67.マンションにて・・
ガチャ・・
「只今~。」
僕たちがマンションに帰って来る。
「おかえりなさ~い」
彼女が玄関まで出迎えに来た。
「ただいま!美奈!」
「おかえり!ヒロシ君!」
彼女の嬉しそうな表情を見て僕もホッとした。
でも、僕の後ろに居る先輩を見て、少し表情が曇った・・
「おじゃまします・・」
先輩と彼女の目が合う。
『また来たの?』みたいな顔をしている彼女・・
先輩も、ちょっと不満そうな顔をしている・・
見えない火花が飛び交っているのだろうか?
さっきは、彼女を受け入れないと・・って言ってた先輩・・
言葉の上では分かっているつもりでも、実際に本人を目の前にすると、抵抗があるのだろうか・・
「あ、望月さん、お土産だよ~」
先生がコンビニのビニール袋から取り出したスイート・・
何とか、気まずい雰囲気を打破したい。
「あ~!これ、プレミアム・スィート・ロールじゃないですかぁ~」
目の色を変えた彼女・・
嬉しそうにクリームのたっぷり盛られたロールケーキを持って食堂まで下がっていく彼女。
僕と先輩が目を合わせる・・
半分呆れたような、半分ホッとしたような表情の先輩。
う~ん、甘いもので釣れるのは良いが・・いつまでこの手が使えるのか、怖いな~。
食堂のテーブルの上に、おでんと残りの肉まんを広げる先生。
ロールケーキを嬉しそうに眺めている彼女。
「そう言えば、水島さん、お家の方には黙って来たんでしょう?」
「はい・・ちょっと出てくるつもりだったから・・」
「私が、連絡しておくわ。
心配しているだろうから・・・」
「すみません・・」
先輩の家に電話をかけ始める先生。
僕と先輩が、テーブルの椅子に座る。
「さて!作戦会議といきますか!」
先輩が会議の開始を促す。
僕は、先輩の言われるがままに動こうと思っていた。
「会議~?」
彼女が不思議そうに訊ねる。
「明日の今西さんの対応よ。
教頭先生へのね・・・」
「これからですかぁ?」
「ええ。ヒロシ君のお母さんに中間で伝えてもらいたいのよ。
望月さんにも、手伝ってもらいたいの・・」
先輩が彼女に協力を要請している。
それも、かなり気を使って・・
「私に?」
キョトンとしている彼女・・
「美奈・・オレからもお願いするよ。」
「ヒロシ君・・・」
半分不安そうに僕を見つめる彼女だった。




