62.アドバイス
昼休み、屋上で・・・
「あんな言い方、しなくてもいいじゃない!!」
響子が陽子に激しく抗議している。
腕組みをしながら、聞いている陽子・・
内心、今西に酷い事を言ってしまったと思っていた。
だが・・
「今西君には、悪いけど・・
これ以上、立ち入って欲しくない・・」
頑なに今西を拒む陽子。
「何が気に入らないの?
今西君は、私達をちゃんと理解しているのよ!
単なる興味本位じゃないわ!」
「き・・
気に入らないわけじゃない・・
私は、あの人達の事を思って言ってるのよ!」
「今西君を思って?
そんな感じに見えないわよ!
だいたい、
今西君達は低級霊じゃないのよ!
あなたには、自分以外は皆、身分が低いように思えるの?
霊力が強いからって、
人を蔑まして(さげすまして)るんじゃないわよ!
その態度、良くないよ!!」
「そんな事ない!
私は・・」
「あの悪霊と対決するにも、
私達だけでは力不足なんでしょう?
今西君の助けも必要なはずよ!」
「そ・・
それは・・・」
「何で、素直に、助けを求めないのよ!
無理してあなたへの負担が増えるだけでしょう?
何で、あなたは何時もそうなの?!」
陽子と響子が言い争いになっている。
その時・・
ガタ!
塔屋の扉が勢いよく開いた。
「今西君!」
響子が気づく。
今西が陽子達の前になだれ込んで来た。
「頼む!オレも除霊に参加させてくれ!
幸子を巻き込んだ責任もあるし・・
幸子を守りたいんだ!!」
黙って見ている陽子。
「陽子・・私からもお願いよ!」
響子も今西側につく。
「頼むよ!
何でも言う事を聞くよ!!」
その場に座り込み、陽子に向かって土下座をする今西。
「この通りだ!!」
「陽子!
男子が、ここまでするなんて・・
余程の覚悟よ!!」
響子も今西をフォローする。
ニヤッと笑みをもらす陽子・・
「さっき、何でもいう事を聞くって言ったわね・・・」
「ああ!何でも聞くよ!」
「じゃあ、この件から足を引いて!!
もう、二度と私達に関わらないって、約束して!!」
「そ・・そんな!」
キッと目を見開く今西。
「陽子!あなた!!」
響子も耳を疑った。
卑劣なまでの陽子の暴言・・・
いくら親友でも、許せなかった。
でも、陽子の目に涙が溜まっていたのに気づく。
「目障りなのよ!
もう、これ以上、犠牲者を出したくないの!!
ズカズカと私の中に・・
入って来ないで!!」
そう言って、階段を駆け下りて行く陽子。
「陽子!!」
「望月・・」
その姿を、見つめるだけの響子と今西だった・・・
小早川の勤める小高い丘の上にある寺・・
午後の授業を欠席して、とぼとぼと歩いてきた陽子に気づく小早川・・
ほうきを動かす手を止める。
「あなたは・・」
「小早川さん・・」
本堂に通され、お茶を出されている陽子。
一部始終を聞いて、考え込んでいる小早川。
「なるほど・・」
「私・・
どうしていいのか・・
分からないんです・・」
途方に暮れている陽子・・
「その、今西君に関しては、どう思っているのですか?
本当に目障りに思っているのでしょうか?」
「あの人達を見ると・・
私の、亡くなった両親を思い出すんです。
幸せだった、私達の家族・・
お父さんとお母さんは、仲が良かったし・・
何も、悪い事もしてなかったのに・・
命を奪われてしまった・・
もう、
あんな思いをしたくないんです。」
「ふむ・・・
あなたは、仲間思いなのですね・・
だが、
もう少し、言葉を選んだ方がいい・・
あなたの想いと裏腹に、
勘違いされていますよ。
恨まれてしまう事もある。」
「はい・・
反省してます・・」
本当に・・
反省しているのでしょうか?ヨーコさん・・
「さてさて・・・
どうしたものか・・・」
深く考え込む小早川。
その様子に不思議がる陽子。
「どうしたんですか?」
「うむ・・
自分に降りかかった災難に、
他の人を巻き添えにしたくない・・・
そういった仲間意識もありますが、
相手は、
それを聞いて
黙っているでしょうか?
真の仲間ならば
困っている相手を
見捨てては置けないと思うのです。
例えば・・
あなたが、
親友である響子さんが困っている時、
あなたは、身を挺して、響子さんを助けるでしょう?」
「そうですね・・」
「逆もある。
あなたが、困っている時、
響子さんがあなたを助けるのは当たり前だと思うのです。
でも、
あなたの性格なら、
おそらく拒むでしょうね・・
響子さんの助けの手を・・」
「はい・・
響子には迷惑を掛けたくない・・」
「そういう対応をされて、
響子さんは、嬉しいでしょうか・・?
自分が困っている時は助けられるのに、
自分は助けに入れない・・
真の親友ならば、
素直に頼ってもらいたいと思うのです。
それが当たり前にできる仲だと・・」
「真の・・親友・・・」
「今西君にしても、同様です。
あなたは
今西君に対して、仲間として認めている。
なぜなら、
今西君を危険な目に合わせたくない・・
ご両親と同じ悲劇に合わせたくないと・・
心の奥では、そう思っている。
そう思ってるのは、
今西君が、あなたにとって、
大切にしている仲間だから・・」
「今西君が・・仲間・・」
「仲間が困っている時は、自分が駆けつけて直ぐに助ける・・
そして
自分が困っている時は、仲間が助けてくれる。
そういったお互いの信頼関係があるのですよ。
仲間と言うのはね・・
迷惑でもなんでもない・・
頼られれば、これほど嬉しいモノはない。」
「私は・・
どうすれば・・・」
「もう、貴女の中では、答えが出ているはずです。
あとは、それを実行に移すだけだ・・・」
「小早川さん・・」
自分の心を見透かされているような感じの陽子。
でも、その感覚が、この上なく心地よかった・・・
「分かりました・・
私!」
そう言って、立ち上がる陽子。
だが・・
「あ!」
足がしびれて、倒れてしまった。
フワッ・・
小早川に抱きかかえられる陽子。
「大丈夫ですかな?」
「はい・・
ちょっと正座が長すぎました・・」
いつもならば、お爺さんの修行で座るのには慣れていたはずだったが・・・
小早川の腕に支えられ、見上げる陽子。
お互いの顔が目と鼻の先にある。
顔を赤らめる陽子・・・
「小早川さん・・」




