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霊感ケータイ  作者: リッキー
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55.帰宅



震えの止まらない幸子を家まで送る今西。響子も心配で付き添ってくれていた。


「大丈夫?幸子さん・・」


「うん・・・


 ・・

 大丈夫じゃ・・ない・・かな・・」


響子の持つ『霊感ポケベル』が作動し、自分に霊感があると分かった幸子・・

そして、そのポケベルの衝撃的なメッセージ内容が頭にこびりついて、離れない・・

全身に極度の「寒気」を覚えていた幸子。


「やっぱり、寒気がする・・」


肩をかかえる幸子・・



「一橋・・何か取り憑いてるんじゃ・・」

心配な今西・・


「いえ・・幸子さんには、霊は取り憑いてないわ・・

 陽子の魔除けもあるし・・」


陽子の気の入った般若心経の書かれた手ぬぐいを持っていた・・


「気の持ちようなのか・・」


「ポケベルのメッセージの内容も酷かったから・・

 精神的にこたえたでしょうね・・」


「いつも、あんなメッセージが出るの?」


響子に訊ねる今西。


「いえ・・

 いつもは、好意的なメッセージが多いよ・・

 あんなの、この間の霊以来ね・・」


フラれた女性の霊のメッセージを受信した時も激しい内容だったようだ。









「メッセージの送り主が『???』ってのは?」


ポケベルに表示されたメッセージの送り元は、最後の欄に表示される。

それは、現代のヒロシの時代のメールでも同様だ。


「通りすがりの、浮遊霊だと思うわ・・

 前にも、そういうのがあったから・・・」


「通りすがりに、何かの霊が呟いて行ったメッセージが、偶然、表示されたって事か・・

 ま、人間でも良くあるよな・・」


独り言の多い人が、通りすがりに呟いて行ってしまったというイメージだろうか・・

霊の世界でも、そういった迷惑な人・・いや「霊」も居るのだろうか?

何はともあれ、幸子の気持ちを落ち着かせたいところもあった。


「今西君・・私・・やっぱり怖い・・」


「幸子・・」


優しく抱き寄せる今西・・

肩が小刻みに震えているのが分かった・・


「私が、渡さなければ良かったのかな・・」


ポケベルを幸子に貸したばかりに、こんな事になってしまった事を悔やむ響子。



「響子のせいじゃないよ・・

 私も、自分に霊感があるなんて、思ってなかったし・・

 メッセージだって、偶然だって思う・・


 ・・・

 でも

 ショックだった・・」


俯く幸子・・







「オレがついてるから、大丈夫だよ!

 『悪霊』からだって、オレが守る!」


突然、強気な発言をする今西。だが、何の根拠も無かった。

ジッと見つめる幸子。



「今西君・・・


 ・・・・


 全っゼン!信用できないんだけど!!」



「え?」


まぁ・・そうだろうね・・霊感も霊力も、対抗手段も無い一般人なのだから・・

冷や汗を流している今西を見て、ニヤっとした幸子。



「ま、いいわ!

 努力だけは、認めてあげる!

 ご褒美に、

 ハンバーガー屋で今日の分、おごってくれればね!」


「え~??!!!!」


「今西君・・今日ので、小遣い飛んだって・・」


響子がフォローを入れるが・・



「まだ、月刊誌に送った原稿の謝礼金があるから、良いのよ!」


「え?あれは・・色々、経費がかかってるから・・」


「問答無用!私も手伝ってるんだから!」


「ひぇ~~!!!」



いつもの元気を取り戻している幸子・・

その様子を見て、笑みを浮かべる響子。


「うふふ・・」

 

「どうしたの?響子?」


「何か、あなた達、息が合ってるのよね・・

 羨ましいな・・


 ・・

 あ!!」


急に、顔を赤らめている響子・・


「どうしたの?」


「私・・お邪魔だったかな・・・」


顔を合わせる今西と幸子。



「そんな事ないよ。

 幸子の事、心配してもらって、嬉しいよ。

 誰かさんとは大違いだ。」


「誰かさん?」


不思議がる響子・・・・













「ハーックショイ!!」


くしゃみをした陽子・・

家への帰りの道中だった・・・


「う~・・何か、寒気が・・」


肩を押さえて、立ち止まる陽子。

後ろを向いても誰も居ない。



「気のせいか・・・」


再び、家へと歩き出す。




「家族が心配してる・・か・・・」


先程のハンバーガー屋で、小早川という人に言われた言葉が引っかかっていた・・











古びた木造の小ざっぱりした家・・


玄関や窓は、今風のサッシではなく、木でつくられている。

玄関先にくくりつけられた古い荒縄にイナズマ型の紙がぶら下がっている。


家は、シーンと静まり返っていた。



庭先の祠に手を合わせ、木戸をガラガラと開けて家に入る陽子・・


「只今~。」


真っ暗な廊下・・



「お帰り・・」


奥の座敷の方から声がする。

暗い廊下を進むと、座敷の手前で、声がかかる。



「おかえり・・

 陽子・・」


障子戸を開けると、布団に入った、一人の老人が寝ていた。


「おじいちゃん・・」


陽子の顔を見ようと起き上がる。



「どうじゃった・・

 例の少女の件は・・・」


「うん・・

 何とか、浄霊できたよ。」


布団の脇の畳に座る陽子。



「そうか・・・

 すまんな・・


 ワシが、こんな体故に・・

 手伝う事が出来ぬ・・」


「大丈夫だよ。

 あのくらいの霊は、

 私でも十分浄霊できるわ!」



「うむ・・

 お前も、霊力が強い方じゃからな・・」


そう言って、仏壇を見る老人・・

若い男性と女性が二人並んで映っている写真が飾られていた。



「お父さん・・

 お母さん・・・」


「お前の両親は、霊力があるが故に、

 命を落とした・・

 お前にも、同じ道をたどって欲しくはないのじゃが・・・」


心配そうに、写真を見つめる老人・・



「大丈夫!私には仲間が居るから!

 ご飯の支度をするね!」


「すまんな・・」


気を取り直して、台所へ向かう陽子・・




「あの人・・・」


夕食の支度をしながら、ポツリと呟く。


お爺さんと二人暮らしの陽子。

陽子の両親は、何らかの霊的な事件に巻き込まれ、命を落としたようだった・・






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