56.陽子の両親
「陽子~」
「お母さん!」
土手の草原で、お母さんに呼ばれて、駆けて行く陽子。小学校の頃だろうか・・
草の上にシートを敷いて弁当を広げているお母さん。
「お父さんを呼んできてくれる?
お昼にしましょう。」
「は~い」
川に釣竿を垂らしている父の元へ呼びに行く陽子。
「お父さん、釣れた~?」
「いや・・これだけだよ・・」
バケツの中には小魚が2~3匹・・
「お母さんが、お昼にしようって!」
「もう、そんな時間か~・・
時間の経つのは早いな~」
そう言って、釣り道具を仕舞いだす父。
母の元へと歩き出す。
3人そろって、弁当を美味しそうに食べる。
家族の揃った楽しい思い出だった・・・
「お父さん!陽子をお願いします!」
「お母さん!何処へ行くの?」
陽子をお爺さんに託し、家を出る母と父・・
心配そうに見つめる陽子を、涙目で見つめる母・・
「私達には、やらなければ、ならない事があるの・・・」
陽子を真剣に見つめる母・・
「私も、一緒に行く!」
「ダメよ!あなたは、ここに残るのよ!」
何かを決心している母・・もう二度と会えないと悟った陽子。
「嫌よ!私も役に立つんでしょ?」
「陽子・・あなたには、霊力がある・・
でも、まだ、力不足なのよ・・
それを、おじいちゃんに磨いてもらって!
必ず、あなたは、強くなれる!
私達がダメでも・・あなたがいれば・・」
「それは・・?」
その問いには、答えなかった母・・
「お父さん・・
陽子をお願いします!」
「うむ・・わかった・・・」
「では・・お義父さん・・」
お辞儀をして、父が歩き出し、それに母が続く。
「お母さん!お父さん!!!」
必死に叫ぶ陽子を止めるお爺さん・・・・
それが、父と母の生きている姿を見た最後の時だった・・・
ガバ!
布団から飛び起きる陽子・・
手には汗が握られていた・・
「あの時の・・・
夢・・・?」
呟く陽子・・
「お母さん・・
お父さん・・・」




