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霊感ケータイ  作者: リッキー
作戦
342/450

68.スタンバイ



 トゥルルルルル・・・・・



新幹線のホーム・・

今西が東北行きの特急車輌に駆け込む。


「やべえ、やべえ!」


 プシュー


乗り込むと同時にドアが閉まり、列車が動き出す。


「ふぅ・・

 早乙女さんと・・

 デートかぁ・・


 水島さんの計画通り行ければいいけどな・・」


呟いてデッキから客室へと向かう今西・・


若い女性が窓際で一人で座っている隣の席が丁度空いていたので、挨拶して座る。


その姿を隣のデッキのドアから覗いているコートを羽織り、ハンチング帽子を被った人物・・

今西の行動にニヤリと笑っている・・


長い1日の始まりだった。













教頭先生の実家・・


「おはようございます!」


浴衣を着た博士とパジャマ姿のユミちゃんが洗面所で顔を洗っていると、後ろから教頭先生に声をかけられた二人。



「おはようございます・・教頭先生・・」


「おはよう。早乙女君・・」


何だか、ルンルン気分の教頭先生・・何時になく軽やかな後姿・・



「何か・・いい事、あったんですかねぇ?」


「さあ・・のぅ・・」


「昨日の事でしょうか・・?」


「そうなのかも知れぬのう・・」


昨日の夕食で、父親に気に入った人を連れて来ても良いと言われた・・

その事なのかと思っている二人・・



「ところで、博士、今日の予定はあるんですか?」


「いや・・特には考えておらぬが・・・」



「じゃあ、たまの日曜日くらい、一緒に何処かへ行きましょうよ!」


「ふむ~、そうじゃのう・・」



「息抜きくらいしないと・・頭が滅入ってしまいますよ。」


「息抜きか・・」


考え込む博士。確かに、連日のデータ入力と機材の調整で、ずっと休んでいなかった。

ユミちゃんの提案も一理ある。




「駅前にオシャレな喫茶店がありました。

 行ってみませんか?今日は、私も帰らなきゃだし・・」


「そうじゃな・・

 ところで、ユミちゃん。」



「はい?」



「ちゃんと、勉強道具は持って来たんじゃろうな?

 宿題は?」



「も・・持って来てます・・」



「ならば、喫茶店で見てしんぜよう!

 久々に受験勉強が見れるのう!

 不得意科目の因数分解はどうかな?」



「は・・はい・・・」


意気揚々と張り切る博士。


幻滅しているユミちゃん・・

まさか、こんな所で博士に勉強を見てもらう事になるとは・・・


一緒にお出かけ・・

とは程遠いのであった・・


ユミちゃん・・

この博士は一筋縄では行かないのだよ・・・















教頭先生の実家の近く・・


門から少し離れて、先生の車が停車している。

車内から後方にある門をシートの上から双眼鏡を覗く美奈子。


「う~ん・・まだ動かないですね~。」


「そうね・・水島さんから連絡があるまで、待ちましょうか・・」


「そうですね。」


双眼鏡を下ろして、前を向き、助手席のシートに深々と座る美奈子。



「あ~・・今頃、ヒロシ君は先輩と一緒なのか~・・

 何だか、騙されてるような気がします・・」



「まあ、まあ・・

 これでも食べて、機嫌治してよ・・」


先生が何かの袋を美奈子に渡す。


「何ですか?これ・・」



袋を開いて、手を突っ込む・・


「あ~!!これ、駅前に売ってる大判焼きじゃないですかぁ~。

 アンコがたっぷりなんですよ~。あそこの大判焼きは・・


 あ!

 クリームとチーズもある~。」



「気に入ったかしら?」


「はい!」


餡子入りの大判焼きをほおばる美奈子・・

未来先輩の指揮の基・・先生と美奈子で、教頭先生の監視をしているのであった・・
















先生のマンション・・


僕と先輩が食堂のテーブルに並んで座っている。

先輩の手元には、電話機が置かれ先生との連絡が直ぐにつくようになっていた。

僕は霊感ケータイを握りしめ、母との連絡を取る役になっている。


新幹線の時刻表を見ている僕に、先輩が話しかける。


「今のところは、大丈夫そうね・・」


「はい。今西さんが発車時刻ギリギリで飛び乗ったみたいです。」


「ならば、後をつけられていても、振り切れたはずね・・

 念のために、お母さんに連絡してくれる?」


「はい。」


ピ・・


僕は霊感ケータイで母へメールを送る。















宙空に浮いている響子が、ピクンと反応する。

ヒロシからのメールが届いたようだった。



 お母さん、今西さんの廻りの様子はどう?

    ヒロシ




「周りね~」


呟きながら辺りを見回す。


新幹線の車両の中・・

今西の直ぐ隣に浮いている響子が、周りの乗客の様子や霊を見張る。


満員ではなく、まばらにシートに座っている客室内。

乗客の一人一人に背後霊や守護霊が憑いてはいるものの、童子やその手下の様な悪霊は存在しないようだ。



「今の所、異常は無いわね・・。」


陽子から離れ、今西の周囲を監視する役に徹している響子だった。

当の今西は、響子が憑いている事を知っていて、少し緊張気味だ。


常に自分の行動が響子に監視されてる。

しかも響子は幽霊なのだ・・


シートに座って、上を見上げたまま、動かない今西・・


「う~・・水島さんの作戦とはいえ・・

 やっぱ、響子が居るってのも・・

 落ち着かんな~・・」


呟く今西。


隣の女の人が不思議そうに見ている。

『変な人』とでも思われているのだろうか・・・




「うふふ・・そんなに固くならなくても、いいのに・・・」


響子が宥めてはいるのだが、その声は今西に届かない。

霊感の無い今西には、響子の姿も見えないのだ。

誰かに監視され続けながら行動するのは疲れそう・・・


















拓夢君の家の玄関前・・


「おはよう~」


「おはよう。おねえちゃん!」


千佳ちゃんが挨拶をしてくる。張り切っている感じの拓夢君。



「何か、元気ねぇ・・」


「うん。お姉ちゃんから直々に頼まれるのも珍しいから・・」



拓夢君達にも今西と教頭先生のデート(?)の監視役の要請が来ていたようだ。


「そうね・・先輩の作戦か・・

 何だか、ワクワクするね。」



「僕は、サスマタを持って行けば良いみたいですね・・

 そういえば、源さんはどうでした?」


「昨日聞いたら、指南しても良いって!」


「そうですか!頑張らなくちゃ・・」


腕時計をチラッと見た千佳ちゃん。


「それにしても、あいつ、遅いな~」


「え?

 沙希ちゃんの事ですか?」


「早く、出発しないと、今西さんが来ちゃうよ!」


「そうですね・・」


「大体、一番遠い私が早くついてるのに、

 何で、近場のあいつが遅れてるのよ!」


納得のいかない千佳ちゃん。

二人で沙希ちゃんの家の方を眺めていると・・


「あ、来ましたよ!」


噂をすれば、何とやら・・

慌ててこちらに来る沙希ちゃんの姿が見えた。




「お、おはようございます!」


ハアハアと息を切らして沙希ちゃんが走り込んできた。


「おはよう!沙希ちゃん。」


「こら~。遅いぞ~!」



「すみません!ちょっと遅くなっちゃった・・」



「『ちょっと』どころじゃないぞ!

 何してたのよ!もう~!!」


「だって・・何着てこうか迷ったんですよ~

 教頭先生とかも来るわけでしょ?

 分からないようにカモフラージュしなきゃって・・」


「とか言って、いつもよりいい服着てるじゃない!

 かえって、目立つじゃないのよ!」


「そこは~

 意外性もあるじゃないですか~

 まさか、こんな格好をしてるとはって、裏をかいてですね~」


「意外性~?

 制服じゃなきゃバレないでしょ~?」


「え~?いやですよ~

 せっかくの日曜なんですから~」


「全く!

 今日はピクニックじゃないんだから!」


「そんなこと言われても~」


千佳ちゃんと沙希ちゃんの押し問答に、ラチもないと悟った拓夢君が止めに入る。


「まぁまぁ・・

 みんな集まったから、行こうか!」


拓夢君、千佳ちゃん、沙希ちゃんの3人で先輩に指定された場所へと出発する。



このグループも少し不安な面もあるような・・

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