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霊感ケータイ  作者: リッキー
作戦
351/450

77.告白


教頭先生が話を続ける。


「明日から、校舎内の『霊』の消去作業が始まります。

 博士の『消霊装置』によって、校内に点在していた荷電粒子の除去を行い、

 学校を浄化する。


 この作業で、校内で噂されていた『心霊現象』が無くなれば、

 博士の理論は正しいと証明されるでしょう・・」


「明日から?」




「この事は、我が部や数名の関係者しか知りません・・

 この情報を先輩に流した事が、どういう事かわかりますか?」



いきなり、オカルト研究会の機密情報を洩らした教頭先生。

今西はゴーストバスター部に繋がっていると認識しているはずだった・・・



「オレを・・・


 試して・・・

 いるのかい?」



「はい。

 先輩が、この情報をゴーストバスター部に流すか流さないか・・


 あの部に肩入れするのか・・


 中立を守るのか・・・


 先輩が、

 私の敵であるのか・・そうでないのか・・・」


今西を真正面から見つめる教頭先生。



「もし・・


 オレが・・

 この情報を・・

 流したら・・・」


ポツリと言った今西・・


キッと目を見開いた教頭先生が、今西に駆け寄る。

今西の胸元に飛び込んだ教頭先生・・




「嫌です!!

 私から・・

 離れないで!!!」




「さ・・


 早乙女

 さん・・」


胸元に顔を押し付けている教頭先生が訴えてくる。


「ずっと・・・


 ずっと、待っていたんです。


 先輩が来るのを・・

 この日が来るのを!!


 先輩が行ってしまったあの日から・・


 私・・

 先輩の事が・・

 好き!!」



今西に告白した教頭先生・・

見え上げた瞳に涙が溜まっている。

学校では「お堅い」と評判のインテリ女・・

だが、愛おしい人の前では、可愛い少女の様な表情を見せていた・・


普通ならば、そのまま、抱き寄せるのだろうか・・


だが、今西には出来なかった。



「お・・

 オレには・・」



目をつむる・・




「分かっています!


 まだ、

 先輩は

 副部長の事が忘れられないって・・・」


「幸子・・」













「早乙女さん・・・」


今西の脇に憑いていた響子が呟く。

その姿は、今西にも教頭先生にも見えない。


それまでの会話を黙って聞いていた響子だったが、教頭先生の過去を打ち明けられ、衝動にも似た感情が湧いて来ていた・・


高校から、ずっと今西を慕ってきていた事


自分や陽子を恨んでいる事・・


博士と共に研究を重ね、ようやく日の目を見る所まで来ている事・・




「私達は・・

 いったい・・

 何のために・・

 戦って来たのかしら・・・」



自分や陽子、幸子が童子と戦い、犠牲を出してきた・・


そして、

ここにも人生を狂わせた人がいたのだと・・




今西達を離れて、体育館の外れに歩いてきた響子。

体育館の扉が開かれ、外の景色が臨めた。


山の中の合宿所・・


グランドの向こうには小高い山が連なり、木々が葉を落とし始めている。


澄み渡る空・・

足元に暖かい陽が差してきている。

昔と変わらない景色・・




「陽子・・・

 どうすれば・・・」


自分が死んでこの世に居ないながらも、

皆に幸せになってもらいたい・・

切に願う響子・・・












丁度その時・・


山道に車を置いた先生達が合宿所へたどり着いた。

林が開けた場所に広がるグラウンドと奥にこじんまりした校舎がたたずむ。


美奈子と拓夢君が霊からの攻撃を警戒している。


待ち伏せをされていても不思議でないという先輩からのアドバイスがあった。


「どう?合宿所に、霊は居そう?」


先生が聞いている。



「いえ・・

 今のところは、見当たりません・・」


「さっきみたいに、低級霊が潜んでいるとか・・・」


「それも、警戒してますが、

 感じられません・・・」


「そう・・」


ホッとした先生。

教頭先生の車を横に、合宿所へと向かうゴーストバスター部の面々・・・



「あ!あそこに、部長のお母さんが居ますよ!」


「え?何処?」


拓夢君が響子の姿を見つけたようだ。

美奈子が何処かを訊ねる。



「体育館の所です!」


体育館の扉が少し開いた所に、こちらに手招きをして合図をしている響子の姿があった。


「ほんとだ!」


美奈子には見えたが、当然、他のメンバーには見えない・・


足音を押さえて忍び寄る。


それに続く先生達・・




「お母さん。お疲れ様です!」


美奈子が響子に話しかける。


先生達にとっては、中空に向かって独り言を言っているようにしか見えないが・・


「久しぶりねミナちゃん・・」



「はい。


 ・・

 あれ?

 どうしたんですか?

 ちょっと元気ないみたいですが・・・」



死人に元気も何も無いのだろうが、響子の『気』が少し暗い感じなのだろうか・・

先程の教頭先生の告白を聞いて、少々落ち込んでいる響子。



「ちょっとね・・」



何かワケありな事は分かった美奈子。

それ以上は詮索しない事にした。




「今西さんたちは何処へ行ったんですか?」


千佳ちゃんが響子に聞いた。



 タイイクカンノ、ナカヨ・・

   キョウコ



千佳ちゃんの持つポケベルに響子の答えが表示された。

そっと中を覗くゴーストバスター部のメンバー達・・・





体育館の中央で、教頭先生が今西に寄りかかっている姿があった。

今西は教頭先生に手を触れずに、俯いている。



「何?アレ・・・

 いきなり、ラブシーンなの???」


雨宮先生が、意外な展開に驚いている。


「シー!!」


拓夢君達から静かにするように注意された。

面目ない表情になる先生・・・




今西の胸に顔をうずめながら話を続ける教頭先生・・



「副部長が亡くなって・・

 元気の無い先輩の姿を・・

 ずっと見ていました・・・


 そんな先輩を慰めたかった・・

 励ましたかった・・


 でも、

 できなかったんです。


 先輩を部長の役から降ろした私が、

 縁り(より)を戻そうなんて、

 部員の前ではできなかった・・


 それに・・

 今まで付き合っていた人が、

 亡くなったからって・・・


 代わりに付き合おうなんて・・

 虫が良すぎます・・


 先輩の心の中には、

 副部長が居る・・・


 どうやっても、叶わない相手です。


 副部長の存在が、

 私の中で整理できるまで・・・

 時間がかかった・・・


 始めは・・


 亡くなっても直、

 先輩の心に大きな影響を与えている副部長に

 嫉妬していた・・・


 あれだけ、仲が良かったんですから・・


 でも・・・


 時間が経つに連れ・・・

 『副部長も受け入れよう』って・・

 思えるようになってきたんです!


 まだ・・

 少しは嫉妬の念も残っているけど・・・」




「幸子の・・

 事も・・?」



「はい・・・・。」


見上げて今西を直視する教頭先生・・・・


幸子さんの事も全て、受け入れようと言う教頭先生の言葉に、けなげさと愛おしさを感じた今西・・

そこまで、自分の事を考えていてくれていたなんて・・・


世の男子諸君は、こんな女性を目の前にしたら、直ぐになびいてしまうのだろうか・・


「インテリ女」とは言われてはいるが、頭脳明晰で、家柄も良いお嬢さん・・・なのだから・・・





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