59.調べもの
「それに・・」
ポツリと呟く陽子・・
まだ、何かがあるのだろうか?
「それに?」
「私が、ここへ来たのは、それを言いたかっただけでは無いんです・・」
「それだけでない?」
ここへ来た理由が、昨日の陽子の想いを打ち明けるだけでは無いという・・
「私は・・
オーラが見れるんです。」
「オーラ?」
オーラ・・
人体(動物も含むが・・)の周りを取り巻く生体エネルギーである。
人間は、身体、幽体、霊体の3要素で構成されていて、3次元空間に実態を持つ身体と「意識」の塊である霊体、それを結ぶインターフェイス的な存在の幽体であるが、オーラはこの幽体が身体よりも外側に溢れたものであると推測される。
健康的で、生体エネルギーに満ちた人は、特にオーラが空間に広がる傾向にあり、個々の「色」を持つという。
夜、暗いときに手を重ねると、重複した部分が明るく浮かびあがる事もあるというが・・作者は未だに見たことは無い。(恥ずかしながら・・)
それにしても、いきなり「オーラ」などという未知の言葉を取り出された小早川だった・・
「あなたのオーラは・・
今まで、私が見た事も無いオーラだったんです。
何ていうのか・・
何でも、包んでくれるような・・
真っ白な・・オーラだったんです。」
「私の?
オーラ・・・
白い色・・」
少し、困ったような表情となった小早川。
「あんなの・・初めてだった・・
いったい・・
あなたは、
何者なのですか?!」
陽子に激しく問われ、どう答えてみようもなかった・・
「何者・・
と
言われても・・
私は、ただ・・
この寺で、修行をしている身・・
日頃は仏事の手伝いをしているとしか・・
言いようがない・・」
「霊感は・・無いのですか?」
「霊感・・
私は生まれてこの方・・
幽霊とか、不思議な体験とは、全く無縁ですよ。」
「霊感が無い・・?」
「はい・・」
学校・・
「何で、私が、行かなきゃならないのよ~」
ブツブツ言いながら、響子が例の写真を今西に返しに廊下を歩いて行く。
オカルト同好会の部活の行われている教室へと向かっていた・・
ガラ・・
「お邪魔しま~す。」
響子が戸を開く。
教室には、一人の眼鏡を掛けた女の子が座って、何やら執筆をしていた。
「はい・・」
「今西君達は、まだですか?」
「部長と副部長は、図書室へ行きました。
資料を調べてるところです。」
「資料?」
「何でも、妖怪について調べるって言ってました。
今時、妖怪なんて珍しいですけどね・・」
「妖怪・・」
「あの・・部長たちに用事があるのでしょうか?」
「あ・・、いえ、ちょっと通りかかっただけなの。」
愛想笑いをして教室を立ち去る響子。
不思議に思った女の子・・楓ちゃんだった・・・
再び、机に向かって、何やら書き始める。
図書室・・
今西と幸子が机を挟んで相・対して座り込み、何やら調べている。
「そっちは見つかったか?」
「いえ・・こっちの資料集には載ってないわ・・」
「ふ~ん・・
夢で見た『妖怪』らしきものなんて、
なかなか乗ってないよな~。」
ブツブツ言いながら、ページをめくっている今西。
後ろから声を掛けられる。
「今西君・・」
振り向くと、響子が立っていた。
「やあ!一橋じゃないか!」
驚いている今西。
「これ、陽子から預かって来たの・・・」
写真を手渡す響子。
「お~!昨日のスクープ写真じゃないか~。」
歓喜の声を上げて、写真をむさぼり見る今西。
「どれどれ?出来はどう?」
幸子が寄って、覗き込む。
「う~ん・・・
心霊写真は・・・
なさそうだな・・・」
黒いバックの写真を何枚か見ながら、残念な感じの今西。
「でも、良く、撮れてるじゃない!
浄霊の儀式の感じが・・」
「まぁ・・そう言った意味では、記録写真としては上出来かな~」
「私達の様子がわかって、良い写真じゃないかって、思うわ。
陽子も褒めてたわよ!」
「え~?あの陽子がぁ?」
半信半疑の今西。
「うん、記者を目指してるだけあるって・・」
「へぇ・・いつもは、ごちゃごちゃ文句ばかりだと思ってたけどね~」
「本当は、仲間になりたいのよ。
私もそうだけど・・」
「何か、不都合な事があるの?」
幸子が聞いてみる。
「それは・・・
・・・
色々と・・あるの・・・」
何かワケありな感じで話を濁す響子・・
「ところで、何を調べてたの?
部員の子が『妖怪』を調べてるって言ってたんだけど・・」
響子が話題を変える。
目を合わせる今西と幸子。
「幸子が、昨日、夢を見たんだ。」
「夢?」
「ええ・・妖怪に追われている夢・・」
幸子が答える。
「追われていた?」
「あの妖怪が言っていたの・・
古の都に蔓延った妖怪の末裔だって・・・」
「古の?!!!」
その言葉に反応した響子。
昼休みに陽子から聞かされていた話とそっくりだった・・
そんなに一致する事もあるのだろうか・・
「普段は、『妖怪』なんてナンセンスだって思ってたから、ノーマークだったけど、
図書室に、色々と調べると資料があったんだよね・・」
今西が資料を見せてくれる。
『妖怪学全集』と『平安絵巻』・・
響子がペラペラとページをめくっていると、目についた見出しがあった・・・
酒呑童子と四天王
「なになに?酒呑童子?」
今西が覗いて来る。
「京の都を脅かした、日本中期最悪の鬼・・・」
幸子が興味を示す。
そして・・・
「この、四天王・・なのかも・・私を追ってきたのは・・・」
「童子・・
四天王・・・」
呟く響子・・




