハンドルを握りながら周りを覗う父・・

一瞬、緊張感が漂うが・・


「いえ・・・

 低級霊では、無いみたいです・・

 誰か、私の噂をしてるみたい・・・」


「そ・・

 そうですか・・・」


その言葉に少し、安心した。

粗方あらかた、ゴーストバスター部の面々が噂をしているのだろうと察した父。


何故か、ヒロシの父に対しては敬語を使う陽子・・

響子の元旦那と言う事で、一目を置いているのだろうか・・・






「ふふ・・」


陽子をチラッとみて、笑みを洩らすヒロシの父。



「どうかしましたか?」


「いや・・

 陽子さんと、こうしているのも、不思議な感じがしてるんです。」


「そうですね・・

 響子には、ちょっと悪い気もしますね・・」



「いずれ、ミナちゃんとヒロシが一緒になれば、

 不思議でもなくなるんでしょうが・・」


「美奈子は、ヒロシ君と結婚するのが夢でしたからね・・・」



「考えてみれば、おかしなものですね・・・」



「え?何がですか?」



「家族というモノですよ・・・

 私の家族は、俺とヒロシ以外は血は繋がっていない・・

 静江さんとヒロシは、全くの赤の他人です。


 お宅の場合は、美奈ちゃんを通してでしか、陽子さんと住職も血は繋がっていない。


 この二つの家系が、ヒロシとミナちゃんで一緒になった場合・・

 血の繋がっている者が、少ないんです。


 殆どの人の関係が赤の他人なのに・・・

 『家族』や『親戚』同士になる・・


 考えてみれば不思議だなって・・」








「そうですね・・・


 人間と言うのは、そういうものですよ。

 誰かと誰かが愛し合って、一つになるという事は、

 その家系同士が『繋がる』という事です。


 友達同士でもそうです。


 全くの赤の他人同士が、

 この世で『縁』というモノができて繋がって行く・・・

 それが、人間の世界の根っこにあるんです。」



「人間の世界の根っこですか・・・

 人間は、本来、『繋がって行く』生き物なのでしょうか・・」



「どんなに強い人でも・・

 一人で生きて行ける人は、いません・・・


 都会へ行って見てきた風景を思い出します。

 電車の中では一人一人が他人同士でお互いが距離を置いているのですが、

 携帯電話を使って、その中では誰かと繋がろうとしている・・。


 皆、一人で生きているつもりでも、

 心のどこかでは、『誰か』を求めているんです。」



「静江さんも、同じような事を言っていました・・

 都会ならば尚更、寂しい思いをしている人も居るのでしょうね・・


 その寂しさを癒してくれるのは、

 やっぱり、

 人間なんだって思いますよ。」



「ただ・・

 この世に生きていて、誰とでも繋がれるモノではない・・

 相性のいい人も居れば、

 喧嘩をする人もいる・・


 喧嘩をする程、仲が良いとは言いますが・・

 実際には、本当に相性の悪い仲もあるんです。


 逆に同じ時代に生きていても、絶対に遭わない人達も居る。


 この世に生まれて、『出会う』確率は、

 かなり低いのかもしれない・・


 それも、これも

 人の『縁』です・・」



「不思議でも何でもないんですね・・・

 俺と陽子さんも、響子を通して繋がっている・・


 ヒロシとミナちゃんの親同士でも繋がっている・・

 『縁』があったって事ですか・・」


「ええ・・

 でも、

 美奈子は・・・」


急に暗い表情となる陽子・・



「何か・・

 あるんですか?」


意味深な陽子の言葉に、不安になったヒロシの父・・





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