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霊感ケータイ  作者: リッキー
作戦
350/450

76.合宿場で

山の中の合宿所の体育館・・



 バン



  バン



   バン



 サ・・



バスケットボールをゴール目がけて投げる今西。

放物線を描いてゴールのネットの脇をかする・・


 バン!


落ちてくるボールを追いかける今西。


「いや~・・

 オレ、運動部じゃないからな~」


言い訳がましい事を呟きながら転がるボールを拾う。


そんな今西を暖かい視線で見守る教頭先生。


その胸元にかけられた首飾り・・


丸い赤い石の形をしているが・・



 ピ・・



   ピ・・



その首飾りに埋め込まれた発信機・・


都心のHijiriから送られた首飾りを身に着けている事で、大谷先輩の扱う計測器で教頭先生の居る場所が逐一分かるようになっていた・・











教頭先生が今西に話しかける。


「あの・・先輩・・・」



「ん~?どうしたの?早乙女さん?」


ドリブルをするのを止めて、教頭先生の方を振り向く今西。



「高校の時の・・

 オカルト同好会の事なんですが・・・」



「ああ・・

 オレが部長を辞めてしまった・・


 あの時は

 君にも済まない事をしたって・・

 思っているよ。


 途中から押し付けてしまった・・」




「私は、

 押し付けられたなんて思っていませんでしたよ。


 あの時の

 部員を留めるには

 ああするしか、

 方法が無かったんです。」



再び、バスケットのゴールを目指してドリブルを始める今西。

ゴール前で飛び上がり、リングにボールを放り投げる。


 バス!


ネットに入らないボール・・

あまり得意でもない様だ・・


落ちたボールを追いかける今西。











「君は、オレの居なくなった部活を引っ張って行ってくれた。

 そればかりか、

 博士との繋がりも強化して、

 独自の研究を進めて行った・・


 今回の

 オカルト研究会の成果は

 オレも目を見張るものがあったよ。」




「それほどでも・・

 ありませんよ。」


今西に褒められ、頬を赤らめている教頭先生。


「ふふ・・

 相変わらず控えめだね・・


 実力はあるのに・・

 それが、君の凄い所だよ・・」



「そうでしょうか・・


 いつもは、皆から一線引かれてます。

 硬い女だって・・思われてると思います。

 厳しい事ばかり言ってるし・・」





「??

 そうなのかな・・


 柔らかいって・・思うけど・・」



「それは・・

 ・・・・」


黙ってしまった教頭先生・・




  ・・・


  それは、


  あなたの


  前だから


  ・・・




心に呟いた。



顔を赤らめている教頭先生を見て、微笑む今西。



「オレには、

 皆を引っ張っていく器量が無かったんだよ。

 個人プレーに走ってしまった・・


 それは、

 反省している。」



再度ドリブルを始めてゴールに向かって走り出す今西。


 バン

  バン・バン・・

  シャ!


ボールを両手で掴んで飛び上がり、ゴールへ目指して投げる。


 バス!!



今度は入った。

表情が和らぐ今西。


だが・・



その姿に、教頭先生が叫び声をあげる。



「反省しなくって、いいですよ!!」




「え?」

振り向く今西。








「先輩が反省する事なんてないです!

 先輩は、自分の夢に向かって行ったんです。


 それは・・


 それで、

 立派な事だと思う。」




「立派?

 このオレが?」


キョトンとしている今西。


「はい!

 高校を卒業して、雑誌社に入って、活躍してるじゃないですか!

 夢を実現させたんですよ!」



「夢・・・

 ・・」


ゴールを見つめる今西・・



「そうだな・・

 夢を実現させたのは・・

 事実かも知れない・・


 でも、

 オレの夢は、

 それで終わってしまった。」



「それで・・

 終わった?」



「雑誌の記者になるのが夢で、

 部活でも頑張っていた・・


 あの頃はね・・

 目標に向かって、

 ガムシャラに突き進んでいた・・・


 今のオレは・・

 目標を失って・・

 夢すらも無い・・


 ただ、

 日々の役割をこなすだけの存在・・

 抜け殻みたいなモノだよ。」




「そんな事ないですよ!

 いつも雑誌の記事を読んでますよ!

 ちゃんとした文章を書いているのに!!」




「あれは・・・

 お決まりの文言を並べているだけだよ・・


 こうすれば、

 読者が興味を引くだろうって・・


 ただ、

 それだけさ・・

 惰性みたいなもんだよ・・」



「そんな事・・

 無い!!


 それじゃあ・・

 あんまりです!!


 それじゃあ・・

 私は、一体・・


 何の為に・・これまで・・・」


教頭先生の目が訴えている。


「何の為?

 君は君で、凄い成果をあげたじゃないか。

 俺よりも凄い人だよ。君は・・」



「そんなんじゃないです!!

 私は・・


 私は・・」


教頭先生の目に、涙が溢れて来ていた・・


「早乙女さん・・」



泣き出しそうな表情に、落ち着かせようとしている今西。

そんな今西をキッと睨む教頭先生。何やら決心をした表情だった。


咄嗟の行動に、ドキッとなる今西。


「私は!


 ・・・


 先輩を・・

 振り向かせたかっただけです!!!」



「オレを??」






「先輩が、あの霊能者の二人の元へ行った時から

 『心霊の世界』なんて、無いって事を証明して

 先輩を取り戻すのが、私の目標になったんです。


 それには、博士の理論が正しいって事を

 世に知らしめればいい・・


 オカルト同好会の仲間を有力な研究機関に送り出し、

 私も博士の元で研究を続けた。


 父親の策略で教師になっても、

 独自のネットワークを使って、

 学校にも研究の場を作り上げた・・


 教頭の地位を得て、

 オカルト研究会を作った!


 私の持てる・・

 全てをかけて来た・・・


 私の血と汗と努力の結晶!


 それは全て・・

 博士の理論の確立を目指すため・・


 先輩を振り向かせるためなら・・

 苦にもならなかった。


 先輩を奪った、あの二人を

 私の目の前にひれ伏させたかった・・・」



「あの・・

 二人?」



「そう・・・

 平和だった部活と・・

 私の大切な先輩を奪った・・・


 望月 陽子と


 一橋 響子!」


憎悪の感情をむき出しにしている教頭先生。

その気迫に、恐怖心すら覚えた今西。

この執念こそが、教頭先生を駆り立てた原動力だと察した・・




「それも、もう少しで、目的が達成される所まで来ているんです!」


教頭先生が先程と打って変わって、嬉しそうな表情になっている。



「博士の理論と、ハイテク技術によって、

 博士の提唱している『霊』の存在が

 見れるようになってきている。


 そして・・

 人類が今まで『心霊』として

 恐れてきたモノが何なのかが

 立証されようとしているんです!」



「早乙女さん・・・」


それ以上は言えなかった今西・・

教頭先生の言う技術が童子やHijiriの計画上に寄るモノなのだと・・


ひょっとしたら、自分やゴーストバスター部だけでなく、教頭先生の命すらも危ないという事・・


伝えなければならないと思ったのだが、

未来先輩から、タネを明かして、教頭先生を刺激しない様にと口止めされていた。


本当の事を言ったとしても、本気にはしてもらえないだろう・・

いや、逆上してしまう可能性が高いと・・






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